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『ちむどんどん』和彦にとって愛は最良の恋人 暢子が太刀打ちできる要素はある?

2022年06月26日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『ちむどんどん』(写真提供=NHK)

 最近、暢子(黒島結菜)の下宿先「あまゆ」によく集まるメンバーがいる。智(前田公輝)、和彦(宮沢氷魚)、そして愛(飯豊まりえ)だ。彼らはおいしい食事と共にいろいろな話をしている。それぞれに仕事があって、大変なことも多いだろうに不思議と愚痴を言い合うことはなく、思い出話や将来のこと、ジェンダー論のような真剣な議論もする。暢子と智、和彦は知っての通り幼なじみなので話が盛り上がるのもわかるが、和彦の同僚で恋人の愛も智や暢子と同じくらい打ち解けている。


【写真】和彦(宮沢氷魚)に視線を向ける暢子(黒島結菜)


 和彦は愛との出会いを第37話で「新人研修の時に会って……」と言っているので、ふたりはもしかしたら同期かもしれない。恋人として関係も長く、暢子が東洋新聞にアルバイトに行った時にはすでに付き合っていたし、そこから年月を経ても関係は良好だ。以前、暢子がおでん屋を立て直していた時、和彦と暢子がおでん種のことでちょっとした喧嘩をしてしまったことがあった。和彦は、自分の考えに意見されると、不機嫌になってしまう側面があるようなのだが、怒って席を立った和彦の姿を見ても愛はあまり動揺せず、暢子に「ごめんね」と謝って気遣いをみせ、すぐに和彦のフォローに走っていった。和彦のことをよく理解しているいい恋人である。


 さらに愛は、ファッション記事を通じて、女性の地位や立場の向上を訴えていきたいと、ファッション担当の記者を目指し、当時、まだ少なかった女性記者として、仕事に情熱を傾けていた。やはり服にはこだわりがあるようで、仕事場で目立つチェック柄のスーツを着ているかと思えば、休日には赤いシャツと派手柄のベストに大振りの赤いイヤリングと黄色のネックレス、さらにカラーサングラスを身につけた姿で現れた。暢子も「おっしゃれー!」と驚いていたが、愛だからこそ似合う格好である。自分のなかに確固たる将来像があり、周りに左右されず、自らの意志を貫く愛。そんな彼女の自立した姿に、和彦は惹かれたのかもしれない。


 愛を演じる飯豊まりえもファッション好きで知られている。小学生の頃からモデル活動を始めると、これまでさまざまな雑誌で専属モデルを務め、表紙を飾ってきた。近年はドラマや映画での活躍も増え、この『ちむどんどん』への出演と同時期に『恋なんて、本気でやってどうするの?』(カンテレ・フジテレビ系)にも出演。7月から始まる『オクトー ~感情捜査官 心野朱梨~』(読売テレビ・日本テレビ系)では感情が“色で見える”異色の刑事・心野朱梨として主演を務めるなど、女優としての評価も高まっている。


 愛は、「あまゆ」で出されたポークたまごを自然と取り分けるように、思いやりがあって気が利くし、周りが見えているからこそ、自分の意見をガンガン主張することはない。その点は、「いずれは結婚して、子どもを産んで……」という智の意見を食い気味に「いやだ!」と否定した暢子とは正反対だ。愛と暢子は互いに男性が多い職場で奮闘しているのだから、人には言えない苦労を理解し合い、もっと意気投合してもいいのではと思っていたのだが、なかなか仲良くならないのは、この性格の違いもあるのかもしれない。


 愛のちょっと控えめなところと暢子の気の強いところ。これが、働き方だけではなく、和彦や智との関係に大きく関わってくるような気がして、なんだかハラハラした気持ちでこの4人を見つめてしまうのは私だけではないはずだ。


(久保田ひかる)