2022年06月22日 06:01 リアルサウンド
男たちの熱い友情、淡い恋心、そして家族間の葛藤。水曜22時に新設されたフジテレビのドラマ枠で放送中の『ナンバMG5』は、ヤンキーたちの心の内を丁寧且つコミカルに描く青春ドラマだ。令和になって存在自体がノスタルジックになった特攻服の主人公が魅力の作品であり、主演の難破剛を演じる間宮祥太朗は、大河ドラマ 『麒麟がくる』(NHK総合)といった時代劇から『ファイトソング』(TBS系)などの恋愛ものまで幅広い役をこなしてきた役者である。本作では10代の学生を演じる間宮だが、実は本人は現在29歳。ドラマ放送前のインタビューでは『クローズ』シリーズ、『今日から俺は!!』(日本テレビ系)を例に出し、「役者の先輩たちも30歳くらいでヤンキードラマをやってきたので、そういうところを超越して楽しめる作品として作っていきたい」と意気込みを語っていたのが印象的だった。(※)
ヤンキードラマは、いつの時代も一定の支持を集める。若者のアンビバレントな心情が熱く拳を交わすことで描かれ、時に『ごくせん』シリーズ(日本テレビ系)のように対立構造にあるはずの大人との信頼関係が育まれるさまは視聴者を魅了してやまない。その一方で、『今日から俺は!!』や『ナンバMG5』のようにヤンキーのマインドだけでなく、コミカルな芝居や演出が面白さの鍵となる作品も。ユニークなのは、学生役を演じる俳優が必ずしも10代から20代前半である必要がないという点だ。『クローズZERO II』では、当時26歳の小栗旬を筆頭に20代後半から30代前半の役者が中心となりヤンキー高校生を演じている。そしてドラマ版『今日から俺は!!』で三橋役を演じた賀来賢人は当時29歳であった。どの役もヤンキーならではの個性的なビジュアルがキーになっており、年齢という概念を凌駕した存在であることがわかる。
そもそもヤンキードラマでのヤンキー役には、求められる要素が多い。迫力やすごみ、愛嬌、身体づくり、アクション、そして繊細な心の動き。若々しい見た目以上に大切な要素がたくさんあるのだ。そしてこれらを芝居で表現していくときに、やはりキャリアの豊富な中堅クラスの年齢の役者は頼もしい存在となるのだろう。『ナンバMG5』での間宮も、前述のとおり29歳ながら、普通の高校生とヤンキー高校生をとても器用に演じ分ける。黒髪・詰襟の“しゃばい”剛は実にうぶでかわいらしい表情を見せるものの、ひとたびトレードマークのトップク姿となれば、金髪を逆立てたライオンのような頭で暴れまわり、迫力満点に睨みをきかせる。加えて、その心に抱える葛藤や苦しみの深さもしっかりと伝わってくるのだ。ヤンキー一家にうまれた剛の悩みは、酢いも甘いもかみ分け、成熟した大人になっていく年齢の間宮だからこそ、丁寧に演じることができるのだと感じた。加えてこの年齢の役者が高校生の時代に、ヤンキーの存在はまだ今ほどめずらしいものではなかった。だからこそ学ランの着崩しや、独特の髪型、ファッションが象徴的に扱われるヤンキードラマで、親しみとリアリティを持って演じることができるのだろう。
前代未聞の「ヤンキーを辞めたいヤンキー」の物語は、いよいよクライマックスを迎える。剛は自分の人生を自分らしく生きることができるのか、そして家族の理解は得られるのか。全世代をとりこにして、最後まで駆け抜けてほしい。
※参考
https://realsound.jp/movie/2022/03/post-994860.html
(Nana Numoto)