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家庭教師の授業料、保護者が「落ちたのに誠意がない」と返金請求…応じる義務は?

2022年05月05日 07:51  弁護士ドットコム

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家庭教師の男性。不合格を理由に保護者から返金を要求され、弁護士ドットコムに相談を寄せました。


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●【相談】「落ちたのに誠意が足りない」と言われ

教え子の受験結果が出たあと、保護者から「今回の受験で落ちたのは、授業が多すぎて消化できなかったせいだ」と言われました。授業を増やしたのは了承を得てのことでしたが、「本当は授業を増やしたくなく、言いづらかった」そうです。



連日、メールで「落ちたのに誠意が足りない」などと言われ、しまいには「返金しないと内容証明郵便を送って法的措置も考える」との発言もありました。



「絶対合格」などとうたって仕事をしているわけではなく、ごく普通の家庭教師です。私に返金する義務はあるのでしょうか。



●【回答・田中伸顕弁護士】返金する義務はない

——保護者による損害賠償の請求が認められないのはなぜですか?



まず、保護者が主張してくるものとして以下の2つが考えられます。



・無駄なお金を払ったことを損害としてこれを賠償請求する形で返金を求める主張
・家庭教師の男性との契約を解除することにより契約を最初から無かったことにして返金を求める主張



しかし、いずれも裁判などではそう簡単には認められないと考えられます。



損害賠償を請求するためには、家庭教師の男性に契約違反が認められる必要があります。



今回のケースで教え子は不合格という結果になってしまいました。しかし、家庭教師が約束することは適切な教育をすることまでで、合格までは約束していないものと考えるのが自然です。



さらに、量の多い授業を行ってしまったことについては、本人の了承を得てその了承に従って行った以上、適切な教育ではなかったとは言えません。



したがって、損害賠償の根拠となる契約違反は認められません。



また、契約を解除したとしても、家庭教師といった種類の契約の場合は、過去にさかのぼって契約をなかったことにすることはできません。



——家庭教師の男性は保護者に対して、どのように対応すべきでしょうか?



これらのことを説明して、こちらには返金する義務が無く、これ以上の対応はできないという説明に終始すべきだと思います。




【取材協力弁護士】
田中 伸顕(たなか・のぶあき)弁護士
秋田弁護士会所属。交通事故、離婚、債務整理から、インターネット上の誹謗中傷まで扱う。「住む地域にかかわらず、悩みを解決できるようにしたいです。事件には、大きいも小さいもないと考えています。そのため、どのようなご相談・事件についても一所懸命、全力で取り組みたいと思いますので、お気軽にご相談ください」
Twitter:https://twitter.com/n_tanaka_akita
事務所名:田中法律事務所
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