世の中には「たい焼きラーメン」を出す店があるという。たい焼きとラーメンを組み合わせるとは、いったいB級グルメはどこまで行ってしまうのか……。味の想像もつかないが、意外とウマかったりするのだろうか? 実体を探るべく取材班は下電バスで現地へ向かった。(取材・文:昼間たかし)
チャーシュー麺と同価格だと?
さて、その店の名は「名代中華そば 山金 岡山店」。昭和22年から続く老舗である。店舗があるのは郊外の県道や国道からは少し入った住宅エリアだが、そんな場所にもかかわらず駐車場に続々と車が入っていく。タイミングよく待たずに入店できたが、すぐに店内は満席になった。え、これ、もしかして人気店?
メニューを見ると、確かに「たい焼きラーメン」が存在する。ただ、その正式名称は「たい焼きラーメン餡じゃない」。
どういうことなんだよ? 店員に尋ねてもいいのだが、ここはもう注文してしまおう。
待つこと10分、やってきたのがこれだ。
たい焼きラーメン(写真:昼間たかし)
まさしく「たい焼きラーメン」としか言いようがないビジュアル。ネギとシナチク、カマボコと一緒に「たい焼き」が浮いているのは、激しい違和感がある。
どう手をつけようか悩んでいると、瞬く間に、たい焼きの皮がスープを吸って膨らんできた。
やばいこれ。早く食べないと。
ここで気になるのが、「餡じゃない」の意味である。箸で2つに割ってみると、すっかり柔らかくなった「皮」はスッとちぎれていく。中から出てきたのは、なんだこれ、タコの切れ端とニラ? 一口かじって、しめじやゴボウらしき具材も入っているのに気づいた。食感はメチャクチャ皮の分厚い、かき揚げのような感じだった。衣はたいやきそのものなのだが、たしかに中身は「餡じゃない」。
崩したところ。具が餡じゃないのはおわかりいただけると思う(写真:昼間たかし)
しかしながら、この代物、ラーメンに合うのか? スープをひと口すすって、衝撃を受けた。このスープ……うどんじゃないか?!
ラーメンと称しているが、印象としては中華麺を用いたうどんに近いと感じた。そうすると「たい焼き」は、天ぷらうどんの天ぷらみたいな役割である。「天ぷらラーメン」と考えると、チャーシュー麺や唐揚げラーメン、カツラーメンなどといったメニューと同価格の950円という値段設定にも納得がいった。
料理の系列としては、立ち食い蕎麦好きに有名な「JR姫路駅の駅そば」に近い。実は姫路の駅そばは、うどん・そばの汁に中華麺の料理なのだ。天ぷらも、小麦を固めたようなものが出てくる。このラーメンは、まさにその系統なのではないか。
中華麺を使っている、姫路の駅そば。こちらもウマいぞ!(写真:昼間たかし)
さて、調査結果は出た。味はうまかった。スープまで完食したぐらいだ。ところでこの店「たこ焼きラーメン」なるメニューもある。取材班と書いたが実際は一人のため、今回は注文できず。中身が気になったので会計の時に聞いてみると……
「普通のたこ焼きが入ってます」
とのことだった。筆者が訪れた際には「たこ焼きラーメン」を注文している人が多かった。再訪時には、こちらにトライしてみようと思う。
店の外観写真(写真:昼間たかし)