「ヤバいブツ」「食べ始めから敗戦処理」「まずい」!? イオンのプライベートブランド「トップバリュ」のそうめんが突如としてSNSで酷評されまくっている。とあるツイートがきっかとなり、SNSではこれに同調するような声が相次いで寄せられていたのだが……。そんなにまずいの?と、筆者も食べてみることにした。(文:昼間たかし)
確かに別物だが……
近所にイオンがないので、遠出して東雲店へと向かう。件の商品は、ブランドそうめん「揖保乃糸」と並んで陳列されていた。トップバリュそうめんは600グラム入りで約200円、揖保乃糸(上級品)は300グラムで約300円。同量だとざっくり3倍の価格差があった。ここまで価格差があると、多少味が落ちても文句は言えないレベルだ。
さて、せっかくなので2つを比べてみたのだが、味はご想像通り、「完全な別物」だった。
左がトップバリュ、右が揖保乃糸
そもそも麺の細さがまるで違う。同じ細麺でも、トップバリュは揖保乃糸の1.5倍ぐらい太い(調理前)。原材料も違う。揖保乃糸は「小麦粉、食塩、食用植物油」だが、トップバリュは「小麦粉、食塩」で油も使用されていない。
茹でて試食してみると、やはり食感や香りがまるで違った。
揖保乃糸は、素麺特有の小麦の香りが強く感じられる。麺にはツヤがあり、ツルツルと弾力のある食感。噛んだときの歯ごたえもしっかりある。一方で、トップバリュは小麦の香りがマイルド。比べると麺のツヤがなく、弾力も弱めに感じる。
結局、これは「別の麺」なのだ。揖保乃糸などのブランド品は「手延べ素麺」と呼ばれ、独特の工程で熟成させ、手でめんを引き伸ばしながら、手間暇をかけて作られているという。手延べ干しめんの日本農林規格も存在し、こちらの規格では、「小引き工程から門干し工程までの間において,めん線を引き延ばす行為の全てを手作業により行っていなければならない」となっている。
一方、「機械素麺」は、その名の通りこうした工程を機械で行うため、安価に生産できる。手延そうめんには食用植物油を塗って伸ばす工程があるが、トップバリュのそうめんには油も使用されていない。これでは味が違うのも当然だろう。
しかし、トップバリュのそうめんをバカにするのは早計だ。なぜなら、断言するが、こちらはこちらで美味いからである。単に味が違うだけ。量を食べたい、太麺をガツッと行きたいようなときなら、気兼ねなくいただけるこちらの麺もいいと思う。歯ごたえが欲しい場合、水道水の代わりに冷蔵庫で冷やしておいた水、あるいは氷水を使ってキュッと締めるのをオススメする。
そもそも、トップバリュのそうめんを作っている中尾食品グループは、香川県で明治時代から素麺を作っている老舗だ。うどん県・讃岐で、通常人がまずくて食えないような麺類を作っていたら、とっくに潰れている。
この麺をディスっている連中は、美味しんぼの海原雄山気取りなのだろうか。おいしく食べられるものを極端な言葉で貶めることで、他人の気を引こうとしているのだとしたら残念な人だ。ただ、大量に流通している商品だから、その過程や家庭での保管次第では品質が落ちてしまうケースもあるのかもしれないが……。