不登校が、ますます増加傾向にあります。文科省によると、中学生の4.1%が不登校です。
典型的なのは、子ども自身が「人間関係」や「学業不振」などに悩んで、「学校に行きたくない」と通学をやめてしまうケースです。
しかし中には、子ども本人というより「親の意向」で、不登校状態になっている子どもたちも存在します。いったい何が起きているのでしょうか?(文:プロ家庭教師・妻鹿潤)
担任を代えないと登校させない!?
「親の意向で不登校」は、「親が学校に不信感を持っている」場合に起きます。
典型的なのは、いじめや人間関係のトラブルで学校側の対応に不満を抱くケースです。
よくあるのは、親が「今すぐクラス替えして欲しい」「今すぐ担任を代えて欲しい」などと学校側が簡単には受け入れられない要求をし、希望がかなわないと「対応が不十分である」「問題が完全に解決するまでは登校させない」などと主張するケースです。結果として何ヶ月も欠席が続くこともあります。
もちろん、本当に学校側の対応が不適切なケースもあります。ただ、学校側もそれなりの対応をし、客観的にも「登校は可能だ」という状況になっても、親が強硬に反発していて登校に至らないというケースもまた見受けられるのです。
それって教育ネグレクトじゃないの?
ちなみに日本国憲法にもある義務教育とは、「子どもたちに教育を受けさせる、親の義務」のことです。子ども自身が拒否しているならともかく、親が子どもに登校させないような、児童虐待防止法の観点からは「教育ネグレクト」に当たります(参考:文部科学省 学校・教育委員会等向け虐待対応の手引き)。
しかし、この問題が極めて難しいのは、親のその対応が「我が子を本当に思っての行動」の場合もあれば、親自身のためにやっている場合もあることです。
仮に、学校の先生や児童相談所の職員が直接子どもと面会し、登校したいのかどうかの意思確認ができれば、話がスムーズです。
しかし、親が学校や児相に不信感を持っている場合、そもそも子どもと面会させてもらえないこともあります。仮に暴力を伴うような「虐待」が確認できれば、行政の権限で子どもを一時保護できますが、そこまで至っていないケースだと子どもの意思を確認するのはとても難しい。学校や児相も、なかなか手を出せないようです(参考:厚生労働省 一時保護ガイドライン)。
子どもが奮い立たない限り、解決は難しい
「学校に行かなくてよい」と言っている親に対し、子どもが「学校に行きたい」と主張するのはかなり難しいことです。子どもは衣食住を親に頼って生きているため、親に逆らえば生活が出来なくなるリスクもあり、精神的にも相当なエネルギーを使います。
子どもが親の方針におとなしく従い、親の手前もあり「行かない」「行きたくない」などと言い出した場合、問題解決はとても困難になります。子どもが「行きたくない」と言っている以上、学校も児童相談所も、それ以上のアプローチをすることができません。
子どもが自分から「学校に行きたい」と言うことを期待して粘り強く見守り続けることしか、今のところ解決方法は無いのです。そのため、学校の先生たちも、親が非協力的な中でも何とか子どもに接触を図り、「あなたの本当の気持ちを教えてくれたら良いからね」と根気強く問いかけるようにしています。
親のエゴで、子どものチャンスを奪って良いのか?
確かに学校に行かなくても勉強は可能です。しかし、クラスメイトと遊んだりぶつかったりしながら社交性を身に付けたり、部活動で同世代と競ったりと、学校で体験できることは決して少なくありません。もし、そうした経験をするチャンスを「子ども自身の本心に反して」親のエゴで奪ってしまったとしたら、これほど残念なことはありません。
もちろん学校は理想的な環境ではないでしょう。しかし、だからといって「学校に行かせない」ことが本当に我が子のためになるのか。親たちには冷静に考えてもらいたいと思います。
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近影
【筆者プロフィール】】株式会社STORY CAREER取締役 妻鹿潤(めがじゅん)
関西学院大学法学部卒。塾コンサルタント・キャリアアドバイザー・プロ家庭教師などを通してのべ1500人以上の小中高生、保護者へ指導・学習アドバイスを行う。
大手教育会社時代は携わった教室が10か月で100人以上の生徒が入会する塾に。しかし志望校合格がゴールの既存教育に限界を感じ、「社会で生き抜く力」を身につける学習塾を起業。40~50点の大幅な点数アップを実現し、生徒のやる気を引き出すメソッドを確立。入塾待ちの塾となる。
現在はキャリアアドバイザーとして企業の採用支援、大学生・社会人のキャリア支援を行う。ほかにも塾コンサルティング、プロ家庭教師、不登校・発達障害の生徒の個別指導なども行っている。