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渡邊圭祐の“驚くべき事実” 『ハガレン』『やんごとなき一族』までの飛躍ぶりを振り返る

2022年06月23日 06:31  リアルサウンド

リアルサウンド

渡邊圭祐『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成』(c)2022 荒川弘/SQUARE ENIX (c)2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会

 俳優デビューからたったの4年で、大作映画や話題のドラマで主要キャストへの抜擢が続いている渡邊圭祐。現在は出演した『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー』が公開中であり、もう間もなくその続編である『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』も公開される。ドラマは『やんごとなき一族』(フジテレビ系)が最終回を迎えるところだ。多方面での彼の重宝されっぷりには目を見張るものがある。


 把握している方も多いかもしれないが、まずは驚くべき事実を記しておきたい。立て続けに公開される『鋼の錬金術師 完結編』で渡邊が演じるのはとても重要なキャラクターだ。彼が扮するリン・ヤオは、“シン”という大国の第十二皇子。一族繁栄のために不老不死の法を求めており、賢者の石を手に入れるべくアメストリスにやってきたところ、主人公のエドワード・エルリック(山田涼介)らと出会うことになる。全3作からなる映画『鋼の錬金術師』シリーズにおいて、第2作目にあたる『復讐者スカー』より彼は登場。2017年公開の第1作目に渡邊は出演していない。それどころか、その頃の彼は俳優デビューすらしていない。“驚くべき事実”というのはこのことである。恐ろしい飛躍ぶりだ。


 だがこういった例は渡邊にかぎったものでもない。彼が『MIU404』(2020年/TBS系)で共演した岡田健史も同じく2018年に『中学聖日記』(TBS系)でデビューして以降、常に最前線に立っている存在だ。この4年に満たないうちに大河ドラマへの出演も果たし、映画『死刑にいたる病』などで主役を張るまでの存在になった。また、『復讐者スカー』でタイトルロールの“スカー”を演じている新田真剣佑の弟・眞栄田郷敦も彼らと近いポジションにある。2019年に映画『小さな恋のうた』でデビューした現在22歳の彼は、若手俳優がこぞって出演する作品などでも一際目を引く存在だ。4年のこの激変ぶりを彼らがどのように感じているのか気になるところ。こうしていくつかの大飛躍の例はあるものの、非常に限られたものであるのは言うまでもない。


【写真】『やんごとなき一族』での渡邊圭祐


 土屋太鳳や松下洸平を筆頭に、手強いキャストが勢揃いの『やんごとなき一族』でも異彩を放つ渡邊。『復讐者スカー』では同じく本作から登場する新田とともに、演じるキャラクターの立場は違えど物語を牽引するポジションについている。原作が少年マンガだとはいえ、本作には内野聖陽や舘ひろしなどベテラン勢も参加し、キャスティングは手堅い。ここにキャリアのまだ短い渡邊が配されているのには、彼に対する製作陣の期待値の高さがうかがえる。実際、続く『最後の錬成』ではさらに高いハードルを課され、それを超えている。彼はリンのみならず、「強欲」の名を持つ人造人間・グリードという2つの役を演じているのだ。リンはハツラツとした性格の優しい男だが、グリードは「強欲」という名が物語る通り。前者が“陽”ならば後者は“陰”。口調や表情の転調の鮮やかさによって、顔つきまで変わって見えるのだから頼もしい。スカー役への新田の起用もそうだが、このリン役に渡邊を起用したことも作品に大きな影響をもたらしていると思う。


 なぜこうも渡邊は立て続けに大役を任されるのだろうか。2018年の『仮面ライダージオウ』(テレビ朝日系)でデビューを果たした彼は、『恋はつづくよどこまでも』(2020年/TBS系)で新人看護師に扮し、『MIU404』では謎めいたユーチューバーに。『直ちゃんは小学三年生』(2021年/テレビ東京系)では小学三年生のお坊ちゃんを演じ、『恋はDeepに』(2021年/日本テレビ系)、『推しの王子様』(2021年/フジテレビ系)と、地上波作品にて主要な役どころを担い続けている。一方、フレッシュなキャストが一堂に会した映画『ブレイブ-群青戦記-』(2021年)ではキーマンに。さらに昨年は『彼女を笑う人がいても』で初舞台を踏み、重厚なテーマを持つ作品を共演者らとともにライブ空間で展開させた。しかも同作で演じたのも1人2役。2021年を生きる人物と1960年を生きる人物を演じ分け、役のスイッチングのその滑らかさは、映像作品以上に彼の演技者としてのポテンシャルの高さを知らしめるものだった。俳優に対して“映像向き”、“舞台向き”などという言葉を時おり耳にするが、やはり演じる技術に関しては舞台などで直に目にしなければ分からないのが正直なところ。渡邊は一つひとつの作品で堅実な仕事をし、確実に功績を残している。ラブコールが鳴り止まないのも納得である。


 さて、これから渡邊圭祐という俳優はどのような進化を遂げていくのだろうか。マンガ原作の作品から文学性の高い作品まで、コミカルな作品からシリアスな作品にまで適応してみせる彼の需要は今後もますます上がっていくはずだ。まずはリン・ヤオ/グリードの2役を愉しみたい。


(折田侑駿)