2022年08月01日 10:41 弁護士ドットコム
夜間に大声でGLAYの楽曲を歌う住人に注意を呼びかけるマンションの張り紙がツイッターで話題になった。
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ツイッターに投稿された画像には「被害に遭われる方の疲労・苦痛等を考慮して頂き、心当たりのある方は控えていただくようお願い致します」とある。「状況により訴訟になり、退室及び損害賠償請求されるケースもございます」との警告も続いた。
確かにいくらGLAYの楽曲が素晴らしくとも、夜間に、それも一般人の歌声を聞かされるのはたまったものではないだろう。実際に裁判や損害賠償請求される可能性はあるのだろうか。山之内桂弁護士に聞いた。
ーー騒音被害にあった場合、損害賠償請求が認められる可能性はあるのでしょうか
生活騒音であり、受忍限度を超える侵害に限って損害賠償請求等ができます。
受忍限度を超えるかどうかは、騒音の種類・音量・発生時刻・継続時間、周辺環境、被害側の生活状況など、双方当事者の事情を総合的に考慮して判断されます。
手続きについては、まず住人(管理会社)に対応を求めた上で、民間調停のようなADR手続も考えられますが、最終的には裁判所を通じた騒音差止の仮処分や損害賠償請求本訴等の法的手段をとるしかありません。
ーー裁判を起こすにあたって、どのようなことを準備しておけばいいでしょうか
被害側では、損害の発生事実と騒音との因果関係を証明する必要があります。騒音の状況を示す測定記録、精神科や心療内科への通院を示す診断書・診療録・診療報酬明細、生活上の支障や加害者との交渉経過を説明する被害者の陳述書などが必要です。
騒音対策には、音響の特性の理解が不可欠なので、防音専門工事業者や環境計量士などの専門家に相談することも役に立つと思います。
なお、騒音を出している当事者が区分所有者同士か、分譲賃貸か、賃借人同士かなどによって、適用できる法令が変わってきます。実際に同様のトラブルに見舞われた場合、法律専門家への相談が望ましいでしょう。
【取材協力弁護士】
山之内 桂(やまのうち・かつら)弁護士
1969年生まれ。宮崎県出身。早稲田大学法学部卒。司法修習50期、JELF(日本環境法律家連盟)正会員。大阪医療問題研究会会員。医療事故情報センター正会員。
事務所名:梅新東法律事務所
事務所URL:https://www.uhl.jp