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風鈴の音は「騒音」? 「耳障りで仕方ない」「耳に残ってしまう」相談相次ぐ

2022年07月02日 09:51  弁護士ドットコム

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夏の風物詩でもある風鈴。どこか懐かしさを感じて好きな人も多いかもしれませんが、弁護士ドットコムには「風鈴の騒音」に関する相談が複数寄せられています。


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「ななめ向かいに一年中、軒下に風鈴を吊るしているお宅があります。風の強い日などは鳴りっぱなしでとても気になります。その方とは挨拶程度で、お話したことはありません」「マンションのバルコニーに掛けられた風鈴が耳障りで仕方ありません。強風の日もそのままなので、リンリンとひっきりなしに鳴り続けています。現在は幻聴のように耳に残ってしまう始末で、日々困り果てております」



風鈴の音に悩む声はツイッターでも。「今年も近所の家にうるさい金属製の風鈴が設置された」「隣の部屋の住民、ベランダに風鈴つけてるんだがチリンチリンうるさい...」といったつぶやきが散見されました。



法的に風鈴を止めてもらうよう請求することは可能なのでしょうか。寺林智栄弁護士に聞きました。



●差止請求が考えられるが・・・

風鈴を止めてもらうように法的に請求する方法としては、差止請求が考えられます。差止請求は、騒音被害に対して比較的よく用いられる法的請求です。



個人の生活や業務上の必要に応じて、音は日常的に起こります。差止請求の対象になるとすると、社会生活の多くをストップさせてしまうことになり、場合によっては社会にもたらす影響が非常に大きくなります。



ですので、差止請求が認められるのは、受忍限度(常識的に考えて我慢できる程度)を超え、さらに違法性が高い場合に限定されると考えられています。



そして、受忍限度を超えているかどうかの判断にあたっては、被害の内容や程度、地域性、騒音を出している側が後からやってきたかどうか、音量や継続時間、時間帯、音質、被害者の状況(生活環境の侵害があるか、健康被害、営業妨害があるか)、環境基準などの公的規制との関係など様々な要素が考慮されます。



●証拠提出のハードルが高い

今回問題になっているケースの中には、近隣住民に幻聴という健康被害が出ているものも含まれていますが、差止請求まで認められるためには、被害を受けている側が、先にあげた項目について詳細な証拠資料を提出する必要があり、ハードルが高いといわざるを得ません。



このような問題の対処方法としては、管理会社に相談して管理会社から苦情を申し入れてもらうというものがあります。差止請求のように費用や手間がかかりませんし、効果がある場合も少なくありません。



また、法的請求としては、差止請求よりは慰謝料を請求する方が、認められやすい傾向にあります。苦情を申し入れても改善しない場合には、慰謝料請求をして、副次的に風鈴を止めてもらう効果を狙うといった方法もあると考えられます。




【取材協力弁護士】
寺林 智栄(てらばやし・ともえ)弁護士
2007年弁護士登録。東京弁護士会所属。法テラス愛知法律事務所、法テラス東京法律事務所、琥珀法律事務所(東京都渋谷区恵比寿)を経て、2014年10月開業。2018年11月から弁護士法人北千住パブリック法律事務所(東京都足立区千住)。刑事事件、離婚事件、不当請求事件などを得意としています。
事務所名:北千住パブリック法律事務所
事務所URL:http://www.kp-law.jp/