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資生堂が福岡久留米に新工場設立 最先端IoTと培ってきた人の価値を融合

2022年05月26日 18:52  Fashionsnap.com

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資生堂が、「エリクシール(ELIXIR)」など中価格帯のスキンケア製品の生産工場として、5月20日に福岡県久留米市に福岡久留米工場を設立し、6月から本格稼働する。最先端のIoTを取り入れた効率的な生産を実現し、2026年以降の生産数量を最大約1億4000万個まで引き上げる。これにより、国内だけでなく博多港から最短でアジアへ向けて出荷することが可能になる。代表取締役社長CEOの魚谷雅彦氏は、「最先端のIoT技術を搭載した工場と、これまで培ってきた人の知恵と勤勉さを融合し、資生堂のスキンビューティ領域の生産をグローバルでリードする」と述べ、世界No.1のビューティウエルネスカンパニーへの礎になる工場だ。

  同社は魚谷氏の社長CEO就任前に国内工場を6工場から3工場にまで削減し、グローバルでのモノづくりを推進してきた。魚谷社長CEOは、「社長就任時から国内のみならず、海外にも出向きさまざまな意見を聞く中で、当社の1番の強みは、日本で製造する過程に込められている技術。基礎研究と開発で、真面目に積み上げてきたところだ。メイド・イン・ジャパンとは、単純に作っているということではなく、肌への知見と技術、そして生産し実現するといった、トータルでのメイド・イン・ジャパンだ」と語った。日本の生産拠点の拡大を目指し、2019年の那須工場、2020年の大阪茨城工場、そして今回の福岡久留米工場の3工場を稼働させ、国内全6工場となることで、メイド・イン・ジャパンの高品質な製品をグローバルに安定的に提供する体制が整った。
 福岡久留米工場への投資額は約450億円。土地面積9万7000平方メートル、地上4階建てとなる。最大の特徴は最先端のIoTテクノロジーを取り入れた効率的な生産体制。これまでベテランの社員が培った知識や高度な技術で設備運転の条件を調整していたことを、経験の浅い社員でも匠の技を発揮できるようセンシング技術と情報処理技術で支援し、生産技術の標準化、高度化につなげる。具体的には、グローバルで初となる「化粧品の中身製造において、複数の品質項目をリアルタイムでモニタリングし、設備を同時制御する製造方法」が可能となった。一部の化粧品の充塡仕上げラインにおいて、最新ロボットや業界初のリニアモーター駆動の梱包装置を導入し、生産性が約3倍に向上する。 
 また環境に配慮した建屋構造とし、断熱性を高め、LED照明を採用するなどで建築物省エネ法が定める基準建築物に対し19%の省エネで建築した。また、施設内で利用する電力は100%再生可能エネルギーを用い、駐車場の敷地には太陽光パネルを設置。工場正面の白い外壁タイルは、原料に再生材料を20%以上用いている。
 エグゼクティブオフィサー/チーフサプライネットワークオフィサー/安全・品質・サステナビリティ部長のアントニオ・スピリオトポロス(Antonios Spiliotopoulos)氏は、「この工場は全てのパフォーマンスにおいて最新鋭の建設、建築技術を詰め込んでいて、持続可能性を達成できる。ITに投資することで効率化をはかり、人が無駄なことをしなくて済む。その分、人は長年の経験、感性、美的センスなどを含め、クリエイティビティを高めることが可能で、その融合は高い優位性がある」と述べた。
 さらに施設において魚谷社長CEOは、「同社は『ピープルファースト』の考えのもと、人財が会社にとって大切な資産であり、全ての人が楽しく生き生きと働ける会社を目指している」とし、働きやすい環境を取り入れている。同工場の従業員の約6割以上が女性であることを見据え、ピンクの床や女性トイレ数の増加などから、フリーアドレスのオフィスや部門間の交流が可能な全スタッフ部門を集約した空間設計などをおこなった。
 加えて、地域との連携も強固なものにすると魚谷社長CEO。今回の工場新設により、約250人の従業員のうち70~80人が既存社員で、ほか地元採用も多数だ。今後は800~900人規模の従業員になる予定とし、地元の雇用創出にも一役買う。さらに、自然災害に地下水を濾過した水を飲料水として提供することや、トイレの使用など、地域の人々が活用できる設備を備える。
 魚谷社長CEOは、「2019年から建設した3工場の投資額は約1500億円になる。確信しているのは、我々の価値はお客さまの満足度や気持ち、継続の蓄積こそがブランドの資産で、無形の資産。日本が今後、厳しい混迷の世界で生き残っていくには、『生産』の持つエネルギーとパワー。ITでやり方は変わってきているが、新たな価値で雇用を作り、育成をしていく。一石を投じたい」と語った。