2022年07月22日 10:01 弁護士ドットコム
父親が突然亡くなり、「手続きの嵐」に襲われたテレビプロデューサーの鎮目博道さん。特に大変だったのは、相続関連の「めんどくさ地獄の底なし沼」だった。
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実家を売却し、父親の預金も無事に母の口座に移した鎮目さんの前に立ちはだかった最後の関門は「よく分からない土地の数々」。
土地というと、ひと財産のような感じがするが、そこは処分もままならない「負動産」だった。ただただめんどうくさい手続きをこなすしかなかったという。(以下、鎮目さん)
実は私の祖父がその父親から相続した「田畑」が山梨県に10筆ほどあって、祖父は9人兄弟の末っ子だったらしく「10筆とも持分9分の1」のその土地を父が相続していた。広さを合計すると4000平方メートルほどあるのだが、何せ9分の8は別の人の所有になるから、処分もままならない。
さて、この土地を相続しなければならないのだが、「登録免許税」の額つまり収入印紙の代金を知るためにもまず「名寄帳」というのを山梨の自治体に申請することに。
これは、ある個人が所有している不動産の明細一覧を確認できるもので、取り寄せてみたところなんと全ての土地の課税価格の合計はおよそ22万5000円。持分9分の1だと、たったの2万5000円だ。
「おいおい2万5000円の土地の相続登記かよ…しかも処分もできないのに」と涙がちょちょ切れそうだったが、2024年4月から相続登記が義務化され、いずれにしろ登記しなきゃならないみたいだ。
でも、これ「めんどくさいから司法書士に頼む」ってことにしても10万円とか報酬を払うのはとてもじゃないけど割に合わないし…ということで泣く泣く自分で登記することに。
山梨まで電車に乗って行くのすら馬鹿馬鹿しいので、郵送で登記申請にチャレンジ。ネットで調べると、520円の「レターパックプラス」(対面で届けて、受領印ももらうサービス)に必要書類と返信用封筒を入れて法務局に送れば良いということなので、それでトライしてみる。
ちなみに収入印紙は、課税価格の1000分の4だが、最低額は1000円のようなので1000円分の印紙を貼って、返信用のレターパックプラスを入れて送ってみた。
すると、やはり数日経って山梨の法務局からお電話。「あちゃー、また間違えたか」と思ったら、2つ間違っていたようだ。
まず、収入印紙の額が違うそうだ。2025年3月31日まで不動産価格100万円以下の土地の相続をする場合の登録免許税は「免税措置」で無料なのだという。
で、その適用を受けるには「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と申請書に記載しなければならず、「こちらで記載しておいて良いですか」ととても優しいお言葉。「印紙代1000円は税務署を通じて返却されます」ということだった。
そしてもうひとつの間違いは「レターパックプラスは返信用封筒として使えません」ということだった。
どうやら「登記識別情報は本人限定受取郵便でしか送れない。書留郵便に105円追加で本人限定受取にすることができるが、レターパックプラスは本人限定受取にはできない。だから、こちらで計算したところ790円なので、790円分の切手を貼ってA4サイズが入る返信用封筒を法務局に送ってほしい」と親切に教えてくれた。
そして、それから1週間ほどで登記は完了。登記識別情報とともにレターパックプラスが返ってきた。ちなみに、使用しないレターパックプラスは42円の手数料を払えば切手やハガキにも交換してくれる。
以上、長くなってしまったが、私の「相続を自分でやったら大変だった」体験は以上です。やはり自分で相続や登記の手続きをするというのは想像以上に大変でした。
といって、ほとんど資産価値のない土地などを相続したらどうすればいいのか…とても悩ましい問題だなと思いました。相続登記がされず、所有者不明になってしまう土地が増えているのも、無理もないなと感じました。