2022年07月16日 09:31 弁護士ドットコム
安倍晋三元首相が銃撃され、死亡した事件で、その場で逮捕された容疑者の犯行動機として報じられた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に注目が集まっている。NHKなどの報道によれば、容疑者は母親が多額の寄付をした結果、破産に追い込まれたという。
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弁護士ドットコムには同団体に限らず、様々な宗教団体の信者となった家族とのトラブル相談が寄せられている。宗教2世と呼ばれる、親の宗教の影響を受ける子どもたちを中心に、親子の絶縁や脱会をめぐる相談を紹介したい。
「未成年だけど脱会したい」。そんな相談を寄せたのは15歳の高校生だ。
「母親に、私が生まれた時からある新興宗教団体に入ることを願っていたと云われ、叔父にまで懇願されて仕方なく親の顔を立てて、会員になりました。ですが、このようなおかしなことを主張する団体の名前がつくことがどうしてもいやで、早々に退会しようと思っているのですが、全く退会する方法がわかりません。新興宗教の会員を退会する方法を教えていただけないでしょうか」
幸いにして、まだ具体的な被害はないようだ。この高校生のように、「いつの間にか親が勝手に入れた宗教団体から脱会したいが、方法がわからない」。脱会を進めることで、関係者と接触するのが怖いという声も複数寄せられていた。
実際に、脱会しようとしてトラブルに見舞われた人もいる。
「反社会的なカルトに入会していますが脱会希望しています。自分で入会したわけではなく、子どもの頃、親の意思で入会させられ、十代後半から年上の方が執拗に誘いにくるので、疑問を感じていながらもイヤイヤ活動していた時期があります」
この人は現在は、活動をしていないが、「居留守をして会わないようにしていると、何回も自宅や学校付近で待ち伏せしていて気持ち悪いし怖いです」という。
「会員の常識から逸脱した行動や反社会的行動を見て異常だと感じていますし、新聞購読やお金の要求、選挙活動の強要をしてくるので、私にとっては人権侵害と迷惑行為だとしか思えません。1日も早く安全に脱会したいのですが、どのようにしたらいいのでしょうか?」
その上で、「マインドコントロールされていたので、『地獄に落ちる』とか『不幸になる』と言う言葉が気になる」という率直な思いも吐露している。
親を宗教団体から守るために、子どもたちからも相談が寄せられていた。
「母親が某宗教に入れ込んでおり、預貯金等からかなり献金していると思われます」という人は、かねてより資産状況を確認したいことなど話し合いを続けてきた。しかし母親本人は「お金を払っていない」と言い張るため、こう着状態だ。
「とうとうマンション(母親名義)を売却し、アパートへの転居を考えていることが判明しました。私がいくら説得しても全く聞いてくれない状態ですが、最低限の資産を守るために、子どもが親の資産を監督する方法などはあるのでしょうか?」
また、宗教団体とは異なるものの、お祓いをする個人に多額のお金を渡すケースもある。
「身内に不幸があり、精神的に参った親がお祓いにハマっています」と相談を寄せた人は次のように語る。
「不幸は先祖の霊が怒っているから起こっているとのことで、お祓い?のようなものを勧められています。一度きりならまだいいですが、悪いことがあるうちはまだ先祖が怒っているからと何かにつけてお祓いを勧められています。結果月数万を払い続けている状態です。親は完全に信じきっており、お祓いを頼むのを止めてくれず困っています」
家族の信仰トラブルでは多くの場合、金銭トラブルも併発しているが、相続で問題が大きくなるケースもある。「高額献金をする新興宗教信者の母を、相続放棄させたい」と相談を寄せた人の場合、父親が亡くなったことで強い危機感を抱いた。
「母がある宗教の信者です。多額の献金をしている事が発覚しました。父が亡くなり、相続問題があります。もう母とは住めません。このままでは、その組織に遺産が流れて行くので 阻止したい。相続放棄はできないのか」
