高級アパレルブランドの広告部門でデザイン制作の仕事をしているという20代男性は、美少女キャラのコスプレが趣味だという。「好きなキャラになりきる」というコスプレの精神は、そもそも本人の性別やキャラの性別には限定されない。ただ、女性→男性キャラに比べると、男性→女性キャラのコスプレは再現難易度が高く、挑戦する人も少なめだ。どんなきっかけで始めることになったのか、男性に聞いてみた。
コンプレックスだった中性的な容姿が、コスプレで強みに
男性が初めてコスプレをしたのは、今から3年前の年末ごろ。きっかけは、好きなアニメの「推しキャラ(女性)」の衣装を中国通販サイトから取り寄せ、冗談半分で着てみたところ、同人仲間から褒められたことだったという。
男性はこう語る。
「私が好きな作品は、某魔法少女が登場するアニメで、私がコスプレしているキャラクターも美少女です。社会人になり、一人暮らしをはじめてから、アニメの同人イベントなどに出入りするようになり、そこで手軽にコスプレを楽しむ方が多くいらっしゃるということを知りました。それまでは、てっきりモデルのような人しかできないものだと思い込んでいたんです」
「初めて衣装を着た姿を仲間たちに褒められてから、自分でいろいろと調べて、メイクにも初めて挑戦しました。デザイン学科出身で手先は器用なほうなので、小道具まで一気に作り込んで、2020年の年明けのオンリーイベント(※特定のジャンルのみの同人即売会)にコスプレ参加し、それを皮切りにどんどんのめり込んでいったんです」
「なによりもハマるきっかけになったのが、同人イベントで出会った参加者の方から『その姿とっても大好き! もっと見ていたい』『言葉を失うくらい可愛い!』といったお褒めの言葉をいただいたことです。自分自身、好きなキャラクターに扮した自分を鏡で見た瞬間、『コスプレで、自分でもこんなにも可愛く、魅力的になれるんだ』と思い、ドキッとしてしまいます。コスプレを通じて、初めて少しだけ自分を好きになれたのです」
もともと小柄で中性的な顔立ちだったという男性。かつては、そんな自分の容姿にコンプレックスを抱いていたそうだ。
「幼い頃から身長も低く、顔立ちも中性的で覇気がなく、いわゆる『男らしさ』に欠けていたため、鏡に映る姿はコンプレックスでしかありませんでした。中高時代には先輩の女子生徒から『お人形さんみたいでかわいい』なんて言われたこともあります。年頃で、少しでもかっこよく思われたかった当時の私に、『可愛い』なんて侮辱に等しいものでした。性自認は男性で、自分を女性だと思ったことはありませんから」
「ですが、自分自身の持つ器用さと中性的な容姿にメイクを施すことで、初めてその容姿を人から褒められたと感じました。自己満足な成功体験だとは思うのですが、人生が変わったというか、背負っていた重荷が一つ取れたようで、初めて心に光が射すのを感じたのです」
ちなみに、仲間内には絶賛されるコスプレ姿を、周囲には披露していないという。男性は「古い価値観の親に、長男としての期待を寄せられているんです。世間的な偏見がなくなれば、隠す必要もなくなるのですが……」と話していた。
確かに親世代の価値観では、理解が追いつかないのかもしれない。が、そもそもの話をすれば、誰がどんな服装をしていても、それだけで咎められる理由はどこにもないはず。最近はジェンダーレスな服装がトレンドになったりしてきているし、そのうちみんな気にしなくなるかも?