コロナ禍で、色々と遠ざかっている行事が少なくない。たとえば法事。うちの本家もここ2、3年は法要があっても、ごく少人数で済ませているらしい。また、同級生に僧侶がいるが、彼もあまりこのところは檀家から大々的な葬儀を打診されず、こじんまりとした箱でやることが多いと話していた。
さて。葬式はある意味で非日常行事である。そんな中で、衝撃的な光景を見せつけることもある。今日はその事例を紹介をしていきたい。(文:松本ミゾレ)
「お棺のご遺体を携帯で撮影する人が結構いた」という報告も
先日、ガールズちゃんねるを閲覧していると「お葬式のびっくり体験談!」なるトピックを発見した。これを立てた人物は、知り合いの葬儀の際、待合室でその親族同士がお金の話、遺産の話で他人もいるのに揉めていた、と話している。こういうドラマみたいなことが本当に起きるのだと、かなり驚いたようだ。
このトピックには、ほかにも二度見するようなエピソードも多数寄せられている。いくつか引用させていただきたい。
「なんかお坊さん体調不良? お経あげてるときに突然吐いたことがあってびっくり&心配したことはあります」
「お棺のご遺体を携帯で撮影する人が結構いた事」
「今からまさに焼却炉に入りますよ、のところをインスタにアップしている人がいた。血の気が引いた」
「父の火葬で炉の前でお別れするとき、母が泣きながら『お父さん!』って言った瞬間、私の真珠のネックレスと兄の数珠の紐が切れてバラバラになった。タイミング的にびっくりしちゃった」
と、こんな具合で、凄い話がよりどりみどりといった塩梅。故人の顔を撮影するというのは意外と多いようで、他にも同様の書き込みは複数見られた。
たしかに、最後の最後で綺麗に死に化粧をしてもらってるから、それを記念に撮影したいと遺族が思うのも仕方ないことなのかもしれない。
「お葬式って、大変だ…」筆者が遭遇したエピソード
私事になってしまうが、2007年に祖父が死んだ。もうずっと寝たきりで、頭だけハッキリしている状態が20年近く続いてたんだけど、その状態でも酒とたばこをやめないものだから、終末期は本当に哀れなものだった。
その祖父が死んだことで、孫としては「これでもうしんどい思いをせずに済むね」と安堵したんだけども、その祖父の葬儀が結構面白かった。
まず、うちは分家の一派の一つで跡継ぎもなく(僕が結婚せず子もいないため)、田舎の一族の立ち位置としては最下層。だからなるべく小さな斎場で、質素に通夜も葬儀も済ませようとしたんだけど、いざ通夜となると、弔問客がめちゃくちゃたくさん来た。
事前に用意していた通夜返礼品と香典返しがあっという間になくなり、逆に想像以上に香典が集まり、慌てて金庫を斎場のスタッフに貸してもらう始末。慌ただしいことこの上なかった。
で、そういうバタバタとした状況になると、変な人も紛れ込むもので。弔問客の中には、薄汚い恰好をした、昔からその辺をフラフラしてることで有名なおっさんが紛れ込んでいた。
前述のように祖父は20年来の寝たきり老人だったので、そのおっさんと少なくとも20年間は交流はない。
それ以前に、頭がはっきりしていた祖父が、このおっさんについて話しているのを聞いたことは一度もなく「なんでこんな人まで来るんだろう」と不思議に思った。
だけど来たものは仕方がない。僕が応対すると「急だったから香典はないけど、明日持ってくる。だから香典返しをくれ」と言う。
人生最後のイベントで、こういう人を招いてしまう祖父の人徳のなさに笑いが出そうになったが、こういう場で変にトラブルを大きくしたくなかったので、通夜返礼品と香典返しをあわせて渡した。
ふてぶてしいことに、おっさんはそれからも2時間ほど斎場に居座り続けた。僕含む家族の誰もが「なんであの男がいるんだ?」と不思議に思っていたし、斎場スタッフもこのおっさんを確認した瞬間、香典の入った金庫の側に追加の人員を配していたので、そういうことだったんだろう。
お察しのように、当然翌日の葬儀にこのおっさんは現れず。これには遺族も苦笑いであった。ちなみにこの葬儀には僕の同級生の坊主も参加しており、当時の住職と2人で念仏を唱えてもらった。坊さん2人呼ぶと結構な値が張るものだけど、想定以上に集まった香典のおかげでなんとかなったのだった。