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コロナに戦争、影響は? 自動車業界の大イベント「海外試乗会」は今

2022年08月03日 11:32  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
ランボルギーニの最新モデル「ウラカン テクニカ」に試乗するため、2022年6月末にスペイン・バレンシアを訪れた。世界的な新型コロナウイルスの感染拡大に加え、ロシアによるウクライナの侵略戦争が勃発するという二重苦の中で、海外試乗会は今、どんな感じで行われているのか。体験レポートをお伝えしたい。


○フライト前の準備が大変!



まずは試乗会のスケジュールだが、今回は6月28日夜に羽田空港を出発し、フランクフルト経由で29日昼ごろバレンシアに到着、30日に試乗会をこなし、7月1日早朝にはバレンシアを出発して往路と同じコースをたどり、2日昼に帰国するという弾丸ツアーだった。



事前にパスポートの残り期間を確認し、最新の国際免許証を手に入れておくのは当たり前。まずはスペイン入国のための要件を整える作業に取り掛かる。



在日スペイン大使館や身内が旅行会社に勤めているという同僚に聞いてみると、欧州連合(EU)のCOVID-19デジタル証明書を持たない旅行者(つまり我々のこと)については、スペイン保健省の無料専用アプリ「Spain Travel Health-SpTH」に健康状態を登録することで出力されるQRコードが必要とのこと。こちらは早めに登録しようと思ったのだが、現地到着の72時間前から受け付けが始まるため、適切なタイミングを見て行わなくてはならない。


情報登録にはワクチン接種証明書、陰性証明書、回復証明書のいずれかが必要になる。筆者はCOVID-19のワクチン接種を3回行ったことを示す厚生労働省提供の証明書(日付やワクチンの種類などが英文で明記されている)を持っていたので、それが該当した。



登録が完了するとブルーの枠のQRコードか提供され、入国OKの状態になる。同時に、スペインでの滞在時間が短いので、到着後すぐに現地でPCR検査が行えるようメールで手配をしておいた(こちらはランボルギーニジャパンや担当PR会社からのプッシュが効いたようだ)。



出発当日、会社での仕事を終えて夜の羽田へ。ANAラウンジでシャワーを浴びて20:55発の「NH203」便に乗り込む。担当の客室乗務員さんにこちらの行程の話をすると、彼女らも同じ便で帰国するという。我々の日程も結構ハードだけれども、ここを仕事場とする彼女たちもなかなか過酷なスケジュールをこなしていることに気付かされた。



現状ではロシア上空を通過する通常の欧州ルートが取れないため、中国、モンゴル、カザフスタン、カスピ海、トルコ、ベルギー、ルーマニア、ハンガリーを抜け、14時間半のロングフライトで午前5時過ぎにフランクフルトに到着。4時間後に飛び立つバレンシア行き「LH(ルフトハンザ)1160」はゲートA40なので、ご存知の方がいらっしゃるかもしれないが、あの長くて先が霞んで見えないほどまっすぐなトンネル状の通路を延々と歩いて、ゲート近くのラウンジにたどり着く。



「空のハンザ同盟」とも呼ばれる同航空は現在、日本の空港では見かけることが少なくなってきた「ボーイング747」をいまだに多数所有している。ここフランクフルト空港はルフトハンザのメインハブだけあって、あちこちにその巨体が駐機してあるのを見ることができた。ちょっとうれしい。


羽田を出発して約20時間後の午前10時前にバレンシア空港に着陸。さてさて、どんなチェックがあるのかと“期待”していたのだが、な、な、なーんと、全くノーチェック!! あんなに手間をかけて準備したのに……と思う間もなく、するすると入管を抜けて、ノーマスクの世界に突入したのであった。



宿泊するホテルは5つ星の「ラス・アレナス」。到着してランチをとった後は、夕方に行われるPCR検査まで2時間ほどのフリータイムがあるというので、タクシーを駆って市内の土産物屋へダッシュ(このタイミングを逃すと、買い物の時間はない)。ドライバーは女性のイザベルさんだ。

「ランボルギーニの試乗会でバレンシアへ来たの? へぇー! このクルマはダチア(DACIA)よ。知ってる? ルノー傘下のモデルで、内装のプラスチックはペラペラだけど、よく走るので大好き。5速マニュアルシフトも全く気にしないわ。女性のタクシードライバーはここスペインでは3割もいて、東京なんかよりずっと多いと思う。私も7年前に離婚してこの仕事を始めたの」(iPhoneのスペイン語⇔英語アプリで会話)などと話が弾む。ちなみに、彼女がドライブするダチアは5ドアステーションワゴンだったので、「ロッジー」というやつだったのかも。ルーマニアで生産されていて、ロシアにも輸出されているルノーの廉価モデルだ。


太陽が沈みかけた21時ごろから、ホテルのプールサイドにしつらえられた会場でディナーがスタート。そのわきには鮮やかなグリーンのテクニカが鎮座していて、明日の試乗会への期待感を盛り上げてくれる。


翌朝は午前6時に起床。迎えのバスに乗って「バレンシアサーキット」へ向かう。試乗の様子やランボルギーニCEOのインタビュー記事は別稿で。ちなみに、ランチはサーキットのピット上で作ってくれた出来立てのパエリアで、これはなかなかのものだった。


丸々1日を費やした試乗会の後は、ホテル近くのヨットハーバーにてお別れのディナーパーティーに参加。今回の試乗会に来ていたアジア・パシフィック地区からのメンバーはバラエティーに富んでいて、特にサウジアラビアからの記者はサーキットでは最も速く走っていたし、「首都のリヤドから1,000kmロ離れた第二の都市ジッタまでは5車線の道路がまっすぐにつながっていて、ウラカン テクニカなら3時間ちょっとで行けるんだよ」と自慢げにしゃべっていたのは面白かった。逆に元気がなかったのは香港チームで、「もう香港はダメだ。お金持ちはUKやカナダにどんどん出ていっていて、今の雰囲気は最悪」なんだとか。ニュースで見ている状況は、全く本当なのだと実感させられた。


翌日はまだ真っ暗な午前2時50分(!!)にホテル出発だったので、部屋でうとうとしただけでバレンシア空港に向かい、帰国の途へ。当然ながらラウンジは営業していないので、空いているイスを見つけて時間をつぶすことに。前日のPCR検査で「陰性」の結果が出ていたので、これをもとに厚生労働省の「My SOS」アプリに登録作業を行った。フランクフルトに着いたところでアプリのカラーがブルーになっていることを確認。機体の不具合で出発が1時間以上遅れ、カーゴの駐機スペースのそのさきに置き留めしてあった787ドリームライナーまでバスで10分近く揺られて到着。南回りの「NH204」便の機上で往路と同じスタッフと再会し、羽田に向かった。



到着の2時間ほど前になって突然、「搭載していた水の量が規定値まで入っていなかったため、以降着陸までトイレは使用禁止」というトラブルまでおまけについて、午前9時58分に羽田にランディング。ブルーに表示されたSOSアプリの画面を水戸黄門の印籠のようにかざしながら、各種チェックを無事クリア。2泊(正確には1.8泊程度)4日の海外試乗会は、かくも楽しくハードな日程なのであった。



原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)