トップへ

ディーン・フジオカが振り返る『パンドラの果実』の半年間 「人間は常に問われている」

2022年07月30日 08:11  リアルサウンド

リアルサウンド

ディーン・フジオカ(撮影:伊藤惇)

 2022年4月クールで放送されていた日本テレビ系土曜ドラマ『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』が現在、新作となるSeason2とともにHuluで独占配信中だ。


【写真】ディーン・フジオカの撮り下ろしカット


 主演のディーン・フジオカが演じるのは、最愛の妻を亡くし、科学犯罪対策室を創設した警察官僚・小比類巻祐一。今回、約半年間にわたって作り上げてきた本作について、ディーンにインタビュー。Season1からSeason2までの見どころや、同時期に劇場公開された『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』、『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成』など大活躍なディーンの今後の展望についても話を聞いた。


■「何を選ぶかは使う人類次第」


――Huluオリジナル『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』Season2も引き続き、岸井ゆきのさん、ユースケ・サンタマリアさんとの共演となりますが、お芝居をしていく中で息が合ってきたという感覚はありますか?


ディーン・フジオカ(以下、ディーン):そうですね。シーズン1はずっとトリオでやっていますし、振り返ってみると一緒にいる時間が長いですね。2人ともすごく面白くて、ムードメーカーとしてそれぞれのスタイルがあって、現場の空気を華やかに、明るくしてくれています。それぞれの部署がそれぞれの仕事をするために集まっていて、どうせ同じ時間を過ごすのであれば、楽しい思い出になった方が良いと思うんです。そこに対してもパッションを感じる方々なので、一緒にやらせてもらえてすごくやりやすかったですね。シーズン2からは、(吉本)実憂ちゃんが登場したり、シーズン1の佐藤隆太さんが続投したりで、トリオとはまた違う形の編成ができてきたなと思ってます。


――吉本実憂さんが新しく加わったことで、なにか変化があれば教えてください。


ディーン:彼女はアクションに対して向上心や興味があるので、現場でそういう話をしています。僕はアクション撮影に使うときの武器セットやボクシングの道具など、運動用の機材をたくさん持っているのですが、それを前室(スタジオ撮影の待機場所)に持っていくと、実憂ちゃんが興味を持ってくれて、使い方を教えてほしいと質問してくれるんですよ。教えるのはとても楽しいですし、実憂ちゃんが来てからは、そういう現場の盛り上がりが生まれました。


――シーズン2の脚本を読んだときの感想はいかがでしたか?


ディーン:実はシーズン2の脚本も結構早いタイミングで頂いていたんです。シーズン1を撮っている途中でしたが、改めて脚本が撮影前に全話揃っているのはいいなと思いました。普段、連続ドラマを撮るときには、終わりが見えない中で1話、2話、3話と撮り進めることも多いので、改めて基本は大事だなと思いました。結局、脚本に書かれていることが全ての設計図であり、その骨組みがあるからこその演技や演出になるので、ゴールが見えていると、ディスカッションの質も変わってくる。内容に関しては、シーズン1に比べてシーズン2の方が思い切った展開になっていると思います。シーズン2の脚本には「ここはどうやって撮るんだろう」と思うような部分もあって、ワクワクしましたね。


――シーズン1を観ていたファンを、さらに驚かせるような内容になっていますよね。


ディーン:シーズン1の8話からのラストスパートがスリリングな展開になっていて、個人的にはとても好きでした。シーズン1で完結はしているわけですが、シーズン2はシーズン1を観ていればより楽しめるような作品になっています。シーズン1からの流れを汲み取りつつ、また新たな物語がこのメンバーでスタートします。


――「科学」「テクノロジー」など、今作のテーマに関してはいかがでしたか?


ディーン:このテーマに関しては興味を持って向き合えたと思っています。新しいテクノロジーが生み出す光と闇は常にあるわけで、それをどう使っていくのかは自分たち次第である、人間は常に問われているなと。そこで社会の構造的に法律が設置され、人々の日常の中に新しいテクノロジーが恩恵をもたらす。それが最先端であれば、人々は常に自問自答し、価値観も揺さぶられていると思うんですよ。「これをやれたら便利だけれど、逆の角度から見れば」というのは常に問われていて、何を選ぶかは使う人類次第です。小比類巻は常にそこを問われているキャラクターなのですが、それでも彼は科学がもたらす光を信じていたい。「パンドラの箱の中に最後に残る希望」を象徴していると思ってこの役を演じてきています。とはいえ、小比類巻が医学的に死亡と判定されている妻を冷凍保存して延命させようとしていることは、端から見たら独りよがりなエゴと思う人もいるわけで。でもこれは彼の妻への愛ゆえの行動なんです。娘に対しても父親の責任感と愛情があるからこそ、シーズン1の最終章でそれが爆発して肉弾戦をともなうシーンに繋がりました。やはり物事には常に両面あるということですね。科学の発達が人間をどう揺さぶるのかということには個人的な興味を持ちながら、このプロジェクトに臨ませてもらっています。


