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初登場プジョー9X8に熱視線。BoP上は「グリッケンハウスが最速」とトヨタ技術首脳etc.【WECモンツァ木曜Topics】

2022年07月08日 12:11  AUTOSPORT web

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WEC第4戦モンツァでデビューを飾るプジョー9X8
7月7日、WEC世界耐久選手権は第4戦モンツァ6時間レースの走行前日を迎えた。イタリア北部、ミラノ郊外に位置するモンツァ・サーキットでは、うだるような暑さのなか、各陣営が車検やピットストップ練習などを行い、8日からの走行に備えていた。

 この大会でデビューを飾るプジョーの新型ル・マン・ハイパーカー、『9X8』については、水曜日にはガレージのシャッターが閉められたままであったが、木曜は午前9時前にはピットロードに姿を現し、いち早く車検に臨んだ。プジョーの2台は、パドックで多くの関心を集めていた。

 なお、プジョーのピットガレージは、ピットレーンのほぼ中央、チームWRTとチーム・プロジェクト1に挟まれる形で位置している。ハイパーカークラスのライバルとなるトヨタGAZOO Racingのガレージは、ピットロードエンドに位置している。

 ソーシャルメディアでグリーンのカラーリングを公表したため、一部では混乱が生じることになったアルピーヌ・エルフ・チームのアルピーヌA480・ギブソンだが、モンツァには通常どおりブルーのカラーリングで参戦する。このソーシャルメディア上での編集は、イタリア戦をプロモートするために行われたものだという。

 なお、既報のとおりグリッケンハウス・レーシングのグリッケンハウス007 LMHについては、赤からブルーへとカラーリングを変更し、今ラウンドへと臨む。

■2021年同様、ELMSからの“モンツァ連戦”で開催
 パドックでは、多くのドライバーが前週に行われたELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズからのモンツァ2連戦を迎えている。

 このなかには、前週にはケッセル・レーシングのフェラーリ488 GTE EvoでELMSに参戦し、今週はプジョー9X8へと乗り換えるミケル・イェンセンも含まれる。

 この他、ハイパーカークラスではニコラ・ラピエールが、そしてLMP2クラスでは今回からリシャール・ミル・レーシングチームに加わるポール・ループ・シャタンをはじめ、ロレンツォ・コロンボ、ルイ・デレトラズ、フィル・ハンソン、フェルディナンド・ハプスブルク、マティアス・ベッシェ、ティーム・ファン・デル・ヘルム、ジェームズ・アレン、ガブリエル・オーブリ、フランソワ・ペロード、ニクラス・ニールセン、アレシオ・ロベラといったドライバーたちが、ELMSのレースにもエントリーしていた。

■アルピーヌ、BoPシステムの“リニューアル”を希望
 シーズン前半の複数回にわたる出力調整を受け、アルピーヌの幹部はハイパーカーカテゴリーのBoP(性能調整)プロセスをより分かりやすいものにすることを提案している。

 アルピーヌのローラン・ロッシCEOは、「分かりやすく、適用しやすくするために、やらなければならないことがある。正直なところ、私には少し理解しにくいものだったのだ。そして、その仕組みを説明してくれる人を探すのにも苦労した」と6月に語っていた。

 かつてプジョー・スポールとFIAに所属していた経験を持つ、アルピーヌ・レーシングのエグゼクティブ・ディレクター、ブルーノ・ファミンは、BoPは「リニューアル」することによって有益なものとなると示唆したが、その実施方法についてはオーガナイザーと協議中であるとし、コメントを避けた。

「より良いシステムのために、みんなで力を合わせるべきだと思う」とファミン。

「BoPというシステムの限界は、誰もが感じていることだろう。来年はさらに多くのメーカーが参入してくるわけだし、いまやシステムを一新する必要性が生じている」

 アルピーヌがハイパーカーカテゴリーにおけるBoPの管理方法を変更するように求めていることについて、FIAとACOはコメントを控えた。現段階では、大幅な変更が行われるとの見方は示されていない。

■533kWのグリッケンハウスが「モンツァ最速」?
 大会を前に発表されたハイパーカーカテゴリーのBoPでは、トヨタGR010ハイブリッドの『190km/h以上』に対し、プジョー9X8では『150km/h以上』と、そのフロントハイブリッド・モーターからのデプロイメント・スピードが指定されている。

 これは3月にACOが説明したように、両車のタイヤサイズの違いに起因するものだ。トヨタは今季からフロント12.5インチ幅、リヤに14インチ幅のタイヤを装着している。一方のプジョーは、前後ともに13インチ幅のミシュランタイヤを履く。

 テクニカル・ディレクターを務めるパスカル・バセロンによれば、トヨタGAZOO Racingはグリッケンハウス007 LMHがモンツァでの「最速のマシン」になると予想しているという。

 第2戦スパではポールポジションも奪っているグリッケンハウス007 LMHは、今回のBoPで13kWの出力アップを果たしており、その533kWという数字はこれまでのLMH車両における最大値となっている。

「レース(シーズン)が進むにつれ、グリッケンハウスはBoPの補正を受けていると思う」とバセロン。

「ここでは、明らかに、グリッケンハウスが最速のマシンであると予想している」

 バセロンはまた、プジョーのデビューについて「トヨタが必要としているものだ」と付け加えている。

「シリーズにライバルを招き入れること、それが一番だ。これについては、喜びでしかない」

■将来を模索中のチームWRT
 チームWRTは、LMDhプログラムにおける提携について、ランボルギーニとの協議を否定した。チーム代表のヴァンサン・ボッセによると、WRTはランボルギーニとLMDhプロジェクトについて「実際に接触したことはない」と語っている。

「ランボルギーニの発表内容を読めば、それがファクトリープログラムではなく、資金が必要であることは明らかだ。我々の場合は、それはあり得ない」とボッセ。

 アウディのLMDhプログラムが中断されてしまったいま、ハイパーカーカテゴリーへの参入を目指すWRTは、2022年末までに契約を確保する必要がある、とボッセは付け加える。

「今後数週間のうちに、何かが決断されるだろう。GT3プログラムもあるし……すべてをやらなければならないのだ。ハイパーカーカテゴリーへの参入は、いまだチームとしての“目標”だ」