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元教員の乙武洋匡さん「生産性をあげていくことが一番大事」 給特法改善を求めるネット署名に4万筆集まる

2022年07月26日 16:01  弁護士ドットコム

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給特法を抜本改善してください——。現役高校教員や大学教授などでつくる有志の会が始めた給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)の改廃を求めるネット署名に4万筆以上の賛同が集まっている。会のメンバーが7月26日、都内で署名活動の中間報告をおこなった。


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賛同者からは「家族の小学校教員は、朝7時に家を出て夜8~9時に帰ってきます。休憩時間は全く取れていません。いつも仕事に追われていて健康状態が心配です」「現役教員です。僕らは聖人ではなく、労働者です」など悲痛な声が寄せられている。



現役公立高校教員の西村祐二さんは「残業代が欲しいのではなく、残業を減らすため給特法の抜本的改善を求めていきたい。教育界の諸悪の根源は給特法ではないか」と訴えた。



●「子どもたちの教育環境の改善でもある」

1972年に施行された「給特法」により、公立学校の教員には時間外勤務手当と休日勤務手当が支払われないことになっている。その代わり、「教職調整額」として、月額給料の4%が一律に支給されている。時間外勤務を命じることができるのは、(1)生徒の実習、(2)学校行事、(3)職員会議、(4)災害など緊急事態からなる「超勤4項目」に限るとされ、労働基準法37条の時間外労働における割増賃金の規定が適用除外されている。



署名の賛同人で作家の乙武洋匡さんは、2007年から3年間、東京都杉並区で教員をしていた。給特法について「私もそのとき初めてこの法律の存在を知った」と話す。



学校運営のための業務割り振り(校務分掌)では、学校のHP更新を任された。「子どもに教育をしていくプロフェッショナルに課せられる仕事として、遂行される必要がありますか。この辺の生産性をあげていくことが一番大事だと思っている」と指摘する。



当時、ベテラン教員からは「君たちの世代はかわいそうだよね。俺たちは子どもと向き合うのが仕事だったけど、今の教師は書類と向き合うのが仕事だもんね」と言われショックを受けたという。



乙武さんは「給特法の改廃は教師の労働状況の改善に見えますが、子どもたちの教育環境の改善でもある。これが結果的に個性を大事にした人材の育成に繋がり、それが経済政策にもつながっていく」と呼びかけた。



ワーク・ライフバランス社長の小室淑恵さんは「脳に休息を取らせない働き方は、教員だけでなく子どもたちも壊していく。子どもたちを抑圧的な教育環境から一刻も早く救って、給特法を早急に廃止しなければならない」と指摘。「残業代は全て支払うのが当たり前とすることで初めて、学校現場にもコストや評価という当たり前の概念が適応されてくる」と話した。



署名は秋頃に各政党へ提出予定で、教員勤務実態調査の速報値が出たあとに文科省にも提出するという。



●【動画】記者会見の様子