山口県阿武町の24歳男性が、誤って振り込まれた4630万円を返還しない問題。男性は「海外のネットカジノで使い切った」と説明している――。5月17日にそんなニュースが報じられると、SNSは「ネットカジノって何だ!?」と大騒ぎになった。
「ネットカジノって国内で出来るんですね」
「ネットカジノで全て溶かしたとかやばすぎるよね」
「ギャンブルの才能もすこぶるない」
と、反応も様々。漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』では両さんが、誤入金されたお金をギャンブルで増やしてから返そうと目論む回があったため、それに言及する声も。それにしても、ホントに「ネットカジノ」ってなんなんだ?(文:昼間たかし)
関連サイトはごまかそうとするが、利用者が摘発されたケースも。
ネットで話題になったのは次のようなニュースだ。
山口県阿武町が新型コロナウイルス対策の臨時特別給付金計4630万円を誤って町内の男性(24)に振り込み、返還を求めている問題で、男性が「金は海外のインターネットカジノ数社で全部使った」と説明していることが17日、関係者への取材で分かった。(共同通信・2022年5月17日配信)
そもそも日本国内での「賭け事(賭博)」は違法である。
海外のカジノで遊んだ日本人が処罰されていないのは、賭博罪に国外犯の処罰規定がないから。ようは、国外で賭博行為をしても日本の刑法では処罰されないのだ。
では、「海外のネットカジノ」はどうなのか? これは文字通りインターネット上で運営されているカジノのこと。多くは賭け事が合法な国のサーバで運営されていて、実際に「お金」を賭けることも可能となっている。
共同通信(2021年12月19日)によると、日本国内からもかなりのアクセスがあるようだ。
デジタル分析支援会社、シミラーウェブジャパン(東京)の調査によると、オンラインカジノへの日本からのアクセス数は、2018年12月に月間約70万回だったが、19年2月ごろから急増。コロナ禍が本格化した20年1月には約7820万回まで増えた。その後はいったん減少したが、20年8月から再び増加に転じた。
21年9月は約8300万回を記録し、18年12月の約118倍に膨らんだ。国別アクセス数は、米国の約2億5800万回が最多で、二位は約1億400万回のドイツだった。
こんなデータを見ていると、「アクセスしてもOKなのか?」と思いそうになるが、それは勘違い。2016年、オンラインカジノを国内から利用した人たちが逮捕されたケースを、読売新聞が報じている。
捜査関係者によると、3人は今年2月頃、カジノサイトに接続し、ブラックジャックで、金を賭けた疑いが持たれている。
サイトは、ネット中継され、日本人女性のディーラーがルーレットやブラックジャックなどのゲームを提供。客はあらかじめ氏名やメールアドレスなどを登録し、クレジットカードや決済サイトを使って入金して、賭ける。遊び方などは日本語でやり取りでき、賭博の開催時間は、日本時間の夕方から深夜に設定していた。
府警は英国に拠点があっても実態は日本向けの違法賭博と判断。客の賭博行為は国内で行われているとして、単純賭博容疑での摘発に踏み切った。(『読売新聞』2016年3月10日付大阪夕刊)
検索エンジンで調べると、日本から利用してもOKと思わせるような解説サイトが次々に出てくるが、これもよく読むと根拠薄弱。
先ほどの共同通信記事でも指摘されていたことだが、結局は「海外事業者の取り締まりは非常に困難で、事実上野放し状態」なだけで、海外オンラインカジノを国内から使えば、日本の賭博罪に問われるリスクは常に存在するわけだ。
それにしても、4600万円という大金がどこへ消えたのか不思議でしかたがなかったが、確かに博打でならあっという間に「溶かせる」うえ、取り返すのも難しそうだ。実際に金がどのように流れたのかは、今後きちんと精査されていくのだろうが……。なんともやるせないニュースだった。