2022年08月03日 10:01 弁護士ドットコム
みなさんの職場にパソコンのキーボードを叩く「タイピング音」がうるさい人はいないだろうか。
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少しぐらいなら我慢できるが、まるでホームランをかっ飛ばしたかのようにエンターキーを叩かれたら、こちらの集中力が途絶えてしまうこともある。
一方で、タイピング音が大きかったために異動させられそうになる人もいるようだ。弁護士ドットコムにそんな相談が寄せられている。
相談者によると、静音キーボードに変えるなど、気を遣ってきたが、音に敏感な同僚から苦情を申し立てられているという。
ほかの同僚はそこまで気にしていないようだが、はたして、こんな理由の部署異動は法的に認められるのだろうか。森田梨沙弁護士に聞いた。
ーー「キーボードの音がうるさい」ことを理由とした異動は認められるのでしょうか。
一般的に、多くの会社では、就業規則などに配置転換命令を出すことができる旨が規定されています。会社は、この就業規則などに基づいて、その裁量で従業員の部署異動を決定することができます。
ただし、会社の人事権も無制限に行使できるわけではなく、場合によっては権限濫用で命令が無効となることもあります。
過去の判例をみますと、権限濫用にあたるかどうかは、配転命令の業務上の必要性や、配転によって従業員が受ける不利益の程度などを考慮して、これを判断しているようです。
ーー相談者によると、「音に敏感な同僚から、キーボードを叩く音が大きいと苦情を申し立てられて、異動させられそうになっている。自分は静音キーボードに変えるなど気を使ってきたし、他の人はそれほど気にしていない」とのことですが。
実際のところは、もう少し客観的に見てみないとわかりません。
もし、会社が、同僚の苦情を受けて調査した結果、実際に相談者のキーボード音が大きく、「周りに支障が出ている」という認定をしたのであれば、異動には業務上の必要性があると認められ、命令は有効と判断される可能性が高くなるのではないでしょうか。
ーー職場内の誰もが「うるさい」と感じるほどキーボード音がうるさい人もいる一方で、「音」に敏感な人たちもいます。キーボード音をめぐるトラブル防止のために、企業側にはどのようなことができるでしょうか。
なんでもかんでも「〇〇ハラ」と名前を付けてしまう風潮は、個人的には違和感を覚えますが、職場での「音」問題は「音ハラ」などといわれ、問題になることも少なくありません。
多くの人が同じ空間で働く以上、どうしても衝突は起きます。
会社は、従業員ができるだけ気持ちよく仕事ができるよう、
・静音キーボードや吸音パーテーションを導入する
・従業員が不満を溜め込まないよう相談窓口を設置する
・上司への相談がしやすい風通しの良い職場環境をつくる
・必要に応じて柔軟に席替えをおこなう
などの対応をとることが考えられます。
【取材協力弁護士】
森田 梨沙(もりた・りさ)弁護士
中小企業法務、労働案件、一般民事(交通事故、不動産、離婚事件他)など幅広く手掛ける。事案の早期解決及び予防法務の観点から、依頼者と密なコミュニケーションをとることを常に心がけている。趣味はゴルフと漫画。
事務所名:共進総合法律事務所
事務所URL:http://www.kyoshin-law.com/index.html