2022年07月26日 11:41 弁護士ドットコム
自民党の国会議員が参加した6月の会合で、「同性愛は後天的な精神の障害、または依存症」などと書かれた冊子が配られたことに対し、「LGBT差別冊子の対応を求める有志の会」(有志の会)が7月25日、冊子の回収などを求めた署名5万1503筆を自民党本部に郵送で提出したことを明らかにした。
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会合は6月13日に開かれた「神道政治連盟国会議員懇談会」で、出席者に配布された冊子には、「(LGBTの)⾃殺率が⾼いのは社会的な差別があることが原因かというとそうではありません」、「同性愛を擁護する教育をすれば同性愛者は増える」などと書かれていた。
都内で開かれた会見で、有志の会の呼びかけ人で一般社団法人fair代表理事の松岡宗嗣さんは、「いずれも事実として間違っており、明確に差別的な⾔説といえます。同性愛は精神障害や依存症ではなく、異性愛へと矯正しようとする転向療法は暴⼒的な⼈権侵害です」と話した。(ライター・小泉カツミ)
神道政治連盟国会議員懇談会は、神社本庁の関係団体である「神道政治連盟」の理念に賛同する国会議員で構成される議員連盟で、参加する議員の多くが自民党所属の議員となっている。
有志の会によると、冊子には以下の内容が記載されていたという。
「個⼈の強い意志によって依存症から抜け出すことは可能なので、同性愛からの回復治療の効果が期待できる」 「⾃殺率が⾼いのは社会的な差別があることが原因かというとそうではありません。LGBTは⾃分⾃⾝が様々な⾯で葛藤を持っていることが多く、それが悩みとなって⾃殺につながる」 「同性愛の原因について、家庭環境、特に親⼦関係に問題がある」 「同性愛を擁護する教育をすれば同性愛者は増える」 「性的少数者のライフスタイルが正当化されるべきでないのは、家庭と社会を崩壊させる社会問題となるから」
ライターでもある松岡さんがこのことを記事で取り上げたところ、差別的な冊⼦配布に対し⼤きな批判が集まったという。これを受けて、松岡さんらが有志の会を⽴ち上げ、7⽉2⽇に署名キャンペーンをはじめた。
署名では、⾃⺠党に対して、(1)この冊⼦に書かれている内容を明確に否定し、差別をなくす姿勢を⽰すこと、(2)これ以上誤った認識に基づく差別的な考えを広めないために、冊⼦を回収すること、という2点を求めており、7/21時点で5万1503筆の賛同が集まった。
自民党本部に郵送で提出するにあたって、宛先は当初、⾃⺠党総裁である岸⽥⽂雄⾸相と、神道政治連盟国会議員懇談会会⻑の安倍晋三元首相の2名だったが、安倍元⾸相が亡くなったことを受けて、同懇談会事務局⻑の城内実衆議院議員に変更したという。
松岡さんは、冊子記載の内容について、「いずれも事実として間違っており、明確に差別的な⾔説」だという。
「同性愛は精神障害や依存症ではなく、異性愛へと矯正しようとする転向療法は暴⼒的な⼈権侵害です。
性的マイノリティの⾃殺率が⾼いのは、社会に根深い差別や偏⾒が残っているからであり、同性愛の原因は親⼦関係にあり、擁護すれば同性愛者が増える、家庭と社会が崩壊するといった⾔説も、悪質な差別⾔説であり⾔語道断です。
問題は、この冊⼦が政権与党である⾃⺠党議員の⼤多数が参加する会合で広められたことであり、報道によると、司会の議員からは『ぜひ読んでほしい』と呼びかけられたと⾔われていることからも、こうした差別⾔説を正当化している点で看過できません。
差別冊⼦の配布が報じられて以降、メディアの取材などで、神道政治連盟側は『差別の⽬的はない』などと⾔い訳をし、こうした明らかに事実誤認の差別⾔説が『いろいろな考え⽅の⼀つ』かのように語られてしまっています。⾃⺠党からも何の対応もなく、差別が容認されてしまっていると⾔わざるを得ません」(松岡さん)
松岡さんは、安倍元首相の銃撃事件で関心が集まっている世界平和統一家庭連合(旧統一教会)についても、性的マイノリティに関する権利保障について「執拗な反対運動」を展開している団体だと言及した。
「旧統⼀教会の執拗な反対運動が展開されていることを知っていただきたいと思います。そして、昨今はトランスジェンダーにもその⽭先が向かっています。
加えて、旧統⼀教会だけでなく、今回の神道政治連盟など、宗教右派と⾃⺠党保守派の議員がつながって、ジェンダー平等や性的マイノリティに関する権利保障に反対し続けていること、その動きが⾮常に根深く、法整備を妨げる⾼い壁になっていることが知られてほしいと思います」(松岡さん)