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給食の「完食指導」で心の傷、弁護士は「強制性が強ければ体罰の可能性も」と指摘

2022年06月04日 09:21  弁護士ドットコム

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学校の給食を残さずに食べる完食指導は、時に指導の度を超え、子どもの心に傷を残すこともあり、苦痛を訴える声は後をたたない。昭和の遺物かと思いきや、今も程度の差こそあれ、全国の小学校で脈々と続いているようだ。


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今年(2022年)に入っても、ネット上では「事前に少なめにしてもらうのも禁止らしく食が細いうちの子は給食が苦痛になってしまった」などの声が上がっている。ツイッターでは現場の教員と思われるアカウントの「まだあるとは」と困惑する投稿もあった。



東京23区内の小学校に子どもを通わせる保護者(40代)によれば、「時間内に給食を食べられなかった同級生が、そのまま机を廊下に置かれ、そこで食べさせられたこともあったようです。私たちの時代ほどには厳しくないかもしれませんが、未だにこんなことをやっているんだという驚きがありました」。



厳しい完食指導を受けた子どもの中には、成人してもなお他の人との食事に苦痛を感じるようになってしまう人もいるそうだ。いき過ぎた完食指導に法的な問題はないのだろうか。教育問題に詳しい宮島繁成弁護士に聞いた。



●「完食を目指す」教育自体には問題ないが・・・

——完食指導そのものに法的な問題はないのでしょうか



結論からいえば、完食指導そのものに法的問題はないものの、程度によっては「体罰」に当たることがあります。



給食の根拠は学校給食法と学習指導要領です。



学習指導要領では「特別活動」に位置付けられています。児童会活動、運動会、遠足などと同じです。



給食は教育活動の一貫であって、単なる昼食ではありません。ですので、給食を残さずに食べるよう指導すること自体はあるべき指導と言えます。



とはいえ、教科に個人差があるのと同じように、食事も個人差があります。もともと小食の子どももいます。全員が必ず時間内に完食しなければならないというものではありません。



そのため、一人だけ残して全部食べ終わるまで席を立たせない、完食するよう叱りつける、学級内で完食の達成度を競わせるなどは行きすぎた指導といえます。



学校教育法11条が禁止している体罰は殴る蹴るだけではありません。肉体的苦痛を与えることも体罰に当たります。口に食べ物を無理に流し込むようなことがあればもちろん、そこまでいかなくとも、強制の度合いが強いものは体罰に該当する可能性があります。




【取材協力弁護士】
宮島 繁成(みやじま・しげなり)弁護士
日弁連子どもの権利委員会、教育法制改正問題対策ワーキンググループ。いじめや体罰のほか、スポーツ問題に取り組んでいる。中学校と高校の教員免許を有している。

事務所名:ひまわり総合法律事務所
事務所URL:http://www.himawarilaw.com