2022年08月10日 19:21 弁護士ドットコム
日本介護クラフトユニオンは8月10日、介護現場で働く人たちの意識や就業実態を把握するための「就業意識実態調査」(回答者数6044人、調査期間2022年3~4月)の結果を公表した。
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「介護とは関係ない仕事への転職を考えている」という組合員が、全体の3割以上を占めた。もっとも多い理由として「賃金水準の低さ」があげられ、不安や不満が離職へと結びつき、業界全体の人材不足につながっている実態が明らかになった。
また、介護現場でのICT活用を伴う人員配置基準の緩和については、安全性の確保やサービスの質の低下などに懸念を示す声があがった。
調査では、キャリア形成について「現在の仕事からの変更(職種や雇用区分など)や資格取得、転職を考えていますか」と質問した。
「考えている」と答えたのは月給制で48.3%、時給制で36.1%だった。
具体的な内容として、もっとも多かったのが、「いまの資格等にかんする技能や知識の向上」で、月給制では58.7%、時給制では57.1%と、半数以上を占めた。
次に多かったのが、「介護とは関係ない仕事への転職」で、月給制では33.5%、時給制では34.9%で、「介護関連の別会社への転職」が、月給制が33.5%、時給制が30.7%と続いた。
それらの理由について尋ねた設問にたいして、「年収や賃金を上げるため」と回答したのは、月給制で47.2%、時給制で40.9%と最も多かった。
同ユニオンは「介護業界の場合は、介護報酬が従事者の処遇水準に密接に関係している。介護人材の確保・定着のための最大の解決策は処遇改善だ」と訴えている。
調査では、2024年の介護保険制度改正に向けて、社会保障審議会・介護保険部会などで議論されている複数の論点についての考えも、記述式で尋ねた。
このうち、ICT(情報通信技術)の活用を条件に、介護施設の人員配置基準が、現行の3:1(入居者3人に対して常勤換算職員1人)から4:1に緩和されることへの懸念について、「人員削減で安全性が確保できなくなる」との回答が月給制、時給制いずれも4割超と最多だった。
次に「サービスの質が低下する」「夜間など突発的な事故や救急搬送時の対応が心配」と続いた。
一方で、「そもそもICTって何?」「介護ロボットって何?」といった従事者や、介護ロボットと混同しているような、以下のような回答も目立った。
「介護ロボットは便利だが、介護される側の気持ちはどうなのか?人はモノではないので、そのときの気持ちに寄り添うことがロボットにできるのか」「ロボットはロボットだから、サービスの質が落ち、事故が増加するかも」「人間をケアできるのは人間だと思っています」
介護現場の生産性向上や、人材不足を補うために国は、効果的なテクノロジーの普及に取り組んでいる。一方で、そうした国の動きについて、現場に正確な情報が伝わっていない現状について、村上久美子・制作部門長は「使うのは現場の従事者なので、実証を進めるにあたっては、現場の人たちの声を積極的に聞き、不安を払拭できる、丁寧な検証をお願いしたい」と話した。
(ライター・今川友美)