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次に来るかも?ビール苦手でも飲みやすい野生酵母のナチュラルビール「ワイルドエール」

2022年05月28日 11:21  Fashionsnap.com

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17年連続で市場規模が縮小傾向にあるビール業界の中で、1990年代の地ビールブーム、2010年代のクラフトブーム、と年代毎にトレンドを作りながら成長を続けているのがクラフトビールだ。こうした背景を受け、世界各地にあるクラフトビールを発掘して輸入販売を行うDIG THE LINEの取締役 本間浩揮(ほんまこうき)氏は、次のトレンドとしてワイルドエールに注目しているという。

※飲酒は20歳になってから。 20歳未満の者の飲酒は法律で禁じられています。飲酒運転は法律で禁止されています。妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります。
ワイルドエールとは?
 ワイルドエールは木樽で自発的に発酵させたビールで、ワインやシードルのようなビールとは思えない酸味や味わいの奥深さが特徴。代表例がベルギー伝統の「ランビック」で、ランビックはブリュッセル近郊のパヨッテンラントで作られたビールのみを指す。シャンパンとスパークリングワインの関係性に近く、多くのワイルドエールの造り手がランビックを参考にして作り始めたと言われている。

 一般的にビールは、カールスバーグ研究所の「酵母純粋培養法」に基づいて、上面発酵でも下面発酵でも純粋培養された酵母を用いる。これは酵母純粋培養法によって、大量生産における味の均一化を可能としているからだが、ワイルドエールは様々な野生酵母や細菌を利用して木樽で発酵させるため、自然な酸味と、ナチュラルカーボネーション(炭酸ガス)、果物や樽による香りや味の複雑さに繋がっている。類似したジャンルとしてサワーエールがあり、同じく酸味があるが、サワーエールは一般的に乳酸菌を使用して計算のうえに酸を作るビールを指すことが多い。
来るかもポイント1-欧米の主要スタイルがIPAから変化
 2010年代のクラフトビールブームを牽引したのが、「ホップ」を大量に使用したIPA(インディア・ペールエール:India Pale Ale)。そもそもIPAは、18世紀にイギリスから植民地のインドへビールを輸送する際に腐敗することを防ぐため、ビールの原材料の一つで抗菌作用があるホップを大量に使用し、アルコール度数を高めたことで生まれたと言われている。IPAの流行によって、ラガー至上主義だった多くの日本人のビールへの価値観が変化し、ラガーだけでなく、多種多様なビールに触れるきっかけとなり、クラフトビールが広まるきっかけにもなった。ただ、本間氏によると欧米ではIPAがメインストリームではなくなってきているという。
 IPAがアメリカの主要スタイルではなくなった理由について本間氏は、ホームブルワリーの増加とコロナの影響が大きいと話す。アメリカではホームブルーイングが可能なため、IPAブームの到来でホームブルワーも含め造り手が増加。消費量よりも生産量が大幅に上回ってしまったことで、市場全体が下火となり苦境に立たされていた。また、本間氏は「アメリカは食事の後にパブでガブガブ飲むという文化でIPAとの相性もよかったが、新型コロナウイルス感染症の拡大によって外でお酒を飲むことが減少したことで、需要と供給に更なるギャップが生まれた」と説明する。こうした流れから、ワインのように熟成が楽しめるワイルドエールやサワーエール、バーレイワイン、インペリアルスタウトといったビールに注目が集まるようになった。

来るかもポイント2-「飲酒=食事」の日本で食中酒としても期待
 ワイルドエールは酸味があることから食事との相性も良いとされている。ヨーロッパでは食前酒のシャンパンの代わりや、コース料理の食中酒として酸味のあるビールを提供するレストランも増加している。本間氏は「飲みに行く=食事に行くといった晩酌文化が根強い日本でも支持されるだろう」と予測。実際、国内ではワイルドエールを仕入れる飲食店が増加傾向にあるという。

 アルコール度数は6~7%のものが多く、中には3~4%程度のものもあるため、近年高まる低アルコールに対する嗜好とも呼応する。また、アルコール度数は抑えられながらも香りと味わいは奥深く、飲み疲れが起きにくく、飲み飽きないことから、近年人気のアウトドアシーンや、就寝前の自宅などでのリラックスした状態で長時間かけて少しずつ飲むスタイルにも適しているという。本間氏は「日本では焼酎・チューハイを好む人が多いが、ワイルドエールはビールが苦手な焼酎好きにとっても飲みやすい」と話し、日本での市場拡大に期待を寄せる。
来るかもポイント3-手法や熟成期間で変化する味わい、熟成による深み
 ワイルドエールは、ワインやウイスキー、日本酒などと同様に熟成による味わいの変化が楽しめる。近年、造り手によるユニークな手法で製造されたワイルドエールが続々と誕生しており、フルーツやハーブ、花を使用して発酵させるもの、熟成の段階でオーガニックな農産物を漬け込み、農産物の酵母と糖分で二次発酵されるものなど様々。さらに熟成期間によっても味が変化するほか、熟成期間が短い若いワイルドエールと古いワイルドエールをブレンドしたものも存在する。本間氏は「ラガーやIPAは味の振れ幅が小さいため、開拓し尽くされていて、最上級の味はこれ、平均的な味はこれ、と答えが出ている」と比較し、ワイルドエールは飲みやすいながらも味が多彩で玄人が語れるポイントがあるのも魅力だと言う。

 ウィズ原宿に出店しているDIG THE LINEの店舗「DIG THE LINE DOORS」では、缶・瓶ビールの持ち帰り販売のほか、タップを設けており、店内での飲酒が可能。6つ用意しているタップのうち2タップをワイルドエールにして営業しており、回転率は日々上がっているという。「日本でも必ず受け入れられる」と意気込む本間氏は、ワイルドエールの更なる普及のために尽力していくといい、まずはレストランやバーなど飲み手に直接訴求できる飲食店との繋がりを強化し、いずれは酒類小売や百貨店への卸販売も強化していく計画だ。
※飲酒は20歳になってから。 20歳未満の者の飲酒は法律で禁じられています。飲酒運転は法律で禁止されています。妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります。

■DIG THE LINE:公式サイト