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食育に注力する調布市がNTT東日本グループと連携 - 食の資源循環を児童が学ぶ環境学習を実施

2022年08月03日 13:01  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
調布市立深大寺小学校4年生の児童が、調布市内小学校の給食調理残菜を受け入れるNTT中央研修センタの超小型バイオガスプラントとローカル5G実証ハウスを見学。食の循環型サイクルを学ぶ環境学習が6月23日に実施された。



超小型バイオガスプラントを活用した地域資源循環の実証を通じて、給食残菜の有効活用を図りながら、都市型資源循環モデルについて学ぶ取り組みを進めているNTT東日本グループと調布市。両者の連携の背景や環境学習の様子などを紹介する。

○ハイテク農業用ハウスで働きやすい農業を実現



超小型バイオガスプラントを活用した都市型資源循環モデルの実現に取り組んできたNTT東日本グループと、食育推進基本計画に基づき食育を推進してきた調布市。



調布市行政経営部企画経営課の長井彰吾氏は今回、児童たちの環境学習でNTT東日本グループとの連携に至った経緯について説明した。



「NTT東日本様は昨年6月に設立した調布スマートシティ協議会の会員であり、スマートシティ協議会の活動を契機に、NTT中央研修センタ内での取り組みと連携を進めてきました。昨年11月よりローカル5Gを活用したNTT中央研修センタ内でトマト栽培の取り組みなどで連携を始め、今回の超小型バイオガスプラントを活用した調理残菜の再資源化の実証と環境学習の推進のため、プラント設置前から連携の可能性について模索してきました」


調布市入間町にNTT中央研修センタがあることなどから、NTT東日本グループと調布市は長年の協力関係にあるという。同施設は『NTTe-City Labo』としてローカル5Gを使ったさまざまな先進的な取り組みを行う社会課題解決の実証のフィールドとなっている。



「さまざまな地域課題の解決に向けた議論の中で、食育や環境教育に大変熱心な調布市内の学校さんと一緒にNTT東日本グループ側としても児童が、SDGs環境をいち早く学んでいく場づくりをさせていただきました」(NTT東日本 東京武蔵野支店長 相原朋子氏) ※肩書は取材当時


NTT中央研修センタを訪れた児童たちがまず見学したのはトマトを栽培しているローカル5G実証ハウス。温度や湿度、日射量、CO2量、水やりや液体肥料の供給などを自動制御し、常にトマトが成長しやすい環境にハウス内を最適化している。



また、4Kカメラや遠隔操縦ロボット、スマートグラスなどの最先端技術を使い、約20キロ離れた立川にいる農業指導員がサポートする仕組みを導入。指導員が毎日5~10分ほどリモートで高精細映像を確認することで、病気などの異常に素早く対応できる体制をとる。


このハウスでは350株のトマトを栽培し、トマトの収穫や農薬散布などは農業未経験者のスタッフ2名が行っている。多いときは週に約200キロを収穫するが、トマトのように病気になりやすい繊細な作物でもスタッフは週休2日の9時~16時という働き方を可能にしているという。

従来、農業指導員は月に1~2回ほど現場指導してきたが、遠隔から技術指導をできれば、一人の指導員がより多くの生産者を支援できる。生産者も生産者を支える農業指導員の数も年々減少しているなか、東京のように小さな畑が各地に分散している地域で、農作業の大幅な効率化が図れる仕組みだ。

○食品残菜からニンテンドーSwitch25台分の電気



続いて、児童が見学したのは超小型バイオガスプラント。このプラントはNTT東日本のグループ会社であるビオストックが提供しているもので、大きく「粉砕機」と「調整槽」、そしてメタン菌がガスを生成する「発酵槽」の3つに分かれている。


担当者は児童たちに「この3つの機械の構造は人間の身体の構造と似ています。破砕機は口や歯、調整槽は胃、最後の発酵槽は腸みたいなところです。実はメタン菌は僕たち人間のお腹の中にもいます。おならの中にもメタンガスは含まれています」と説明していた。

そのガスで発電機を回して発電することができ、深大寺小学校の給食残菜10キロを使った今回の実証で生成されるバイオガスの量は0.3リューベほど。電気量としては400ワット程度で、「ニンテンドーSwitchに換算すると、25~30台くらい充電できる電気を生み出せます」と話す。


また、プラントからは熱や食品残菜から抽出した液体肥料を回収できる。液体肥料や電気などはローカル5G実証ハウスで活用されているほか、災害などでNTT中央研修センタが停電した時の復旧電源として使われるそうだ。



「今回の実証では持ち込まれた給食残菜は10キロですが、日量2トンぐらいが最も発電効率が良いと考えられ、そうなると約50世帯分の電気量を賄えます。発電機から回収できる熱は、バイオガスを生成する発酵槽を温める熱として活用しています。窒素・リン酸・カリウムを含む液体肥料は数字上では、一般的な化学肥料の1/10ほど。一般の堆肥より大気放散しない分、実際の濃度としてはもう少し濃いイメージです」と、ビオストックの熊谷智孝社長。


「もともとは畜産業に付き物の糞尿処理という地域課題に対し、当社はバイオガスというソリューションにたどり着きましたが、都市部での食品残菜の処理にも同じ技術が使えることがわかってきました。都市部ではプラントを小型化したり、無人で安定的に運転させたりする必要があり、NTTの遠隔監視などのIoT技術を利用したプラントを、今年から提供ができるようになりました」


調布市立深大寺小学校で給食残菜から作られた液体肥料を児童が花壇に散布。土から吸い上げた食品作物の肥料成分を土に還すことで、作物や植物が再び成長するという循環の仕組みを学び、その日の朝にローカル5G実証ハウスで収穫されたトマトを使った「トマト坦々麺」が給食で提供された。


市立小学校での食育の推進と合わせて、給食残菜をなるべく出さないための工夫に取り組む調布市は、今後もさらなる食育の推進や環境学習の取り組みなど多面的な効果の創出につなげていくという。(伊藤綾)