2022年06月21日 10:31 弁護士ドットコム
「最近、救急車を運転していて感じること。救急車に道を譲ってくれない車が増えた。一部の身勝手な大人の都合で、小さな命を失いたくない」。救急搬送に関するツイートが、12万回以上リツイートされ、話題となりました。
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「救急救命士の資格を持ち働いている」という投稿主は、「先日、小児の心肺停止を搬送した。助けたいんです。早く医師に引継ぎたいんです。安全を確保しつつ、できる限りの速度で走ってる」と訴えています。
このツイートに対しては「何を差し置いても最優先で譲ろう」「動かない車が多すぎる。教習所では習ってるんだけどね」などと共感を示す声が多数あつまっています。
救急車に道を譲らない運転は、違法行為にならないのでしょうか。石井龍一弁護士に聞いた。
ーー救急車が来ても道を譲らない場合、違反行為になりますか
救急車などの緊急車両が近づいてきたときは、「車両は、道路の左側(一方通行道路の場合は右側も可)に寄って、これに進路を譲らなければならない」と定められています(道路交通法第40条)。
緊急車両が近づいてきているのにどかないというのは、上記の法律の違反であり、違反点数1点、反則金6千円の交通反則通告制度の対象となります。反則金を支払わない場合、罰金5万円以下の刑事処分を受ける可能性があります。
ーー緊急車両は、救急車以外にもあるのでしょうか
緊急車両とは、「消防用自動車、救急用自動車その他の政令で定める自動車で、当該緊急用務のため、政令で定めるところにより、運転中のもの」と定められています(道路交通法第39条1項)。
救急車や消防車、パトカーの他、電力会社やガス会社の車両なども含まれ、そうした車両がサイレンを鳴らして赤色灯を回転させながら走行しているとき、緊急車両となります。
ーー交通違反であり、反則金もあるということですね
緊急車両は人の生死がかかっているなど、まさに緊急事態の救助などのために現場に急行しているわけですから、その走行を妨害してはならないのは当然です。
仮に、わざと緊急車両の走行を妨害したために、救える命が救えなかった、という因果関係が立証されれば、その死亡結果の責任(損害賠償責任)をも問われる場合があり得ます。
緊急車両を避けようとして事故を起こすようなことがあってはなりませんが、十分注意して無理のない範囲で、緊急車両の走行に協力することが必要でしょう。
【取材協力弁護士】
石井 龍一(いしい・りゅういち)弁護士
兵庫県弁護士会所属
事務所名:石井法律事務所
事務所URL:http://www.ishii-lawoffice.com/