また、別の人も父親が亡くなった際に同じ相談を寄せている。
「遺産相続をするのですが、母がある宗教に入っています。母は、過去に壺や像等を購入しています。母は、父に無断でお金を数百万円無心したこともあります(遺産は、土地・家・株・預金です)」
新興宗教の信者である家族との絶縁について相談を寄せる人も多数いた。
「別居している実親と絶縁する上で法的に問題責任を持たされないようにする方法はありますか?」と質問した人の場合、「自分は結婚し、子どももいますが、新興宗教や精神疾患のある親の推測できない偶発的な行動に脅かされています」という。
この人の実親は「統合失調や躁鬱で、重度の精神疾患として経歴があり、精神科に通っていました」。そうした中で、ネットワークビジネスで勝手に高額な買い物をしたり、新興宗教に多額のお布施協力をしたり、トラブルを起こすようになった。
さらに、祖父母が残した遺産を切り崩すように。話し合いをしようにも親は聞き耳を持たない上、トラブルを起こすたびに相談者や相談者の妻に迷惑がかかっており、頭を抱えている。そこで「自分達の家族が巻き込まれない様に、法的に絶縁とすることは可能か?どうかお教えください」。
中には、子どもの財産にも手を出そうとする人もいる。
「母親が宗教と健康食品にはまっており困っております。父親がすでに死んでおり、残してくれたお金を子ども(私と姉)の分まで使いきりせびってきます。私自身、うつ病で仕事をしておらず無収入です。障害年金と貯金を崩して生活しております。母親と縁を切ることは可能でしょうか」
「母から離れたり、警察に相談したりできないか」と相談を寄せた未成年の子どももいる。
「私が物心ついた時から、母親は熱心な宗教家でした。毎週のように拘束され、またそのイベントなどがある時も行かなければならなかったです。私がお金がないのを知っていながら、宗教のワークブックのようなものを毎月買わされます(料金は私負担)」
「体調が悪く『行きたくない』と言うと、叩かれたり『授業料払わないぞ』などの、脅しを受けた事が今までに何度もありました。おかげで、鬱になったり死にたいと思うほど追い詰められたことが何度もあります」
「母はろくに働かず、収入は姉に頼ってばかり、食べ物にも困ることがほとんど。大学の入学金を、稼がなくてはいけないので家から出る余裕はまだありません。警察にはどのように相談したら取り合ってくれますか?」
精神的苦痛による慰謝料請求を考えている人もいた。
「私は乳児のときに両親の手によってある宗教法人に入会させられました。大人になるまで、親に集会への参加を強制させられたり、お祈りを強制させられたりして、信教の自由を侵害され(私は無宗教です)、大きな精神的苦痛を受けました。
このことで、信教の自由を侵害した両親及び子どもも参加させるよう両親に指導した宗教法人に対して損害賠償請求をすることはできますか?できない場合は理由を教えてください。とても辛い思いをしてきたので、このまま泣き寝入りするのは非常に悔しいです」
これまでの事例はいずれも宗教2世をめぐる法律相談だったが、中には新興宗教に入った子どもが抜け出せなくなり、自身を守るために絶縁を覚悟する親からの相談も寄せられていた。
相談を寄せた人の場合、20年前に息子が宗教団体に所属するようになった。「それ以来、日を追うごとにその宗教にのめり込み『すべてはその宗教が解決してくれる』という妄想を抱くようになっていきました」。
息子は職場トラブルから退職する一方で、年収300万円にもかかわらず、宗教団体に年間500万円もの献金をしていた事も判明した。
「その不合理性を一生懸命説得するのですが、全く聞く耳を持たず宗教こそわが命に凝り固まって、逆ギレされます。もう別の世界に行ってしまったと、観念せざるを得なくなりました。経済的な強要もされそうで、正直理不尽だと感じます」
夫婦ともに高齢であることから、穏やかな老後を送るためにも法的に絶縁することは可能か頭を抱えている。
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