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『なつぞら』から『ちむどんどん』へ 池間夏海、山田裕貴、戸次重幸の朝ドラ再出演に注目

2022年05月08日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

池間夏海『ちむどんどん』(写真提供=NHK)

 沖縄に暮らす四兄妹の日々を描くNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』。沖縄が舞台ということもあり、ヒロイン・暢子役の黒島結菜をはじめ、暢子の母・優子役の仲間由紀恵、サンセットバーガーのマスター・川田広樹(ガレッジセール)など沖縄出身のキャストが数多く出演している。知っている空気感の中にいるからだろうか、彼らがより一層、のびのびとしているように見え、本作の“沖縄らしさ”をさらに印象付けている。一方で、特徴的なのが沖縄とは正反対の北海道が舞台となった朝ドラ『なつぞら』に出演していたキャストが、この朝ドラに再出演していることだ。


【写真】『なつぞら』で川谷幸子役を演じていた池間夏海


 沖縄出身であり、『なつぞら』キャストでもあるのが池間夏海。『なつぞら』では、主人公・なつ(広瀬すず)の親戚である川谷幸子を演じていた。幸子は、なつが生き別れた妹・千遥(清原果耶)を探す中で訪ねた家から出てきたため、この子こそが千遥なのではないかと憶測を呼び、大きな話題となった。


 池間が『ちむどんどん』で演じたのは、南山原高校の料理部部長・屋良ひとみ。暢子と早苗(高田夏帆)らの料理部が参加する大会に出場するライバルだ。地元の有力企業のひとつ、屋良物産の娘でもあるひとみは、誰しもが認めるお嬢様なのだが、池間の白く透き通った肌やぱっちりとした目の、“圧倒的美少女ビジュアル”からそれがビンビンに伝わってくる。料理大会では、暢子たちに静かなる闘志を燃やしており、あまりしゃべらないが、発する一言一言が氷のナイフのように鋭く、冷たい。そんな彼女も、暢子たちの作った「やんばるそば」を食べて若干の動揺を見せる。見せてはいけない、見られたくない動揺を、池間は目線と瞬きという小さな所作で確かに表現。池間の演技力が光った瞬間だった。


 暢子の姉・良子(川口春奈)と、もどかしいやりとりをする友人・石川博夫を演じているのは、『なつぞら』でなつの幼なじみ・小畑雪次郎を演じた山田裕貴。熱い性格で、「これ!」と決めたらまっすぐ突き進む雪次郎とは異なり、博夫は穏やかで優しい。小さい頃から、雪次郎より破天荒な兄・賢秀(竜星涼)に振り回されてきた良子が惹かれるのも頷ける。


 『なつぞら』以降もさまざまなドラマや映画に出演してきた山田は、演技の幅を広げ、どんな場面でも、どんな役柄でも、馴染んでいるのに存在感を作り出せる稀有な俳優となっている。今後、博夫がどんな一面を見せてくるのか、良子の関係性とともに気になるところである。


 忘れてはいけないのが、東京で民俗学を研究する大学教授・青柳史彦を演じる戸次重幸だ。『なつぞら』では開拓団として北海道へ移り住み、一度は挫折するが、家族や仲間とともに農業を諦めずに挑戦する山田正治を演じた。さまざまな文化が混ざり合う沖縄で、古くから根付いている沖縄文化を調査するのは並大抵のことではないはずだが、比嘉家の協力も得ながら根気強く研究を進めていく青柳の姿は山田と合い通ずるものがある。


 また、戸次の魅力は、その涼しげな佇まいだろう。青柳は息子の教育のことで、妻と意見が合っていないようなのだが、息子本人、ましてや暢子たちの前ではそんな悩みを見せずに笑っている。そのどことない“軽さ”が物語全体をも軽くしているのだ。暢子と料理を結びつけた青柳が、これからどのように比嘉家に関わってくるのか、楽しみにしたい。


 過去の朝ドラに出ていた俳優が再出演し、違った役柄を演じている姿を楽しむのは、朝ドラの楽しみ方のひとつといえる。今後の“再出演キャスト”もひとつの注目ポイントになるだろう。


(久保田ひかる)