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玉木宏が明かす、“年相応”の俳優の楽しさ 『マイファミリー』俳優陣の上手さは刺激に

2022年06月05日 12:11  リアルサウンド

リアルサウンド

玉木宏『マイファミリー』(c)TBS

 TBS日曜劇場『マイファミリー』において頼もしい存在であり、犯人を追うその執念深さに、怖さをも感じさせる神奈川県警捜査一課・特殊犯対策係の葛城圭史。どんな状況になっても捜査を推し進める、異常にも見える執着に怪しむ声も上がる一方で、必ず真犯人を突き止めてくれるはずだと、視聴者からの信頼の高さも伺える。物語の最終展開のキーパーソンとなっていく存在であるのは間違いないだろう。


【写真】2006年の『のだめカンタービレ』で“千秋先輩”演じた玉木宏(3点)


 そんな物語の重厚な日曜劇場らしさを存分に引き立たせているのが、葛城を演じる玉木宏だ。映画『極主夫道 ザ・シネマ』などのコメディ作品での主演から、本作のような社会派ミステリー作品の脇を固める役など、これまで・これからの俳優人生のなかで「いろいろな役を演じること」への思いについて、語ってくれた。(編集部)


■真犯人を知らずに演じるのは新鮮


――SNSを中心に考察が盛り上がっていますが、考察ドラマに出演する面白さは感じていらっしゃいますか?


玉木宏(以下、玉木):そうですね。もともと連続ドラマには、視聴者の反応を感じながら撮影できる醍醐味があると思っていて。僕はそんなにネットを見る方ではないんですけど、世の中が“こういう考察をしている”というのは耳に入ってきますし、その反応が面白いなと思いながら演じていました。ただ、僕自身も最終話の台本をもらったのがちょうど一昨日(※インタビューは5月27日実施)の夕方で、そこまでは本当に真犯人が誰なのか知らなかったんです。台本をもらうたびに毎回ちょっとした驚きもありますし、知らないで演じるというのも新鮮でした。


――視聴者に近い感覚でもあったと。


玉木:はい、本当に(笑)。「あれ? もしかしたら俺は犯人なのかな?」という思いもあって、怪しさを残しながら演じていた部分もあります。


――今まで葛城を演じてこられて、役に入れる感情に変化はありますか?


玉木:特に変わりはないです。最初から、葛城は非常に執念深いというお話をいただいていて。この時点になっても、まだ1人だけ執念深く5年前の事件の真相を追っているところもありますし、その執念深さが、ときに怖くも見えるというか。ただ、(善人か悪人か)どっちに転ぶかわからないようなセリフが多いので、遊びを入れるのが難しい役柄ではあると思います。


――ご自身は、葛城の執念深さに共感できますか?


玉木:当然、役として受け入れて近づこうとはしています。それに、葛城という人物は本当にまっすぐ事件を追い続けている男なんです。5年前に東堂心春さんを救えなかった事実が自分の中にあって、「同じような失態を繰り返さないように」という想いもあるだろうし、仕事に対して非常にまっすぐな男だと思うので、そこはすごく共感できるところです。


■現場での談話は「心の中でブレーキをかけながら」


――玉木さんはコメディからシリアスな役まで幅広く演じていらっしゃいますが、現場では役を引っ張らずに切り替えられるタイプですか?


玉木:役を引きずって、ということは一切ないと思います。でも、専門用語や警察用語は頭の中で整理しておかないと、すぐに出るようなセリフではなくて。二宮くんたちは本当に本番2秒前くらいまで喋っているので(笑)、心の中でブレーキをかけながら話に乗っかっているという感じです。


――シリアスなシーンが多い中でも、現場は和気あいあいとされているそうですね。


玉木:本当に明るい人ばかりだし、みんな意外と喋るのが好きな人たちなので、集中するときは集中して、そうでないときは他愛もない会話で盛り上がっています。


――主演の二宮さんの印象は?


玉木:二宮くんとは4作目の共演なんですけど、一番最初はお互いに10代の頃でした(テレビ朝日系『あぶない放課後』/1999年4月期)。嵐結成前でしたけど、当時から第一線で主役をやられていた人なので、その頃からあまり印象は変わらないです。現場を引っ張っていて、さすがだなと。さらに進化しているとは思いますが、非常に頼りがいのある座長だな、という思いです。


■助演をすることで“攻めの芝居”を勉強できる


――ドラマは第9話を迎え、いよいよ大詰めです。


玉木:このドラマには番宣などで謳われていた“ノンストップファミリーエンターテインメント”というキャッチコピーがあるんですけど、当初は頭の中で「?(クエッション)」だらけだったんです(笑)。でも、ゴールが見えてきた段階で、ようやくその意味がわかった気がしています。悪いことではあるけれど、誘拐という事件をきっかけに家族がまた絆を深めて、いい形に変わっていく。観ていて心にジーンとくるものがあるし、それにプラスしてやっぱり脚本の面白さがすごく出ているドラマだと思っています。複雑ではあるので、頭を使わなければ入ってこないし、演じる上でも理解していなければ外に出ていかない。そういう難しさはあるんですけど、その難しさに臨める作品として、すごくやりがいがあります。


――刺激になることも多いですか?


玉木:やっぱり脚本が面白ければ、現場は盛り上がるものだと純粋に思っていて。単純明快な面白さがあるドラマも当然ありますけど、このドラマはそうではなくて、みんながじっくりと台本を読み込んで形を作っていく。それぞれの部署にちゃんと責任が課せられたている作品のような気がします。僕は二宮くんたちと比べたら少し上になりますけど、ほぼ同年代の仲間で作品を作れるというのも、すごく刺激になります。また最近は主演という立場でやらせていただくことも多かったので、そうではないポジションから現場を見るということも新鮮でしたし、みなさんのお芝居の上手さも刺激になりました。


――数々の作品で主演を経験される中で、あらためて助演の面白さを体感されていると。


玉木:基本的に、主人公は“受けの芝居”が多くなってしまうんです。なので、助演をすることで“攻めの芝居”をもう1回勉強できるというか。主人公にどんどん影響やダメージを与えていくのが助演の役目だと思うので、その難しさと楽しさを非常に感じています。


――年齢を重ねて、玉木さんのイメージは“爽やかなイケメン俳優”から、刑事役がハマる“渋みのある俳優”へと変化したように思いますが、それは玉木さんにとって自然な流れだったのでしょうか? それとも、ご自身の中に見せ方を変えていきたいという思いがあったのでしょうか?


玉木:『のだめカンタービレ』(フジテレビ系)のような“文化系”のパブリックイメージが強かったと思うんですが、僕自身そういうタイプではないので、正直ちょっと無理をしている感覚はあったように思います。そこから、年齢を重ねると同時に社会派の作品に携わる機会が増えてきて、少しずつイメージも変わっていったように思います。とはいえ、今の姿が本来の自分なのかどうかも、よくわかっていないんですけど(笑)。いつも思うのは、「年相応でいい」ということ。その良さが必ず出てくるのが、俳優の楽しさでもあると思うんです。年齢を重ねるほど、演じる役の難易度は上がっている気がしていますが、難しいからこそ楽しいなと思うし、今、いろいろな役をいただけることがすごく刺激になっています。


(取材・文=nakamura omame)