2022年07月31日 10:01 弁護士ドットコム
安倍晋三元首相の銃撃事件で、いわゆる「宗教二世」や脱会の難しさなど、新興宗教にまつわるトラブルの数々が注目されている。
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弁護士ドットコムニュースのLINE登録者からも、親が入信していたために病気の治療や予防接種を受けられなかったり、信者に執拗につけ回されたなどの体験談が複数寄せられた。
本稿では、寄せられた声の一部を紹介する。
叔母が新興宗教にハマっていたという30代の女性(関東地方在住)は「大変迷惑を被っている身としては、カルト宗教としか思えない」と語る。
女性の父親が脳梗塞になり、意識不明で入院中のとき、叔母は、病院に会報とみられる冊子を何十冊も持ってきて布教を始めた。
また、祖父の葬式に、無断で新興宗教の会員を何人も連れてきたり、勝手に身内の名前や働いている会社名を「会員」や「協賛会社」のように扱い、金銭を要求してきたこともあるという。
さらに、女性の祖母も別の新興宗教に入信していた時期があった。祖母は、毎月30万円のほか、数珠やパワーストーンのような物を購入し、1000万円近い額をつぎこんでいたという。女性は、当時の様子をこう説明する。
「献金額が多かったからか、『貴女には力がある』などと言われていたようで、当時は身内が病気になったり、怪我をしたりすると、その会で買った数珠を持った祖母が『今すぐこの身体から出ていけー!!!!』と言いながら背中をバシバシ叩いてきて大変でした。従兄弟が庭で転んで足を折った時も、見た目で明らかに足が折れているのに、数珠を持って叩くんです」 「猫が不吉だと言われ、家族に黙ったままペットの猫を車で片道1時間の山に捨てて来た事もあります」
親の入信により、子ども時代に苦痛を強いられた「二世」もいる。40代の女性(関東地方在住)は、子どものころに「お迎え」を体験したという。
「小1より毎週日曜日朝9時に大学生ぐらいの地区担当が迎えにきて、小学部なるものに連れていかれ、正座で1時間以上、勤行させられてました」
中学生になっても「お迎え」は続き、部活があるからと断ると、「不幸になる」などと言われた。引っ越しを機に、長年の「洗脳」から解放されたという。
別の「二世」の女性(海外在住)は約50年前、叔母、祖父母と母親が新興宗教に入信。この新興宗教は、「薬はよくない」「毒素を体に入れるのはよくない」という考え方で、予防接種を受けることも禁止されていた。
母親には何を言っても聞き入れてもらえず、「親のやる事に口出しをするな」と言われていたという。
女性は結婚・妊娠したが、産婦人科の主治医に「風疹の抗体がない。女子は学校で受けているはずなんだけど」と言われた。周囲には、妊娠中に風疹になり、子どもに影響が出た知人がいたため、強い不安を感じたという。
ほかにも、40代女性(関東地方在住)から、以下の体験談も寄せられた。
「母親が入信し、幼少期はカルトに反対する父親から生活費を入れてもらえず、ひどいネグレクトを経験した」
子どもだけではない。結婚して配偶者になることで「家族」となり、思わぬトラブルに巻き込まれることもある。
40代の男性(関東地方在住)は、元妻の両親が新興宗教の幹部であり、多額の借金があることを結婚後に知ったという。
「結婚した時、既に義母は多額の借金を残して他界。義父は一昨年、亡くなりました。義両親は自宅を担保に消費者金融、サラ金からお金を借りて総額2億円近い借金をしてまでも宗教にお布施をしていました。義父も多額の借金はありましたが家族が止めて家族が返済していきました」
一方、家族が新興宗教に入信していたという30代の男性(関東地方在住)は「結婚時にとても苦労した。結婚を機に実家と絶縁している」と語る。
ほかにも、読者からは、以下のような体験談が寄せられている。
・宗教政党の選挙運動に協力することを拒んだとたん、毎日別の車が家の前に路駐するようになった(50代女性・関東地方在住) ・新興宗教への入会を断ったところ、後日家族が暴力を振るわれ、絶縁した(40代男性・九州地方在住) 「新興宗教に傾倒し、癌治療を拒否した祖父が、癌で命を落とした」(40代女性・関東地方在住)
この記事で紹介したのは、ごく一部の体験談に過ぎない。今も、新興宗教をめぐる問題に巻き込まれ、苦悩している人たちがいる。