2022年06月21日 10:31 弁護士ドットコム
女優の平愛梨さんが、6月13日に更新した自身のブログで、品川駅のエスカレーター前で立ち往生していたところ、「お兄さん集団」に救われたと感謝した。
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平さんは、午前6時の新幹線に乗るべく、長男と次男をベビーカーに乗せ、三男を抱っこひもで抱えていた。エレベーターは7時からしか使えなかったため、エスカレーターに向かったものの、長男と次男はベビーカーから降りようとせず、エスカレーターの前で困り果ててしまった。
そこに現れたのが若い男性たちの「お兄さん集団」。平さんが「すみません!子供達と一緒に上まであがってもらえますか?」と声をかけたところ、快く引き受けてもらった。彼らは長男と次男に声をかけてベビーカーからおろし、ベビーカー自体も持って上がってくれた。
平さんのケースでは、「お兄さん集団」の出現によって、ピンチを乗り越えることができた。しかし、彼らのような存在がいつもいるとは限らない。
一般的に、エレベーターが使えないことを理由に、子どもを乗せたベビーカーを抱えてエスカレーターに乗ってしまった場合、どんな法的リスクがあるのか。櫻井俊宏弁護士に聞いた。
そもそも、子どもを乗せたベビーカーをエスカレーターに乗り入れる行為が違法ではないのか。
「法的に禁止されているわけではありません。しかし、一般社団法人日本エレベーター協会が、ベビーカーのエスカレーターの乗り入れ禁止を明言していることを踏まえれば、利用者には、乗り入れ禁止の厳格な法的義務はないとしても、他の人に対して何か被害が生じないようにベビーカーの転倒や転落を防ぐ注意義務がより高度に課せられているといえるでしょう。
そこで、ベビーカーが倒れて人にぶつかり負傷するなどした場合、ベビーカーを利用していた保護者は、負傷した人に対して、上記の注意義務に違反したとして、不法行為による損害賠償責任を負う可能性を否定できません」
では今回のように、エスカレーター前で立ち往生している親子を助けた人が、ベビーカーを落下させたり、ぶつけて壊してしまったりした場合や、子どもを見きれず子どもが負傷してしまった場合についてはどうなるのか。
「親が助けてもらうことを容認した以上、ベビーカー自体については自らの意思で、子どもの身の危険については親権者として、包括的に『危険の引受け』があるものとして、賠償請求できない可能性が高いように思われます。
このベビーカーとエスカレーターについてはセンシティブな問題ですが、『社会全体で子育てを支える』という考えのもと、よりベビーカーを入れることができるようなエレベーターが増産されることや、段差ではなく傾斜のエスカレーターが増えるという社会的対応にも期待しつつ、ベビーカーを使用する親御さんには段差や足元に気を付けて使用していただきたいと思います」
【取材協力弁護士】
櫻井 俊宏(さくらい・としひろ)弁護士
交通事故、離婚・男女問題等を得意としている新宿・青梅・三郷の弁護士法人アズバーズ代表弁護士。応援団出身であり、中央大学の学内顧問弁護士(法実務カウンセル)を担当している。「弁護士 ラーメン」と検索すると自身のラーメンブログが一番上に出てくる程のラーメン通。
事務所名:弁護士法人アズバーズ
事務所URL:http://as-birds.com