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完全新開発のレーシング『スカニア』も参戦へ。開幕前テストに続き2022年は全15台が集結/ETRC

2022年05月16日 18:10  AUTOSPORT web

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ドイツ出身のクレメンス・ヘッカーが、新たなシーズンに向け完全新開発の新型トラック投入を表明
2020年からETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップに参戦するドイツ出身のクレメンス・ヘッカーが、新たなシーズンに向け完全新開発の新型トラック投入を表明。デビュー時よりゆかりのある北欧『SCANIA(スカニア)』製ヘッドを採用した、その名も“プレデター・ミンナ”で、自身3年目のETRCを戦うとアナウンスした。また、4月下旬にチェコ共和国のモストで開幕前プレテストを実施したシリーズは、全15台を数える年間エントリーリストを公開している。

 かつてミカエル・ヨハンソンがドライブした『スカニア・トーピード』を譲り受け、2017年にドイツ国内選手権でデビューを飾ったヘッカーは、その後トラックレーシング界で実績あるMAN(マン)にスイッチしてオランダのシリーズで腕を磨いたのち、2020年より晴れて欧州選手権のETRC昇格を果たした。

 そうした自身の努力を強化するべく、ヘッカーはかねてより「真新しいトラックを作りたいと思っていた」と明かしており、この2年計画と数カ月のハードワークの後、印象的な新型トラックがいよいよETRCデビューの準備を整えた。

 地元ドイツで採石・採掘事業を営むヘッカーにとって、そのビジネスで長年活躍するスカニア製モデルをベースとするのは「簡単な決定だった」という。

「マンのトラックでシリーズデビューして以降も、ずっとスカニアが欲しいと思っていたから、こうしてゼロから製作することにしたんだ」と語った40歳のヘッカー。「これは、新開発エンジンと完全にリニューアルされたデザイン骨格を備えた、スカニアの最新世代トラックでもあるんだ」

 そのヘッカー・レーシングの新型スカニアを含む複数チームが参加したモストでは、3日間のテストセッションが実施され、2021年は惜しくもランキング2位に終わったサッシャ・レンツ(SLトラックスポーツ30/マン)が最速・最多周回を重ね、シーズンに先立って貴重なデータを収集。2017年王者であるバギラー・レーシングも2台のトラックを持ち込み、エースのアダム・ラッコ(フレートライナー)はタイトル奪還に向けた意欲を示した。

■女性ドライバーのエマ・マキネンが第4戦ニュルブルクリンクでデビュー予定

「フィールドの最上部には、ますます多くのドライバーがいる」と語ったラッコ。

「予選では10分の1秒以内に3台か4台が並ぶんだ。これは5.5トンのモンスターにとって真に印象的な展開で、このETRCのレースがふたたび素晴らしい競技レベルにあることは明らかだね」

 そのチームは2022年に向け車軸(アクスル)周辺とブレーキシステムの改善に取り組み、信頼性に重​​点を置きながらエンジンパワーもわずかながら増加させている。

 そしてシリーズ6冠の“帝王”ヨッヘン・ハーンが運営するチーム・ハーン・レーシングや、チーム・シュバーベントラックが走らせるイベコS-WAY・レーシングトラックスも姿を見せ、シリーズを代表するばかりか「FIA格式選手権でもっとも成功を収めたドライバーのひとり」と称されるステファニー“シュティフィ”ハルムとともに、今季第4戦のドイツ・ニュルブルクリンクでのデビューを予定する女性ドライバー、エマ・マキネンも初めてそのステアリングを握った。

 さらにモストから離れたフランス南部ノガロ・サーキットでは、イギリスに拠点を置くTスポーツ・ベルナウ陣営がプライベートテストを実施。チームにとってより便利な場所であると同時に、過去2年間で多くのテストをこなしたトラックで、新しいカラーリングを採用したマンは有意義なデータ比較を行えたという。

 そのTスポーツ・ベルナウでエースを務めるアントニオ・アルバセテも、2日間のテスト期間中に「エンジン、ギアボックス、ブレーキ、ステアリングコンポーネントなどのシステムチェックをし、狙いどおりいくつかの課題が見つかったが、全体的にセッションの結果に満足しており、チーム全体が懸命に取り組んでいる」と、新年度に向けた手応えを語っている。

 こうした強豪がディフェンディングチャンピオン、ノルベルト・キス(レベス・レーシング/マン)に挑む全8戦32ヒートの2022年ETRCシーズンは、5月21~22日イタリア・ミサノのワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで幕を明ける。