2022年07月06日 09:11 リアルサウンド
2022年も漫画原作のドラマ作品が数多く放送されている。春季には『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)や『正直不動産』(NHK)、『やんごとなき一族』(フジテレビ系)などのドラマが好評を博した。
季節が移り変わり、7月からも新たなドラマ作品の放送が開始される。本稿ではこの夏に注目を集めるかもしれないドラマ作品の原作漫画の一部を紹介したい。
(参考:初の実写ドラマ化 中国版『ヒカルの碁』2022年7月に日本語字幕版の放送開始)
■『魔法のリノベ』
7月18日よりカンテレ・フジテレビで放送がスタートする月10ドラマ『魔法のリノベ』。原作は女性向け月刊漫画雑誌「JOUR」(双葉社)で連載中の同名作品だ。
福山家の長男であり家業の工務店で営業職として働く福山玄之介は、なかなか成果を残すことができていなかった。そんな彼のパートナーとして雇われたのは女性営業マン・真行寺小梅。ふたりが依頼人の要望に沿った住宅のリノベーションを提案し契約を取り付けようと奮闘する様子が描かれる。
セールス営業の現場を舞台に物語が展開する本作は、顧客と取引をする際の視点やテクニックが多く描かれる。目の前にいる顧客の解決したい課題や要望の本質を見極めようとする福玉と真行寺の姿は、営業職に関するヒントだけでなく、人と人とのコミュニケーションを考えるきっかけにもなり得るだろう。
また住宅のリノベーションという分野での営業が描かれるため、お客さんの多くは誰かと暮らす人々だ。福山と真行寺の関係も含め、様々な人と人との関係が描かれることも本作の見どころとして挙げられる。
■『雪女と蟹を食う』
7月8日よりテレビ東京のドラマ24枠で放送される『雪女と蟹を食う』。『ミッドナイトスワン』『全裸監督』などで知られる監督・内田英治氏が手掛ける本作は、「週刊ヤングマガジン」「コミックDAYS」(講談社)で連載された同名漫画が原作となっている。
蝉の鳴く声が響く夏に自殺を図ろうとするも、その一歩を踏み出せずにいた北(仮名)。彼はTV番組の影響から人生の最後に北海道で蟹を食べることを思い立つ。そのための資金を得るため、左手の薬指に大きなダイヤの指輪をした女性・雪枝彩女の家に押し入る。雪枝は平常心のまま北と交流し、会話のなかで北は北海道で蟹を食べたいことを雪枝に話す。不思議と雪枝も賛成し、ふたりは蟹を食べるために北海道を目指すこととなる。
本作の序盤では北や雪枝の素性や過去が明かされず、不明瞭な部分が残るふたりは本州の中部地方辺りから北海道を目指す。奥底に眠る思考や感情が見えない雪枝の存在も含め、謎に満ちたまま進んでいく物語は不気味さを覚えるものだろう。
作中に漂う不気味な空気には、犯罪者と人妻の不倫劇がバレてしまうのかというスリルも加わり、「北海道で蟹を食べる」という目的などのユーモアから物語に温度差が生まれる。ときに和やかなムードにもなりつつも、突如として空気の雰囲気や温度感が変わる展開からヒヤリとした気持ちを抱いてしまう作品だ。
■『ワンナイト・モーニング』
WOWOWにて8月から放送・配信されるドラマ『ワンナイト・モーニング』。全8話で構成される本作は各回によってメインキャストが入れ替わり、総勢16名の俳優が作品の世界観を表現する。原作は青年漫画雑誌「ヤングキング」(少年画報社)で連載する同名漫画だ。
オムニバス形式で物語が描かれる本作には、各エピソードで様々な境遇や心情を抱えた男性と女性が登場し、一夜を共に過ごす。男女がそれぞれに過ごす夜のひとときに加え、夜が明けた際に朝ごはんを食べる姿が描かれる。
多くのエピソードが一夜限りの関係を描いた物語となっているため、多くのエピソードは“男女の別れ”で幕を閉じる。数多くの刹那な関係は喪失感や寂しさを覚えるものばかりだ。
哀愁漂うワンナイトラブにアクセントを加えるのは朝ごはんの存在である。食欲という欲求が満たされることで、登場人物が抱くもう少し一緒にいたいという欲求や別れの切なさを際立たせる。
ワンナイトラブというとネガティブなイメージを抱く人も多いかもしれない。一夜限りの関係を切なく、美しく描いた本作は、そのイメージを淡く明るいものに変えてくれるはずだ。
本稿で挙げた作品の他に高校の非正規講師と風俗嬢の恋を描いた『ロマンス暴風域』や、アラサーの男性と男子高校生の関係を描いた『みなと商事コインランドリー』といった漫画もドラマ作品として放送される。お仕事系やサスペンス、恋愛劇など、様々な漫画がこの夏に彩りを添えてくれるだろう。
(あんどうまこと)