2022年05月13日 19:11 弁護士ドットコム
出入国在留管理庁は5月13日、2021年の難民認定者数等を発表した。難民認定されたのは、昨年から27人増えて74人だった。難民として認定されなかったものの「人道上の配慮」から在留を許可されたのは580人となった(人道配慮措置)。
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難民認定者の国籍は、国軍によるクーデターで情勢が悪化したミャンマーが32人で、最も多くなった。次いで中国が18人、アフガニスタンが9人、イランが4人、イエメンが3人--などとなっている。
難民認定者数や人道上の配慮から在留を許可された人数は、制度がはじまって以来、過去最多とされるが、一方で、難民問題に取り組む弁護士から、今回の発表について「水増しではないか」と疑問の声もあがっている。高橋済弁護士に緊急寄稿してもらった。
まず、難民として認定された数は例年よりも多いものの、国際的な難民認定の保護率からすれば、2021年の難民認定率は「0.7%」と決して誇れるようなものではありません。
そして、深刻な問題を有するのが、過去最多の580人の「人道配慮措置」です。ミャンマー国籍が498人とそのほとんどを占めていますが、これには一つの統計上の操作が疑われます。
つまり、入管庁の発表によれば、例年の統計方法と異なり、人道配慮措置の中に「緊急避難措置」を含めているのです(ただし、難民認定等の判断の前の「42人」は明記されています)。
この緊急避難措置とは、ミャンマーでの情勢が不透明なために、一時的に在留を許可する制度ですが、本質的には「一時保護」とも呼ばれ、あくまで「仮の保護」にすぎません。
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は、この一時保護を難民認定や人道配慮と混同してはならないとしています(補完的形態の保護による者を含む国際的保護の提供に関する結論/2005年)。
それにもかかわらず、2021年の人道配慮措置には、一時保護である「緊急避難措置」を人道配慮措置の判断時におこなうことで含め、過去最高の水増しをおこなった疑いがあります。
入管庁はただちに、人道配慮580人のうち、在留期間6カ月の在留資格を付与した数、すなわち「緊急避難措置」(一時的な保護)の数を公表すべきです。