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カレー沢薫のほがらか家庭生活 第306回 猛暑と節電

2022年07月06日 17:32  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
漫画家・コラムニストとして活躍するカレー沢薫氏が、家庭生活をはじめとする身のまわりのさまざまなテーマについて語ります。


今回のテーマは「猛暑と節電」だ。



かなりタイムリーな話題である。



俺も締め切りどころか掲載日の前日に原稿を書いていたりするが、テーマも2日前ぐらいに決められている、実にしずる感のある現場だ。



ここ数日、担当からのメールの末尾に「死ぬほど暑いですがお体に気をつけてください」という心にもないことがよく書かれている。



しかし、俺クラスのMH(無職ひきこもり)に「気温に関する気遣いをする」というのは、ハゲにヘアブラシを贈るレベルの無礼である。



マナー講師はクソマナーを生み出す暇があるなら、そういう基本的なことをちゃんと教えてやってほしい。



当然のように、しばらく外に出ていないため、世間が盛んに言っていた「6月とは思えない暑さ」にいまいちピンときていない。



しかし、6月といえばGWが終わった後の祝日がない月として我々に長年文句を言われてきた存在だ。



そんな梅雨よりも陰湿にこちらをディスってくる相手のために「祝日を作ってあげよう」などと思うはずがない。



梅雨を秒で終わらせ、うっかりカーディガンとか着て出勤してしまった愚かな人間どもを焼き尽くしてやろうと闇落ちするに決まっている。



よって、来年からは6月に対し媚を売っていく方向にする。



祝日さえ増やせば俺たちが喜ぶと思っている5月のあざとさには辟易している。カレンダーに無駄な赤がないスタイリッシュな6月さんを見習うべきだ。



実際MHにとってGWはとっくに関係なく、むしろ固定給どもが沈痛な面持ちになる6月の方を支持している。



ともかく、いきなり真夏以上の気温になってしまったため冷房の使用は不可欠になっている。しかし連日報道されている通り、現在日本は未曾有の電気不足で仕切りに節電が呼びかけられている。



今の気温で節電しろというのは、命を大切にしない奴は死ねというぐらい無理がある。

そもそもなぜ電気が不足しているのか。



梅雨が想像以上に巻いてしまって、水不足になったというならわかるのだが、なぜ突然電気が不足してしまっているのか。



お得意のネット検索で調べてみたところ、今回の電力不足は火力発電所の減少が原因らしい。



火力発電所は他の発電よりコストがかかり、さらに政府が電力自由化や省エネ発電を推進しているいる。



よって火力発電所は儲からないので、廃業が続いているという。



しかも、発電所の廃業を許可制ではなく届け出制にしてしまったため、火力発電所はやめようと思えばすぐ止められるようになってしまった。



国が激推しくんしている太陽光発電などは気候に左右されるため、太陽が「暑いから外出たくない」と言い出して日照時間が少なくなればすぐ電力不足になってしまう。



それを補うのが火力発電などだったのだが、発電所自体が減っているため今回の電気不足になっているのではないか、と言われている。



これが正しいとしたら、気候の問題ではなくただの国の政策ミスということだ。



どうりで世間に疎い私の耳にも「電力不足だから節電しよう」という言葉は1日10回は入ってくるのに「なぜ電気が不足しているのか」は全く入ってこないはずである。



「節電ポイント」なる「さあお前らTwitter野郎の新しいおもちゃだぞ」みたいなネタが投下されたのも、そっちに注意を向けさせるのが目的だったのかもしれない。



ちなみにその頃俺たちTwitter野郎は節電ポイントより46万人の個人情報が入ったUSBのパスワード当てに夢中であった。



私が知らないだけで、電力不足の原因については全国民が知っているのかもしれないが、少なくとも私の耳には自然に入ってくることはなく、今調べなかったらずっと知らなかった可能性はある。



このように、世の中には隠されているわけではないが積極的に「調べる気」がなければ一生知ることのない情報がたくさんあるのだ。



「政治がわからぬ」などとメロスみたいなことを言って笛を吹いて羊と遊んでいたら、何の説明もないまま節電させられるし、そこで激怒しても「お前が行かなかった選挙で選ばれた奴がやったことだよ」と言われるだけだ。



しかし、今激怒したところで激怒発電ができるわけでもなく、むしろ余計暑くなるだけなので節電はするしかない。



だが節電の今の暑さで冷房を全く使わないというのは絶対やめた方が良い。



おそらく熱中症患者を病院に運ぶ方が電力も金もかかる。(カレー沢薫)