第46回講談社漫画賞の贈呈式が、本日7月7日に東京・帝国ホテルにて行われた。
【大きな画像をもっと見る】少年部門を伏瀬原作による川上泰樹「転生したらスライムだった件」、少女部門をリカチ「星降る王国のニナ」、総合部門を泰三子「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」が受賞した第46回講談社漫画賞。まずは講談社の野間省伸代表取締役社長が登場し「講談社は世界中の人たちにマンガやアニメを届けることに本気で取り組んでおります。日本マンガの持つパワーを待ち望む人は世界中にいます。物語を待ち望む世界中の人々にマンガを届けられるよう、これからも一層注力していきますので、よろしくお願いします」と挨拶した。
続けて第46回の選考委員を代表し、東村アキコが選考報告を行った。東村は「毎年喧々諤々と議論を戦わせながら選考会をやっています。1つの作品に決めるのは難しいこと。選考員の先生方それぞれが推しの作品があったり、これに獲らせてあげたいという思いを抱えながら決めています」と選考会の様子を振り返った。まずは少年部門を受賞した「転生したらスライムだった件」について語る。今回のノミネート作品は時代を反映した作品が多かったと語る東村は、去年に続き候補に上がった「葬送のフリーレン」と、「転生したらスライムだった件」の一騎打ちだったと明かす。今回受賞を逃した「葬送のフリーレン」について、「ストーリーが重厚で温かみもあり、RPG的な設定なのに今までにない側面からのアプローチがあった」と絶賛。しかし「『転生したらスライムだった件』という作品は異世界転生もののジャンルの開拓者。今、異世界転生ものはマンガ界において大人気のジャンルですが、この作品があったからこそブームになった。パイオニアとしての敬意を払って、この作品をマンガの歴史に刻むことにしようと最後は満場一致でした」と、「転生したらスライムだった件」の功績を讃えた。
続けて、少女部門について「私も一応少女マンガ家なので(笑)、この部門を読むのは毎年楽しみ」と述べた東村は、少女部門の選考も白熱したものになったと語る。候補作である「ゆびさきと恋々」について「言葉をテーマにここまで深く考えさせられる少女マンガはなかなか読んだことない」と称賛を送りながらも、初ノミネートとなった「星降る王国のニナ」は東村も個人的に推していたという。「コロナでみんな鬱々として、旅行にも行けない生活を送る中、『ニナ』を読んだ瞬間、手を引っ張って異国に連れて行かれたような感じがしました」とコメント。また「衣装の描写が素晴らしく、すごく細かく設定を決めて描かれているんだろうなという話で盛り上がりました」と評価の理由を語った。
また一般部門を受賞した「ハコヅメ」については、揉めることなくすぐに決まったという。「選考会ってなんの忖度もしがらみもなく、私たちが面白いと思った作品を推すので、毎年大変なことが多いんです。今回も相当揉めるんじゃないかなと思って、前日にどんな議論をするのかをシミュレーションしていたんですけどまったく揉めずに『ハコヅメ』に決まって。やっぱりみんなが愛する作品なんだなという感じがしました」と振り返る。さらに「さっき私は少女マンガ家って言いましたけど、本当はギャグマンガ家なんですね(笑)。なので、ギャグマンガが一般部門をとるのもうれしい。歴史的な受賞だなと思っております」と自身の思いを告げ、選考会の模様を伝えた。
そして今回受賞した作家陣からの挨拶に移る。まずは「転生したらスライムだった件」の原作者である伏瀬が壇上に上がり、「マンガ家ではないのにこのような場に立たせていただいて光栄に思ってます。自分が読みたいものを書こうという気軽な気持ちで書き始めた作品が、川上先生の画力によってマンガになり、多くの人に読んでもらえたのは大変幸運だったと思います」と感謝の言葉を述べる。続く川上は「原作の面白さを引き出せているのかとずっと不安でしたが、今までが間違ってなかったのかもしれないと自信を持ててうれしく思いました。この先、迷ったときも『賞をいただけたんだから』と最後まで自信をもって進めていきたいと思います」と意気込みを語る。そしてキャラクター原案のみっつばーも「自分だけでは上がってこれないところに、おふたりが引っ張り上げてくれている状態だと思います」と、伏瀬と川上に対する思いとともに感謝を伝えた。
少女部門を受賞したリカチは「歴史のある賞をいただいて胸がいっぱいです。本当に驚きました」と予期せぬ受賞への喜びを噛みしめる。さらに「前回の作品がゆるい打ち切りになって(笑)、次ダメだったらどうなるんだろうと不安で始めた連載でした。当初は3巻で打ち切りになる覚悟で描き始めたんですが、それを回避してこのような賞までいただけたことをうれしく思います。人生何があるかわからないなと思いました」と素直な言葉を届ける。そんなリカチに続いて登壇した泰は「リカチ先生が3巻で打ち切りとおっしゃってましたけど、私は担当さんと2巻打ち切りのつもりで始めた連載でした」と明かす。そして「警察官をやめてから連載期間中は無我夢中だったので、今思い返してもクリップスタジオの画面しか思い出せないです(笑)。子供たちからしたら毎日引きこもって何かしてる状態だったと思うんですが、このような場に子供も参列させてもらって、母親の仕事が、たくさんの人に助けられていて、皆さんのおかげで作品を送り出せているんだということが伝えられてよかったです」と語る。そんな泰の言葉を受け、出席した子供たちがモニターに映し出されると、場内は和やかな雰囲気に包まれた。
本日の贈呈式で司会を務めたケンドーコバヤシは「素晴らしい席に同席できてうれしいですし、尊敬している先生方とお会いできたのは財産となりました。前回も(NON STYLEの)井上じゃなくて僕がよかったんじゃないかな」とコメントをし、観客を笑わせる場面もあった。最後は授賞者への花束の贈呈を行い、本日の授賞式が幕を閉じた。