トップへ

福島の被災犬を描く「とんがり頭のごん太」石川由依が福島との意外な縁と夢を明かす

2022年06月05日 21:13  コミックナタリー

コミックナタリー

「とんがり頭のごん太 ー2つの名前を生きた福島被災犬の物語ー」公開記念舞台挨拶の様子。左から西澤昭男監督、石川由依。
劇場アニメ「とんがり頭のごん太 ―2つの名前を生きた福島被災犬の物語―」の公開記念舞台挨拶が、東京・ヒューマントラストシネマ渋谷にて本日6月5日に開催され、西澤昭男監督、石川由依が登壇した。

【大きな画像をもっと見る】

「とんがり頭のごん太 ―2つの名前を生きた福島被災犬の物語―」は、2011年3月11日に起きた東日本大震災で福島の浪江町に取り残された犬のごん太、置いていかざるを得なかった飼い主家族、そしてペットを保護するボランティアたちの姿を描く物語。かつて阪神淡路大震災を神戸で体験したという西澤監督は「そのときは個人的にも会社としてもできることをやらせていただいたんですけど、2011年の東日本大震災は若干の寄附はさせていただきましたが、それ以上のことができなかったんですね。そんな中、家内が原案を探してくれまして、これで(映画を)作りたいなと思いました」と制作に至った経緯を話す。さらに「私はアニメを3作、ドキュメンタリーを1作、作りましたが(この映画が)最後の作品になるかなと思っていました」と打ち明け、「被災されてまだまだ状況のよくない方もおられるし、原発では汚染水の問題などもありますけど、できるだけ皆さんに(当時の)状況を知っていただきたいと思い、また、それ以降に生まれた若い人たちは全然状況がわからないと思うので、そういう方々へ向けて作品を作らせていただきました」と熱い思いを吐露した。

もともとはドキュメンタリーだった「とんがり頭のごん太」。なぜ劇場アニメにしたのか、その理由を問われた西澤監督は「アニメのほうが、息が長続きするということと、子供と大人が観たあとにいろんな話し合いができるという意味でアニメのほうがいいと思いアニメ化しました」とその意図を説明。加えて「観たあとに原発の問題や保護権の問題などいろいろ話し合いをしていただければいいかなと思います」と語った。

ペットを救済するボランティアとして被災地を訪れる大学生・吉野由紀役を演じた石川は、脚本を読んだ際の感想を尋ねられると「東日本大震災は東京で経験しましたけれども、東京から知り得る情報というのはニュース番組でしか得られないですし、もちろん大変な状況や悲しい思いをされた方がたくさんいらっしゃると思うんですけど、それ以上にいろんな大変なことがあったことや、被災犬を保護する活動があったことはペットを飼っていないこともあって知らなかったことがたくさんあって、脚本を読んで改めて大変な思いをされた方がいっぱいいたんだなということを感じました」としみじみと語る。

また石川は「今回、この作品をやるにあたって母と話していたら、まったく縁がないと思っていたんですけれども、母方の祖父が福島生まれで、曽祖父は福島で農家をやっていて、大名行列のお殿様が立ち寄るくらいの大きな農家をやっていたという話を聞いて、『そうだったんだ!』と思いました」と自身と福島の意外な縁についても告白。「自分に福島の血が入っていたとは知らなかったんですけれども、だからこそ、いつか福島に行って“なみえ焼きそば”を食べたいですね(笑)」と目を輝かせていた。

最後に、石川は「本当にあったことがここに描かれています。あのとき、どんな大変な思いをした方がいたか、そしてどんな悲しい思いをした方がいたか、そしてそんな中で由紀のようにボランティアとして活動していたり、そんな方たちと出会って前を向いて歩む人たちの物語になっております。東日本大震災を忘れないために、ぜひ見ていただきたいですし、私もずっと忘れないでいようと思います」と呼びかけた。

■ 「とんがり頭のごん太 ー2つの名前を生きた福島被災犬の物語ー」
公開中

□ スタッフ
原案:仲本剛「福島 余命1カ月の被災犬 とんがりあたまのごん太」(光文社)
製作・配給:株式会社ワオ・コーポレーション
後援:福島県、浪江町、双葉町、葛尾村、神戸市、福島県教育委員会、浪江町教育委員会、神戸市教育委員会
協力:福島民報社、光文社

(c)ワオ・コーポレーション/光文社