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もう限界!過干渉な職場の「お局」が「休日の過ごし方」までダメ出し…対処法は?

2022年07月21日 10:01  弁護士ドットコム

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都内で会社員として働くハルカさん(仮名・30代女性)は、プライベートに過度に干渉してくる職場の「お局」に悩まされる日々を送っている。


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ことの始まりは、直接の上司であるお局に「彼氏はいるの?」としつこく聞かれ、ハルカさんが「いません」と答えたことだった。



それ以来、お局から「彼氏できた?」「もう40近いんだから、早く結婚しなきゃ」「このままだと、子どもが産めなくなるよ?」などと言われる日々が続いている。



さらに、休日の過ごし方や化粧の仕方などの「ダメ出し」もされるようになった。



苦痛を感じるようになったハルカさんは、ほかの上司に相談した。しかし、「(お局は)あなたのために言ってくれるんだよ」と言われ、まったく取り合ってもらえなかったという。





●従業員の交際に介入するような言動「パワハラ」にあたりうる

弁護士ドットコムにも「離婚することを上司に話したら、詳細について、根掘り葉掘り聞かれるようになった」など、同僚や上司によるプライベートへの干渉に悩んでいる人からの相談が複数寄せられている。



プライベート(私生活)への干渉は、ハラスメントにあたるのか。



厚生労働省の『職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキンググループ』による報告書(2012年1月30日付)によると、「私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)」もパワハラにあたるとされている。



労働問題にくわしい加藤寛崇弁護士は「この報告書が示したパワハラの6類型は、その後、厚生労働省の指針でも採用されました。パワハラで裁判になったケースでも、当事者からこの類型に即した主張がされ、裁判所もこの類型・基準を採用して判断しているケースも見受けられます」と語る。



しかし、「私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)」に該当するかどうかが争われて判断されたケース自体がまだ少なく、どこからがパワハラなのかという明確な線引きは困難だという。



「比較的参考になる事例として、福岡高裁2013年7月30日判決があります。



これは、地方公共団体の職員が、職場での交際関係について、総務課長から『入社して右も左も分からない若い子を捕まえて、だまして。お前は一度失敗しているから悪く言われるんだ。うわさになって、美人でもなくスタイルもよくないC(交際相手)が結婚できなくなったらどうするんだ』『お前が離婚したのは、元嫁の妹に手を出したからだろうが。一度失敗したやつが幸せになれると思うな。親子くらいの年の差があるのに常識を考えろ』などと発言されたことがパワハラであると争われたものです。





この点について、判決は、交際関係にあるのはいずれも成年なので、その交際は当事者の自主的な判断に委ねるべきものであり、その過程で職場への悪影響が生じ、これを是正する必要がある場合を除き、交際に介入するかのような言動を避けるべき職務上の義務があるとしました。そして、上記の発言等はこの義務に反した『誹謗中傷、名誉毀損あるいは私生活に対する不当な介入』であると判断しました。



成年である以上、交際は当事者の自主的判断に委ねるべきであり、介入するような言動を避けるべきだ、という判断からすれば、一般には従業員の交際に介入するような言動はパワハラにあたることになるでしょう」



●「パワハラ」への対処法は、会社規模などによってさまざま

職場内のコミュニケーションの中で、上司や同僚などが何気なくプライベートについて言及することはありえる。加藤弁護士は、「ひとつの基準として、当事者が嫌がる意思を表明しているのに、同様の発言をくり返す場合には、パワハラに当たると認められやすい」と説明する。



「大阪高裁2013年10月9日判決では、職場における暴言やからかい的な個々の発言については『不適切というに止まるものもある』としつつ、従業員が明らかに嫌がったり、当惑したりしているのに、くり返し同様の発言を続けたことを理由に、違法性があり、パワーハラスメントに当たると判断されています」



ハルカさんの場合も、くり返し同様の発言がされ、ハルカさんも嫌がる様子を示していることから、加藤弁護士は「パワーハラスメントに当たると考えられる」という。





問題となるのは、パワハラへの対処法だ。ハルカさんは、このまま同じ部署で働きたくないと考えるほど追い詰められているが、上司に取り合ってもらえずに悩んでいる。



加藤弁護士は「職場の規模等によっても対処法は変わると思う」としたうえで、次のようにアドバイスする。



「改正法および指針により、事業主はパワハラに関する相談窓口を設けることが定められました。この相談窓口があるならば、ひとまず利用することが考えられます。



窓口が存在しないか機能していない場合は、それ自体が問題なので、パワハラの問題とあわせて、労働局長の援助(会社に対する勧告や指導)を求めるという方法も考えられます。そのほか、労働局のあっせんや調停という方法もあります。



労働組合が存在するのであれば、職場の問題なので、団体交渉で職場環境の是正を求めるなどの手段をとるほうが、今後の適正な職場環境を保たせるうえで実効的でしょう。場合によっては、外部の労働組合に加入するという方法もあります。弁護士に依頼して通告することで改善につながる場合もあります。



会社の規模や労働組合の有無、どこまで労力をかけられるか、などの事情に応じて、とれる手段を講じていくことになるでしょう」




【取材協力弁護士】
加藤 寛崇(かとう・ひろたか)弁護士
東大法学部卒。労働事件、家事事件など、多様な事件を扱う。労働事件は、労働事件専門の判例雑誌に掲載された裁判例も複数扱っている。
事務所名:三重合同法律事務所
事務所URL:http://miegodo.com/