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ユナイテッドアローズが秋冬商品を値上げへ ダウンやコートが対象

2022年08月04日 20:22  Fashionsnap.com

Fashionsnap.com

ユナイテッドアローズのロゴ

Image by: FASHIONSNAP
ユナイテッドアローズが、2022年秋冬シーズンから値上げを実施すると発表した。原価上昇への対応として、平均上代価格を15%程度引き上げる方針。

 「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)」「ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ(BEAUTY&YOUTH UNITED ARROWS)」「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング(UNITED ARROWS green label relaxing)」の3ブランドが対象で、約2割の品番で値上げを実施。価格改定は「商品クオリティを伴った施策」とし、値上げ率・品番数ともにブランド間の差はほとんどないという。値上げするアイテムは、ダウンジャケット(3万2000円→3万6000円)やチェスターコート(4万2000円→4万8000円)など。
 値上げに伴う懸念は、商品の売れ行きが鈍り、売上高および粗利高の減少することだ。松崎善則社長はプロパー販売点数が減少した場合のリスクヘッジとして「来期以降も販売できる商品」の在庫量を増やすことで、仮に当該商品を値下げした場合でも利益額の減少リスクを回避できるように戦略を練るという。なお、同社は値引きや廃棄の原因となっていた大量生産による積み上げ型の売上利益構築を見直し、今春夏シーズンはコロナ前の2020年3月期比で85%程度まで在庫量を減らしたが、一部商品が欠品するなど消費回復が想定以上だったことを受け、秋冬は当初計画から5%増やした。
 原料高騰による価格改定の波はユナイテッドアローズに限らず、アパレル業界全体で広がっている。「ユニクロ(UNIQLO)」を展開するファーストリテイリングはフリースやウルトラライトダウンジャケットなど一部の定番商品を値上げすると発表。繊維メーカーの東レはナイロンやポリエステルといった一部の素材の価格改定を今年だけで3回実施するなど、各社で試行錯誤の末に苦渋の決断に迫られている。ZOZOが運営するファッションEC「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」でも「秋冬は多くの出店ブランドが値上げに踏み込むと聞いている」(澤田宏太郎社長)という。同社も原燃料価格高騰などに伴う物流関連費用の増加を鑑み、8月17日から送料を税込210円から250円に引き上げる。
2022年4~6月期はプロパー販売が奏功
 ユナイテッドアローズが8月4日に発表した2023年3月期第1四半期(2022年4~6月)の連結実績は、売上高296億6400万円(前年同期比17.4%増)、営業利益18億5300万円(前年同期は営業損失9億300万円)の増収増益を達成。売上高は2020年3月期実績と比較(連結体制変更、収益認識基準変更を除く)すると8割の水準となっているが、ユナイテッドアローズ単体の売上高では9割まで回復している。松崎社長も想定を上回る売上および利益の推移に「自信をもっている」と手応えを示した。
 今期はセール販売を抑制し、適正な売上総利益率を確保していく方針を掲げている。小売やネット通販、卸売等の売上が含まれる「ビジネスユニット」における定価販売の構成比は2020年3月期比10.2ポイント増の93.2%に上昇。特に従来セールが始まる6月に関しては同24.6ポイント増の86.7%に着地した。ユナイテッドアローズ単体の売上総利益率は同0.2ポイント改善の54.6%となった。
 第2四半期以降も引き続き定価販売比率向上に取り組む。プロパー販売強化の一環として夏のセールを従来から14~20日間ほど遅らせた実績があり、冬のセール時期についても出店先のデベロッパーと協議しながら、従来から後ろ倒しするなど適正な時期に在庫処分を行いたい考えを示した。
 アウトレットで消化促進を行っているコロナ禍の過去在庫については今春夏で一定の目途が立つとしており、秋冬以降はアウトレット専用品の構成比が上がる見込みだという。
2031年3月期に商品廃棄率を1.0%→0.1%達成へ
 サステナビリティの取り組みでは「サーキュラリティ(Circularity)」「カーボンニュートラル(Carbon Neutral)」「ヒューマニティ(Humanity)」の3つのカテゴリーで、2031年3月期を達成目処とする数値目標を新たに設定した。
 「サーキュラリティ」では、商品調達額に対する商品廃棄率を現在の1.0%から2031年3月期までに0.1%に引き下げるほか、環境配慮商品比率を現在の2%から50%に拡大することを目指す。
 「カーボンニュートラル」においては温室効果ガス排出量の削減率と再生可能エネルギーの割合を目標値として掲げ、省エネと再生可能エネルギー由来の電力使用の拡大を進める。サプライチェーンが排出するScope3については、2031年3月期に2020年3月期比で15%削減することを目標とする。
 最後に「ヒューマニティ」では、責任ある調達とサプライチェーンの構築を目指して策定した「商品調達取引先様向け行動指針」への同意書の取得率100%を実現させる。従業員のロイヤルティを測る「従業員エンゲージメントスコア」は2022年3月期の調査で70%だったスコアを2031年3月期に80%とすることを目指す。