出勤・退勤の時間に幅がある「フレックス・タイム」。日本でも大企業だと28.7%が導入しているようです(厚労省:就労条件総合調査)が、実際に使えるかどうかは別の話です。今回はその話をしたいと思います。(文:はっしー)
フレックスが「使えなかった」日本企業時代
私が日本で勤めていたとあるIT企業でも、フレックス・タイム制が導入されていました。しかし「使っていい雰囲気」は全くありませんでした。そもそも仕事が1日8時間で終わらないのです。長時間残業や「終電近くまで働く」のは、暗黙の了解と化していました。
一度だけ、「始発で出勤すれば定時で帰れるのではないか?」と思い立ち、早起きしてオフィスに7時半に到着し、仕事をしたことがあります。しかし結局残業につかまって、帰宅したのは深夜1時でした。どう頑張っても定時に帰るのは不可能だとガッカリしたのを覚えています。
そんなことでは、せっかくのフレックスタイムも活用できるタイミングがありません。せいぜい、職場の飲み会があった翌朝は、10時出社が許される、ぐらいの存在になってしまっていました。
一方で、ニュージーランドに行ってみると、フレックスタイムが機能しているのに驚きました。
たとえば15時頃にオフィスをあとにする人もいます。最初は時短勤務なのかと思いましたが、よくよく聞いてみるとフレックスで「朝7時出勤、15時退勤」にしていたそう。「午後16時には帰宅ラッシュが始まる」と言われるニュージーランドでは早出の人が少なくありませんでした。そのオフィスでも主流派は、朝8時台に出勤してきて、夕方17時前には帰るタイプ。午後9時すぎ出社の自分でも「出社は遅い方」でした。
早寝早起きの人が多いニュージーランド
朝型の理由は、ニュージーランドの文化にありそうです。
私が働いていたクライストチャーチという街は、国内有数の都市……なのですが、夜20時を過ぎるとほとんどの飲食店が閉まってしまう。深夜まで開いているのは一部のバーやナイトクラブだけでした。つまり、夜起きていてもつまらないんですね。
ニュージーランド人は夜22時48分に寝て、朝6時54分に起きるのが平均という調査があります(2016年・米ミシガン大学の調査、⇒地元メディア記事)。
みんなが夜ふかしするのは、国民的スポーツ「ラグビー」の国際試合があるとき、ぐらいでしょうか。試合が深夜になってもみんなリアルタイムで観戦するので、翌朝は10時出勤とか、半休を取る社員が続出していました。
さて、ちょっと話がズレましたが、まったく同じ「フレックスタイム制度」が導入されたとしても、それが使えるかどうかは全く別という話でした。日本は時間に几帳面と言われることもありますが、労働時間には驚くほどルーズです。働きやすさを高めるためには、使えない制度を取り入れるよりも、時間内にしっかり働くというところにもう一度立ち返ったほうがいいのではないかと思いました。
「仕事は時間内で終わらせるもの!」という意識が根付いている職場とそうでない職場では、働き方、制度の使い方がまるで違うというお話でした。
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【筆者プロフィール】はっしー
ニュージーランド在住のウェブライター。日本のIT業界の激務に疲れ果て、残業のない職場を求めて2014年にニュージーランドへ移住する。現地企業のプログラマーとして4年半勤めたのち退職。現在はライター業のほか、将棋教室運営、畑の草むしりなどで生計を立てている。