ただ、当初両シリーズが目論んだ日独6メーカーの車種が争う状況は、最後まで生まれることはなかった。2019年の交流戦の後、世界は新型コロナウイルス禍に見舞われ混乱。あれから2年半ほどが経った。実現することはなかったが、それでもたしかに存在した『DTM車両のスーパーGT参戦』の可能性を振り返りたい。2回目は、2019年11月に開催された特別交流戦で、Audi Sport Japan RS5 DTMを走らせた実績があるAudi Team Hitotsuyamaだ。
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【2】Audi Team Hitotsuyama×アウディRS5 DTM
Audi Team Hitotsuyamaは、2011年のスーパー耐久に向け日本で初めてアウディR8 LMSを投入した。その後、2012年からはスーパーGT GT300クラスに2台のR8 LMSを投入。その後もアウディジャパン、アウディスポーツとは密接な関係を築き、その後も多くの勝利を飾るなどGT300トップチームのひとつとして君臨してきた。
2014年からはスーパーGTでもクラス1規定に向けたGT500車両が登場しはじめたが、そんななか、2012年から日本でも開催されたWEC世界耐久選手権の際に来日していたアウディスポーツ首脳陣と意見を交換。さらに2014年7月に行われたスポーツランドSUGOでのスーパーGT第4戦に、アウディスポーツのDTMプロジェクトを率いていたディーター・ガスが訪れ、その際に「DTMという言葉が出てくるようになりました」という。この年からAudi Team Hitotsuyamaはアウディのカスタマーチームの中心的存在であるベルギーのWレーシングチーム(WRT)と提携しており、少しずつアウディRS5 DTMのスーパーGT参戦の可能性が生まれはじめた。
当時、アウディジャパンではプロモーションイベントでスーパーGT王者経験者であり、ル・マンウイナーでもあるブノワ・トレルイエを起用しており、2018年には富士と都内で行われたイベントにも出席。特別交流戦に参戦するならば、トレルイエ起用の意向があった。その意向をヒトツヤマでも受け容れ、コラボレーションが実現。『WRT Hitotsuyama Team Audi Sport』として、アウディの4台目の参戦が実現することになった。
こうして特別交流戦に臨んだWRT Hitotsuyama Team Audi Sportは、両チームのコラボレーションを象徴するホワイトとブラック、イエローのカラーをまとったアウディRS5 DTMを投入。日欧混成のスタッフで、トレルイエがスーパーGT時代を彷彿とさせるようなアグレッシブな走りをみせ、レース1では6位でDTM勢最上位を獲得。大混戦となったレース2も10位に食い込み、GT500勢と互角以上の戦いを披露した。