トップへ

リアルなダンボールアートの作者は高校生 作品作りの魅力を聞いてみた

2022年07月08日 18:01  おたくま経済新聞

おたくま経済新聞

リアルなダンボールアートの作者は高校生 作品作りの魅力を聞いてみた

 様々な物の梱包材として広く使われているダンボール。これを素材とした造形作品、いわゆる「ダンボールアート」を作る方もいて、箱の形でイメージされるダンボールが様々な姿になる様子は、まるで魔法のようです。


 高校生のダンボールアーティスト、shiroさんは乗り物メインで作品を作っています。作品作りについて話をうかがいました。


【その他の画像・さらに詳しい元の記事はこちら】


 小学校低学年の頃から、お菓子の空き箱などを使って工作をしていたというshiroさん。小学5年生になってプラモデルも作り始めますが、小学生の財力では次々とプラモデルを買い揃えるわけにもいきません。


 「どうにか模型作りを『身近な材料で』『安く』済ませるには……と考え、小6の頃試しにダンボールで車を作ってみた結果、どハマりした、という感じですね」


 ダンボール工作に目覚め、作品作りに取り組むきっかけとなった処女作は、父の日のプレゼントとして作ったのだそう。自分が楽しむためではないところに、shiroさんの人柄が表れているように思えます。


 お父様が車や鉄道が好きということもあり、自然と乗り物好きになったshiroさん。おのずとダンボールで作る作品も、鉄道車両や車といった乗り物が多くなっているのだとか。


 FIAT500や初代クラウン(RS型)は手のひらサイズ。この大きさで曲面やバンパー周り、フェンダーの複雑なディティールまで再現していることから、確かな造形力と観察力がうかがえます。


 九七式中戦車は車体や砲塔のリベット、履帯まで細かく表現。今にも動き出しそうな存在感です。


 造形の際、心がけていることをうかがうと「ダンボールのダンボールらしいところを見せないこと」とのお答え。


 「ダンボールといえば断面の波模様が特徴ですが、そこが隠れるように作っています。『え!?これダンボールなの!?』という反応が楽しいので。それゆえか、写真で見せると木造と勘違いされることもしばしばあります」


 中2の秋に作ったというランドクルーザー70は、お父様の愛車がモデル。「実物を舐め回すように見ながら作りました」の言葉通り、エンジンルーム内部まで細かく作り込まれています。


 初めて本格的に作った鉄道車両として挙げてくれたのは、D51形蒸気機関車の200号機。中2から中3にかけての新型コロナウイルス自粛期間中、3週間ほどかけて完成させたのだとか。


 蒸気機関車といえば、配管や動輪周りといったメカ部分のディティールが魅力。「特に車輪部分を作るのが大変でした」と語ってくれましたが、パーツごとの色分けも紙のトーンを変えて再現しているところ、動輪ごとに大きさの違う重りなど、見どころの多い作品になっています。


 鉄道ものの2作目が、高1の夏に1か月かけて作ったというEF58形電気機関車。この作品でも、前面の塗り分けが紙のトーンを変えて表現。車体側面のよろい戸、台車の板バネも細く切ったダンボールを貼り重ねることで再現されています。


 shiroさんは「前回にも増してパンタグラフや大量の車輪など、細かいパーツが増えて精神が削られました」と制作時の苦労を話してくれました。EF58は旧型電気機関車ということもあり、クラシカルなスポーク車輪が採用されているのも大変さを物語っているのかもしれません。


 ダンボールアートの魅力について、shiroさんは「ダンボールという素材の『表現の幅が広い』こと」を挙げてくれました。


 「一口にダンボールといっても、厚さ、硬さ、色がひとつひとつ違っています。うまいこと加工すると、乗り物特有のきっちりとした表情から、動きを感じる生き物まで幅広く、ありとあらゆるものが作れます。作り手の技量次第で、どんなものにも可変可能なのがダンボールの素晴らしいところですね」


 これらの作品、以前町の銀行の支店で小規模な展示会でお披露目されたことがあるのだとか。しかし、これだけ精巧に作られているのですから、もっと多くの方の目に触れてほしいと思ってしまいますね。


 今後は「これまでは塗装をしてこなかったので、作ったダンボールの模型に塗装をして、いよいよダンボールだと分からない、乗り物をそのままスモールライトで縮めたような作品を作ってみたいです」というshiroさん。手始めに今度の夏休み、1番ゲージ(軌間45mm)という大きめの動く鉄道模型を作る予定だとか。完成が待ち遠しいですね。



<記事化協力>
shiro_段ボールさん(@cardboard_white)


(咲村珠樹)