■歌詞を書くことで言語化


――小比類巻には警察官としての顔と家族を愛する顔の両方がありますが、両方の感覚を引き出しながら、小比類巻という役を演じる上で大切にしていたことがあれば聞かせてください。


ディーン:一番簡単な構造としては「科学犯罪対策室の室長というパブリックサーバント」と「家庭での父親、夫としての素の部分」という構図を作りました。中盤で、小比類巻が、妻を冷凍保存していることが明かされていく部分では、こういう決断をするに至ったという思考の流れを視聴者の方に体験してもらえるといいなと思いながら演じましたね。自分の中で思考を巡らせて、行ったり来たりしながらこういう答えにたどり着いたけれど、「あなただったらどうしますか?」と提示できたらいいなと。もう一つは娘との関係です。娘が誘拐されて最終的に8~10話で小比類巻が暴発して、仕事人としてはあるまじき行為をするのですが、これも娘を愛するがゆえの行動だというところで、常に問われている。善悪よりも奥深いところで問われているような感じになるといいなと思って。神と悪魔の対話みたいな感覚で、どちらも否定できないし、どちらも肯定しにくい。そういうところの感情を込めて作ったのが主題歌の「Apple」でした。この曲は、小比類巻を演じる上で自分の中で言語化できないような部分を表現した側面もありました。


――音楽作りが役を作る上で重要だった部分もあるのですね。


ディーン:歌詞を書くことにより自分の中で言語化できてなかったものが言語化されたり、サウンドで楽曲としてまとめたときに生まれる非言語的な部分での共鳴というか。もしくは自分で作ったものに対して共鳴して、それに反響した部分が、小比類巻の役を演じる上で役に立ったというのは結果としてありました。


『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』(c)2022映画「バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版」製作委員会


――『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』、『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』と立て続けにミステリー作品に関わられていますが、ミステリーはディーンさんにとって好きな題材になりますか?


ディーン:アクションが好きなので、その意味では『パンドラ』はすごく楽しくやらせてもらっていますし、『シャーロック』の劇場版の方でもアクションをやらせてもらいました。扱うテーマがどんなものであれ、それが物語になる以上そうなるべき理由みたいなものがあると思うんです。僕が演じる役を通して追体験できるような何かがあると思うので、逆に可能性を狭めたくないから、体験できる種類を狭めたりはしません。それをしてしまうともったいない感じがしますし、縁とか出会いを楽しむ感覚なので、あまり“謎解き”にこだわっていることはないです。ホラーはちょっと躊躇しちゃうかもしれないですけれど(笑)。


■「水風呂に入りたい」


――忙しいスケジュールの中でルーティンになっていることがあれば教えてください。


ディーン:ストレッチ、睡眠……なかなか行けないですけれど水風呂に入りたいです。水シャワーとか、冷たい水を浴びたいですね。ライブツアーに出ているときには、毎回ライブ終わりに必ずサウナや交互浴を3セットやって、自分を落ち着かせてから寝ています。呼吸を荒くしていたら息が上がっていって鼓動も早くなる、深く呼吸したら心臓の鼓動も収まる。そういうのと同じで、体温をコントロールするのは直接的で手っ取り早いんです。自律神経を整えるというか、そのルーティンは効果的だなと思っています。


――2022年の夏、挑戦したいことがあれば教えてください。(※取材日は7月8日)


ディーン:『パンドラの果実』の撮影をしっかりやり遂げて……そのあとは(家族の住むインドネシアに)帰宅できたらなと思ってます。3年くらいずっとゴリゴリやっていたので、帰宅することが、ここからどういうふうに仕事をしていくかを考えるきっかけになるといいなと思っています。


――2022年の下半期の展望などがあれば聞かせてください。


ディーン:予定は組んだところで狂ったりもするものなので、あまり考えず全部仮スケジュールみたいな感覚でいるようにはしています。もちろん、やらないといけない準備はして、制作もし続けますが、激動の時代なので決めていても思い通りにはいかないよなと。この3年間は、皆さんそうだったんじゃないかな? 全員、予定が狂ったみたいな感じだったと思います。だから何があってもいいようにしっかり準備をした上で、反射神経の良さを心がけていて。自分がやらないといけないことを堅実にやっていきたいと思っています。


(取材・文=Nana Numoto)