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スバルの4WDは今年で50周年! 基幹車種「アウトバック」の存在意義とは?

2022年06月14日 08:01  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
今年はスバル4WDのデビュー50周年。その歴史の約3分の2を支えてきたのが「レガシィ」だ。その後は「インプレッサ」や「レヴォーグ」などが登場し、日本で販売されるのは「アウトバック」だけとなった。でもそのデザインや走りからは、スバルのフラッグシップとして重要な車種であることが伝わってくる。


○スバル4WDの歴史を支えてきた「レガシィ」



スバルというと4WDのイメージが強い。最近は「AWD」(全輪駆動)という呼び名を使うことが多くなったが、その理由は歴史の長さにもある。ルーツをたどっていくと、1972年9月に発表された「レオーネ4WDエステートバン」に行き着くからだ。


それまでの4WDはオフロード走行を念頭に置いた幌屋根のクロスカントリータイプがほとんどで、快適性や高速安定性などに難があった。電力会社や営林署などから、多少の悪路も走れる乗用車タイプのニーズが高まっていた。



こうした声に応えるために、スバルは以前から使っていた、水平対向エンジンを縦置きした前輪駆動パワートレインをベースに、プロペラシャフトをリアに伸ばして後輪も駆動するシンメトリカル(左右対称)4WDシステムを開発。レオーネ4WDエステートバンとして発売したのだ。



その後、レオーネ4WDはセダンやツーリングワゴンをラインアップに加えるとともに、オンロード志向を高めていくと、1989年発表の「レガシィ」、1992年デビューの「インプレッサ」にバトンタッチする。


このうちレガシィは、水平対向エンジンと左右対称4WDだけでなく、ツーリングワゴンもレオーネから受け継ぎつつ、200psを発生する高性能エンジンを搭載。日本を代表するスポーツワゴンとして高い評価を受けることになった。



しかしながらスバルは、販売台数の大部分を北米で占めており、レガシィも例外ではなく、現地の嗜好を反映して、モデルチェンジのたびにボディを大型化していった。



その北米には、日本よりひと足早くSUVブームが訪れていた。そこでスバルは、ツーリングワゴンをクロスオーバー化してオフロードも走れるようにした「アウトバック」を投入する。レオーネ4WDエステートバンに先祖返りしたような車種だが、これが高い人気を獲得し、逆にツーリングワゴンは販売台数が減少していった。



よって2014年に発表された6代目のレガシィからツーリングワゴンは設定されなくなり、日本には国内事情を反映したボディサイズを持つ「レヴォーグ」が送り出された。



さらに日本では、セダンの「B4」も2020年に販売を終了。アウトバックのみ、2021年10月にモデルチェンジが実施された。それがここで紹介する現行型だ。

○デザインからも伝わるフラッグシップの立ち位置



ちなみに現行アウトバックは、北米では2019年に発表されており、我が国での発表は2年遅れとなった。この間には、レガシィそのものが日本市場から撤退し、レヴォーグをベースとして日本向けアウトバックが生まれるという噂も流れた。



しかしスバルは日本でも、レガシィアウトバックを引き続き販売することにした。中心車種としての役目はレヴォーグに譲り、フラッグシップとして位置付けたのではないかと考えている。デザインからも、その立ち位置が見えるからだ。


ノーズには厚みがあり、ルーフはリアエンドまで水平に近いラインで伸びるプロポーションは、スラントしたノーズとリアに向けてスロープするルーフラインでスポーティーな雰囲気をアピールするレヴォーグに比べ、堂々としている。前後のフェンダー周辺のキャラクターラインが控えめであることも、その印象を盛り上げている。


フロントマスクは、レヴォーグでは六角形のヘキサゴングリルの両端がヘッドランプに食い込むような立体的な造形だったが、アウトバックはそれぞれを独立させており、ここでも落ち着きが感じられる。


ボディサイズは全長4,870mm、全幅1,875mm、全高1,670~1,675mmで、4,755×1,795×1,500mmのレヴォーグと比べると、高さだけでなく長さや幅も大きく上回っている。



アウトバックがグレードを単なる上下関係とはせず、アクティブな「XブレイクEX」とラグジュアリーな「リミテッドEX」というキャラクターで分けている点も目を引く。


「フォレスター」にも設定があるXブレイクは、先代アウトバックの途中で特別仕様車として用意されたことがある。好評だったのでカタログモデルに昇進したようだ。



グレード名の末尾につく「EX」は、レヴォーグでは最新型の先進運転支援機構「アイサイトX」を標準装備したグレードに与えられており、アウトバックも同じ意味となっている。つまり、全車アイサイトX標準装備であり、この面でもフラッグシップらしい内容になっている。

○ゆとりを感じるインテリアデザイン



インテリアもレヴォーグと比べると、造形のエッジが控えめになり、シートサイズには余裕がもたらされるなど、ゆとりも実感できて、フラッグシップにふさわしい空間が表現できていると感じる。



インパネ中央の大型縦長ディスプレイはレヴォーグにも採用されているが、こちらは当初、北米向けレガシィに装着されたものをレヴォーグにコンバートしたものなので、アウトバックのものがオリジナルだといえる。


XブレイクEXとリミテッドEXの差別化はインテリアでも鮮明だ。シートはリミテッドEXの標準だとブラックのファブリックとなるが、オプションのレザーシートはブラック以外にタンを選べる。Xブレイクの場合はブラックとグレーの2トーンで、エクステリアにもアクセントとして使われているグリーンのステッチが入る。


Xブレイクのような仕立ては最近、他のブランドでも用意するようになっているが、アウトバックの場合は内外装ともに、アクセントカラーを効果的な部分に最小限に使っているので、上質な雰囲気を邪魔しない。長年、アウトドアライフのパートナーとしての車両を提供してきたブランドならではの経験の豊かさを感じる。



ワゴンとSUVの中間くらいのフロアやシートの高さは、乗り降りのしやすさにつながっている。後席は身長170cmの筆者であれば足が組めるほどの広さ。定員乗車時のラゲッジスペース容積はフロア上が522リッター、床下のサブトランクが39リッターと十分以上だ。


走りについては、レヴォーグにも積まれる1.8リッターターボエンジンは車格を考えればやや力不足で、北米仕様が搭載する2.4リッターターボが欲しいとも思ったが、乗り心地はしっとりしていて揺れのスピードもゆったりしており、このまま長旅に出たいと思ってしまうほど。



ハンドリングは強固なプラットフォームのおかげで、操舵に対する反応は遅れがない一方で、その後は車格にふさわしいゆったりした曲がり方であり、これもまた長旅で疲れにくい要素になると感じた。



レヴォーグやフォレスターも快適ではあるが、落ち着いたデザインとリラックスできる乗り味を持つアウトバックをドライブすると、レベルが違うと感じる。



アイサイトXなどによる安全性能を含めて考えれば、欧州のプレミアムブランドと比べても引けを取らないグランドツーリング性能を備えており、それを含めてスバルのフラッグシップとしてふさわしいと実感している。



森口将之 1962年東京都出身。早稲田大学教育学部を卒業後、出版社編集部を経て、1993年にフリーランス・ジャーナリストとして独立。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員を務める。著書に『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』など。 この著者の記事一覧はこちら(森口将之)