2022年05月13日 16:41 弁護士ドットコム
公立小中学校教員の半数が、休憩時間を全くとっていない——。教員の過酷な労働実態が、名古屋大学の内田良教授らによる調査で明らかになった。
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内田教授は、(1)持ち帰り仕事、(2)休憩時間中の仕事、(3)過少申告した残業時間、の3つの「見えない残業時間」があると指摘。
今回の調査で持ち帰り残業が、文部科学省の「教員勤務実態調査」(2016年)と比較して増えており、「ますます教員の仕事が見えなくなっているのではないか」と危機感を示した。
調査は、2021年11月20日~28日に公立小・中学校のフルタイム教員(正規雇用・常勤講師)を対象(マクロミルモニター会員)にウェブで実施され、公立小教員466人、公立中教員458人の計924人が回答した。
回答者の8割超が「教師の仕事は魅力がある」「仕事にやりがいを感じる」と答えた一方、「この2年ほどの間に教師を辞めたいと思ったことがある」と回答したのは6割を超えた。
一週間のうち所定労働時間を超えて、学校や自宅で、学校の業務をおこなっていたすべての時間の合計値を「総時間外業務」とし、持ち帰り仕事を含めた勤務実態を調べた。その結果、小学校教員の平均「総時間外業務」は週24.5時間(1カ月あたり98時間)、中学校教員は週28.5時間(1カ月あたり114時間)だった。
平日または土日における1日あたりの持ち帰り仕事時間数は、小学校教員で平日56分、土日1時間21分、中学校教員で平日50分、土日1時間28分だった。文部科学省の「教員勤務実態調査」(2016年)と比較すると、最大30分増加していた。
「平日1日あたりに休憩時間は実際に約何分とれたか」と尋ねたところ、小学校教員は0分(51.2%)が最も多く、平均9.4分だった。中学校教員も0分(47.3%)が最も多く、平均14.6分だった。
内田教授は「24時間の中でどれだけ学校の授業の仕事をしているのか。教員が持ち帰りまでしている全体像を見ないと、教員の働き方の問題は語れない」と指摘。「教員の労働時間管理が始まり厳しく言われるため、学内の業務が少し減って学外の持ち帰り仕事が増えているのではないか」と話した。
教員の多くが仕事の魅力を感じながらも辞めたいと考えていることについて、「教職の魅力を発信する『#教師のバトン』プロジェクトもあったが、魅力はもう皆分かっている。長時間労働の問題こそ解消しなければならない」と訴えた。
岐阜県の公立高教員・西村祐二さんも、「素晴らしい職業でとても魅力がある」とした上で、「高校3年の担任をしているが、将来教職を目指したいと子どもが言ったときに、正直なんて声をかけていいか分からない。勤め始めてすぐ辞めたり鬱になったりしないだろうかと思えば思うほど、教員として教職をすすめることはできない。すごく辛い現実です」と話した。