刺身に潜む寄生虫「アニサキス」が脚光を浴びている。元AKBの板野友美さんがアニサキス被害を報告したからだ。板野さんは6月26日、Youtubeのチャンネルに「激痛に襲われ緊急で病院に行くことになりました」と題した動画を投稿。胃カメラ検査でアニサキスが発見されるまでを報告した。
動画冒頭、板野さんは「空腹の時のお腹の痛みの最上級」など、独特な表現をする余裕もあったようだが、アニサキス発見時にはグロッキー状態。「人生のランキングで最上級くらいに痛かった」と振り返っていた。この痛み、わかってしまう。なぜなら筆者もアニサキスで激痛に苦しんだことがあるからだ。(文・昼間たかし)
対策は……
板野さんは、イカ明太かサーモンか食べた物のどれにアニサキスがいたのかと煩悶しつつ、胃カメラで撮影されたアニサキスの写真も公開している。うーん。こんなのが自分の胃にいたと思うと、ゾッとしてしまうな。
さて、厚生労働省のサイトによれば、アニサキスはサバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの魚介類に寄生する寄生虫。これが寄生した魚を生や加熱不十分な状態で食べることで幼虫が胃壁や腸壁に刺入して食中毒を引き起こす。とにかく痛いのが特徴だ。
加熱・冷凍(マイナス20度・24時間)すれば死ぬが、生食でアニサキス被害を100%防ぐ手段はない。アニサキスは普段、魚介類の内臓に寄生しており、宿主が死亡すると時間をかけて筋肉に移動する。そのため、捌く際には筋肉中に潜んでいる可能性も考慮して、「目視で」除去することになる。アニサキスを目立たせるために紫外線ライトで照らしたり、黒いまな板を使うなどといった対策もあるようだが、寄生虫のサイズは長さ2~3センチ、幅0.5~1ミリ。身の奥底に潜り込んでいれば必ず排除できるとは限らない。
その結果、被害も少なくない。厚生労働省の「食中毒発生状況」では、ここ数年にわたって、カンピロバクターやノロウイルスを抑えて発生原因の1位。年間300~400件の被害が報告されているようだ。
シメ鯖だけでなく、刺身はサバ、アジ、ヤリイカ、マグロ、ブリ、カワハギ、イシダイなどなど……うん、刺身を食べる時は「この後、苦しむんだ」と覚悟したほうがいい。ちょっと気になったのは、福岡県でサバの刺身でアニサキスにあたっている人が複数いること。「福岡県あたりのサバはアニサキスがいないので生で食べる」と聞いたことがあるが、迷信だったようだ。
ちなみに、こんな「アニサキス予防」の迷信・俗説は各地に伝わっているようだ。農林水産省のサイトには、「迷信にはご注意を!」としてこんな注意書きが。
調味料ではアニサキスを予防できません!
⇒酢や塩、しょうゆやワサビでは、アニサキスは死にません!
被害は「シメ鯖」でも特に多いということで、酢攻撃は全然効果がないようだ。ふむふむ、なるほど。
ところで、もう一つ迷信として書いてあった
噛めば大丈夫、というわけではありません!
⇒アニサキスはとても小さく、どこに潜んでいるかわかりません。また、表面はなめらかで丈夫、かつ細い糸のような形状のため、噛み切ることは困難です。
という記述には笑ってしまった。まあ、こんな俗説を信じたくなるぐらい、刺し身はうまいんだけどな……。幸い、アニサキスで死んだ人はいないということだし、刺し身を諦める心境にはまだ到達できそうにない。