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Googleなどが日本で法人登記、裁判手続きは迅速化される? 今後の影響を聞いた

2022年07月28日 10:01  弁護士ドットコム

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米国に本社があるGoogleとマイクロソフトが、日本で法人登記したと報じられた。


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会社法は外国企業が日本で継続して取引をしようとする場合、日本における代表者を定めて登記することを義務付けている。日本経済新聞(7月25日)によると、法務省と総務省は3月に48社に登記を要請。法務省が期限とした7月22日までに登記を申請したのは13社で、うち6社は登記を完了しているという。



日本で法人登記することにより、裁判手続きなどに影響はあるのだろうか。清水陽平弁護士に聞いた。



●手続きを日本国内で完結させることができる

——日本で法人登記することにより、どのような影響がありますか



前提として、Google、Twitterなど、大手IT企業も日本法人を置いています。しかし、それらの日本法人は、日本におけるプロモーション活動をしているだけという位置づけであり、実際にウェブサービスを提供しているのは、外国の本社であるという位置付けでした。



そのため、グーグルなどの外国企業に対して裁判手続をとる場合、日本法人ではなく、外国企業への手続きが必要不可欠となっていました。



しかし、日本での法人登記がされることにより、諸々の手続きを日本国内で完結させることができるようになります。



——裁判を起こす場合、手続きはどのように変わりますか



まず、裁判手続をとっていくには、外国企業の登記を取得し、裁判所に提出する必要があります。



国内の企業であれば、法務局に行けば取得することができますが、基本的には外国企業の場合は実際に外国に行って取得するか、オンラインで申請するといった対応が必要でした。オンラインでの取得は誰でもできるとはいえ、海外のサイトであるため、英語を読んで申請していく必要があるなど、一定のハードルがありました。



しかし、国内で登記されれば、法務局に行けば取得することができる点で、大幅にハードルが下がることになります。これまで外国企業の登記を取得するノウハウがなかった人にとっては、この点は大きなメリットであるといえるでしょう。



●半年→1か月程度で裁判が始まるように

——これまで海外のコンテンツプロバイダへの訴訟送達に長い時間がかかっていました。この点はどうでしょうか



通常の裁判をするとなれば、これまでは外国送達をしていくことが必要であり、第1回の裁判日程が入るのが約半年後となってしまうことも普通でしたが、国内で登記されれば国内での送達をすればよいだけなので、1か月程度で裁判が始まることになります。



仮処分という手続きの場合は、呼出までの期間が3週間に設定されることが通常ですが、国内に登記がある前提であれば、1週間とされる可能性があり、その点でも手続きが早く進む可能性があります。



したがって、登記がされることによって、迅速化、省力化を図ることができることになります。



——Googleについては、Googleマップの口コミで嫌がらせや誹謗中傷がおこなわれるなど問題になっています



たとえば、Googleに対して損害賠償請求をしたいとか、Googleが保有している電話番号の開示請求をしたいといったものは、これまで送達に時間がかかることもあり断念していたケースもあると思われますが、そういった請求がしやすくなります。



ただし、2022年10月1日からは、改正プロバイダ責任制限法が施行され、それによっていわゆる「新しい裁判手続」をとっていくことが可能になります。



新しい裁判手続では、手続開始時に送達が必要なわけではなく、またこの手続きで電話番号の開示請求をすることもできるため、迅速化というメリットは開示請求についてはそれほど出てこないかもしれません。




【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、総務省が主催する「発信者情報開示の在り方に関する研究会」の構成員となった。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第3版(弘文堂)」などがある。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp