2022年06月30日 20:11 弁護士ドットコム
ツイッターの匿名アカウント「黒瀬深」の投稿で名誉を毀損されたとして、作家・タレントの室井佑月さんが損害賠償550万円をもとめた裁判で、黒瀬さん側が200万円を支払うことなどを条件として、6月30日に和解が成立した。室井さんの夫で、代理人の米山隆一弁護士が同日、明らかにした。
【関連記事:ほんこんさんに賠償命令、室井佑月さん夫・米山隆一弁護士「謝罪なければ、控訴する」】
訴状や米山弁護士の説明によると、室井さんは2020年2月24日、あるメーカーが作った「日の丸マスク」について、政府発注のものと勘違いし、政府批判のツイートを投稿した。だが、誤りに気づき、謝罪した。
しかし、黒瀬さんは同年5月30日から、室井さんの投稿を引き合いに「日の丸マスクの件ですが、やはり室井佑月がデマを拡散して誹謗中傷していた模様」とのツイートや、「#室井佑月のテレビ出演に抗議します!」というハッシュタグの拡散を呼びかける内容の投稿などをツイートした。
室井さんは発信者情報開示請求の手続きをとり、2021年6月15日に「黒瀬深」アカウントの発信者情報の開示を受けた。投稿者を特定したことから、同月29日、東京地裁に損害賠償をもとめる訴訟を提起していた。
米山さんの説明によれば、黒瀬さんは当初、室井さんの投稿が政府批判をするものだとしても、政策の対象となる日の丸マスクと政府は不可分一体であるとして、政府が調達する日の丸マスクに対する誹謗中傷であることは明らかであるなどといった反論を展開したという。(※日の丸マスクは政府調達のものではない)
裁判所からの和解勧告をうけ、以下のような条件などで和解に合意したという。
・黒瀬さんは解決金として200万円の支払い義務があることを認める。
・解決金を2022年8月15日までに支払う。
・該当する投稿を削除する。
・室井さんは、発信者情報開示によって知った黒瀬さんの一切の個人情報(親の氏名住所を含む)を第三者に開示しない。
米山氏は、黒瀬さんの主張は「政府批判したら、そこに関わるもの、誰かを批判することにつながるものになる」と指摘し、「いわゆるネトウヨのかたの『政府は一切批判するな』というものだ」と説明した。
「黒瀬深氏は所詮、名も無いアカウントですが、この方の言うことをかなり多くの人が真に受けたわけですよ。みなさん、よく考えてください。こんな人の言うことを真に受けるのは馬鹿げたことだ」
特に和解を目指していたわけではないが、裁判所からすすめられるまま早期解決を選んだという。なお、和解の条件に謝罪は含まれていない。
「黒瀬氏は謝罪しない人だと思います(米山弁護士)」
なお、和解と同じ日には、お笑い芸人のほんこんさんのツイートが名誉毀損にあたるとして、室井さんがほんこんさんを訴えていた裁判で、ほんこんさんに11万円の支払いを命じる判決が出された。