2022年08月05日 10:11 弁護士ドットコム
子どもを養育する労働者が取得できる育児休業。弁護士ドットコムには育休中の女性から「会社から研修に参加するよう要請された」という相談が寄せられています。
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生後2カ月の娘がおり、現在、育児休業中です。先日、会社から毎月開催されている研修について連絡がありました。任意の研修のため、育児が落ち着くまでは欠席させてほしいと伝えました。
ところが、会社からは「仕事のスキルアップのために両親や夫に預けて出席してほしい。育児休業中は課題も出す」と伝えられ、困っています。娘は哺乳瓶を受け付けず、母乳で育てているため、誰かに預けて外出することはまだ難しいです。
そもそも、育児休業中に研修を強制したり自宅作業(課題)させたりするのは違法ではないのでしょうか。私は研修や課題を拒否する事はできないのでしょうか。
まず育児休業の申出・取得等に対する解雇や不利益取扱いは法律で禁止されていますし、そもそも育児休業は法的に認められた「休業」ですから、就労することは基本的に想定されていません。
そのため、会社から、育児休業中の勤務や研修等を強制された場合には、それを拒めることが大原則と言えます。その意味で、会社は労働者の意思に反して、就労や研修をさせることはできないと考えられます。
今回の相談者が真に同意していないことは明らかと思われますので、基本的には会社が労働者に強制することは認められないでしょう。
ただし、労働者が真に同意した場合においては、会社からの働きかけに基づいて一時的に就労等をすることも可能と考えられています。
例えば、一時的・臨時的な業務(専門技術がないと対応できない一時的なトラブル対応等)が発生し、その業務依頼の必要性が高く、勤務先の真摯な要請を受けて、労働者が真に同意した場合などです。
とはいえ、上記の視点から考えても、今回のケースの研修や課題は一時的なものとはいえ、緊急性に乏しいと思われますし、任意参加ではなく会社の命令に基づく強制という要素が強ければ、労働者の真の同意がなければ認められないと考えられます。
もし育休中に労働者の真の同意に基づいて就労等をした場合には、賃金としてその対価を受け取ることは認められると考えられます。
ただ、育児休業給付金が支払われる要件として、就労等が10日以下や80時間以下、賃金額の80%以下など、細かな要件を充たしていることが必要とされているので、十分にご注意下さい。
【取材協力弁護士】
鈴木 謙吾(すずき・けんご)弁護士
慶應義塾大学法科大学院教員。東京弁護士会所属。
事務所名:鈴木謙吾法律事務所
事務所URL:http://www.kengosuzuki.com