第90回ル・マン24時間レースの決勝前日にあたる6月10日、ル・マンでACOフランス西部自動車クラブの年次記者会見が行われ、2022年限りでのLMGTEプロクラスの廃止を含む2023年末でのLMGTEカテゴリーの終了、ならびに2024年からGT3カーを用いる新しいプロ・アマクラスの創設がアナウンスされた。
このなかで2024年以降に登場する新しいクラスで、“GT3プレミアム”と呼ばれるGT3マシン用のキットの使用と、コマーシャル(商用)タイヤが利用が可能となることがあわせて発表されている。
FIAエンデュランス・コミッションの委員長を務めるリシャール・ミルによると、このキットは各メーカーのGT3モデルに「特別な外観」を与えることを目的とし、厳密にエアロの変更のみを認めるものだという。
また、純粋なFIA GT3仕様とWEC世界耐久選手権仕様との間を行き来できるよう、同キットはリバーシブル対応となる。それを踏まえたうえで、コストの上限は5万~10万ユーロ(約700万~1400万円)とされた。
「(新しいGTクラスの)基本はGT3だが、見た目ではいくつかのアップグレードが必要だと考えている」とSportscar365に語ったミル。
「それはコストキャップに沿ったキットになるだろう」
「(GTEからの切り替えの)目的は、コストを下げることに専念することにある」
「問題について話し合うことが、今日、本当に必要なことなんだ。GTEには非常に裕福なアマチュアがいる。しかし、それは将来的なコストの問題を扱う理由ではない」
「我々はハイパーカーでコストを徹底的に削減してきた。合理的な予算でWECやル・マンに参戦できることを証明したため、そこには成功があったと感じている」
「GT3でもまったく同じアプローチだ。しかし、こちらは完全にアマチュアのためのものでなければならない。ファクトリーやメーカーのオフィシャルチームのエントリーは望んでいないんだ」
「GT3メーカーがプライベートチームにクルマを販売する。このビジネスモデルに統合されるというわけだ」
ミルはWEC/ル・マンの新しいGTカテゴリーで、コルベット・レーシングのよなファクトリーチームの参加を認めないことを確認したうえで、現在のLMGTEアマと同様に、各ラインアップにブロンズドライバーを最低1名含まなければならないことを示唆した。
また、彼はベースとなるGT3プラットフォームと区別するために、このクラスは“LM GT”と呼ばれることになりそうだとも話した。
■プレミアムキットはGT3カーのパフォーマンス向上を目指すものにあらず
ACOのピエール・フィヨン会長は、“プレミアムキット”がGT3カーの性能を高めるためのものではないと付け加えた。
「これは耐久レースのためのボディワークであることを(知らせる)ためのものに過ぎない」と同氏。
「ドライバーがプレミアムな製品を欲しがっているため、細部にまでこだわっただけなのだ」
「そのようなボディワークであれば、ノーマルのGT3との違いを取り除くのは容易だろう。すべてのクルマで、世界中のすべてのGT3選手権に参戦できるようになるだろう」