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今や1,500万円の希少車! 「スバル360 コマーシャル」ってどんなクルマ?

2022年06月15日 07:41  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
先日の「AUTOMOBILE COUNCIL 2022」(オートモビル カウンシル 2022、4月15日~4月17日に幕張メッセで開催)で1,500万円の値札が付いた“超”珍しい「スバル360」に出会った。車名は「スバル360 コマーシャル」と紹介されていたが、どういうクルマなのか。展示していたヴィンテージ宮田自動車の社長に話を聞いた。


○貨客用スバル360はクセだらけ!



スバル360自体が希少な逸品であるのはみなさんもご存知の通りだが、この個体はその中でも1961年(昭和36年)製の初期型“デメキン”モデル(ヘッドライトの枠が出っ張っているのでこんな愛称で呼ばれた)であるとともに、“コマーシャル”のサブネームがついた貨客用モデルということで、「超」がつくほどの珍しいクルマなのだ。


1958年にデビューしたスバル360(このクルマ自体の愛称は「てんとう虫」)のバリエーションモデルとして、その翌年に登場したコマーシャル。後席のシート部分を取り払って荷物スペースにした2人乗りモデルで、ルーフ後半部分が開閉可能なキャンバストップ仕様となっている。


特にユニークなのは、左右のリアウインドー部分が窓枠ごと外側にパタリと折りたためるところ。このコックピットの作り方は、スバルの前身である中島飛行機が製作していた航空機のキャノピーを思い起こさせるもので、さすがの出来栄えである。荷物の積み下ろしが簡単に行えるだけでなく、上方の空間がフリーになるので、背の高いものでも搭載できるところがメリットだ。

ボディサイズは全長2,995mm、全幅1,300mm、全高1,370mm、ホイールベース1,800mmとスタンダードモデルに準ずる大きさ。リアに搭載するエンジンは最高出力18PSの2サイクル空冷2気筒だ。床からはえた3速MTシフトレバーを駆使して最高速度85km/hまで加速できる。搭載できる荷物は最大150kg。新車価格は当時で35万円というから庶民が簡単に手に入れられる価格ではなく、しかも家族全員が乗れない2人乗りということもあって、コマーシャルという名前ではあるが商業的には成功しなかったようだ。


宮田自動車では、今回のイベントのためにフルレストアを実施して展示にこぎ着けたとのこと。同社の宮田篤社長に話をお聞きすると、「スバル360 コマーシャルは現在、国内に3台ほどしか存在しないとても貴重なクルマで、スバル本社にも1台しかありません。スバルは大好きなメーカーで、僕もこの業界に入ってある程度の歳になったので、ひとまず、やるべきことをやっておこうかなと思わせてくれたクルマなのです。息子(次期社長)からは『本当に買うの?』といわれましたが、借金も背負ってもらって、思い切って手に入れました」と笑いながら語ってくれた。


「元々、この仕事は僕のクルマ好きから始まったもので、銀行員だった35年前に家内が亡くなって、そこで好きなことをやろうと決心して転進しました。当時はスバル360の普通のを5~6台とR2、ホンダのNコロなんかを集めてスタートしたんです。平成5年に法人化してからは、ずーっとこればっかりやってきて余計なことをやっていないし、クルマが大好きだったのでお金はいつも一杯一杯。昔のよしみでお金を貸してもらえているので(笑)、なんとか今までやってこれました」というのが、宮田社長による謙遜交じりの来歴紹介だ。



ご自慢のスバル360については「とても可愛いクルマ。販売価格は1,500万円と少し高いんですが、エンジンもそれ以外の部分もきちんと治した極上のもので、今回が初出展です。三重の田舎の業者に声をかけてもらったので、意気に感じて出しました。いいものを見てほしいし、お客さんに喜んでいただけるものがいい。これは日本の宝です。ずっと持っていてもらえる人に譲りたいんです」と話していた。



原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)