ただ、当初両シリーズが目論んだ日独6メーカーの車種が争う状況は、最後まで生まれることはなかった。2019年の交流戦の後、世界は新型コロナウイルス禍に見舞われ混乱。あれから2年半ほどが経った。実現することはなかったが、それでもたしかに存在した『DTM車両のスーパーGT参戦』の可能性を振り返りたい。1回目は、2022年もGT300クラスに参戦し、第3戦鈴鹿でGT300初優勝を遂げたBMW Team Studieだ。
一方、スーパーGTにひさびさにBMW車が登場したのは2008年のこと。Studie & GLAD with AsadaRacingがBMW Z4をGT300に投入し、初音ミクの“痛車”で人気を博した。チームはその後、紆余曲折を経て2011年にはGSR & Studie with TeamUKYOとしてBMW Z4 GT3を投入。チャンピオンを獲得した。
チームはグッドスマイルレーシングとBMWチューニングを手がけるスタディのコラボレーションだったが、スタディはBMWジャパン、BMWモータースポーツと良好な関係を築き、2014年からはBMW Sports Trophy Team Studieとして参戦。MカラーをまとうZ4 GT3を投入し、2016年からはBMW M6 GT3にスイッチし参戦していた。
この頃にはすでにGT500ではクラス1規定に向けた車両が登場していたが、スタディ会長で、2022年もBMW Team Studieを率いる鈴木康昭監督は、この頃にはまだまったくクラス1規定に関わる話はなかったと明かす。ただ、マリオ・タイセンが来日した際には、日本でのアテンドを務めていたという。
■2018年の開幕直前に訪れた突然のオファー そんなBMW Team Studieは2018~19年、戦いの場を当時のブランパンGTシリーズ・アジアに移していたが、2017年の終わりごろ、BMWモータースポーツ側から「冗談っぽく『GT500をやってみたいか?』という話がきた」という。もちろん鈴木監督にとっては、“夢物語”だけに実現するならばしてみたい。そのときは「もちろんやってみたい」と伝えたが、「そんなもの冗談だと思っていたから、割と雑談みたいな感じでした」と受け流していた。
しかし2018年の開幕直前、「体制発表の2~3日前」というタイミングで、再度BMWモータースポーツから「GT500をやってみないか」という話が舞い込む。エントリーはBMW Team Studieで、もちろん車両はBMW M4 DTM。BMWモータースポーツがフルサポートして車両を貸し、ひとりワークスドライバーをつけるというものだった。さらにメカニックの一部、エンジニア全員はBMWから出し、渡航費もドイツ負担だったという。BMW Team Studieとして必要だったのはもうひとりのドライバーと残りのメカニック探し、そして唯一負担して欲しいと言われたのが「タイヤ代だけもってほしい」というものだった。
ある意味破格の条件で、やらない訳はない。当時スーパーGTでBMW Team Studieはヨコハマを使用していたことから「ヨコハマでいいか?」と確認したところ、「それでいい」とのことだった。